口下手な人が、第一印象のいい人を凌いで成果を出すには何をすればいいか。営業コンサルタントの菊原智明さんは「リアルでもリモートでも、接触をもった後にきちんとフォローしてくれる人は驚くほど少ない。
今結果を出している営業はリアルの商談ではその日にお礼メールを送り、リモートの商談ではルームを出て1分以内にお礼のメッセージを送る」という――。
※本稿は、菊原智明『決定版 「稼げる営業」と「ダメ営業」の習慣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■口下手な人が第一印象抜群の人に勝つ方法
稼げる営業はその後のフォローで盛り返し、

ダメ営業は出会った時のインパクトで勝負する。

営業活動において出会った時にお客様の気持ちをつかむことで有利に話が進められます。それは間違いありません。
いわゆる強者のトップ営業と言われる人たちのやり方です。こういった強者の営業の方と話をするたびに「まともに勝負したら絶対に勝てないな」と思います。
実際、営業時代は勝てませんでした。ですから強者が興味を持たない「中長期のお客様」に重点を置き活路を見出したのです。
これはコミュニケーションでも言えることで、やはり出会った時のインパクトが大きい人が印象に残ります。その逆に印象の薄い人たちは「そういえばそんな人がいたような」という存在になってしまうのです。
コミュニケーションにおいても「第一印象のいい人」もしくは「外交的で初対面に強い人」が圧倒的に有利で、口下手で人見知りの人は圧倒的に不利でした。

今までは「コミュニケーション強者」にはとても太刀打ちできなかったのです。
では口下手な方はいつまでも強者に勝てないのでしょうか?
そんなことはありません。リアルのコミュニケーションにおいてはまだまだ分(ぶ)が悪いですが、リモートとなると話は違ってきます。画面越しになれば初対面に与えるインパクトが弱まります。
■リアルでもリモートでもフォローする人は驚くほど少ない
これはチャンスです。初対面のインパクトが弱まるということは、その後のフォロー次第でコミュニケーション強者たちとも対等に渡りあえるようになります。
たとえばZoomの交流会に参加したとします。
ほとんどの人は終わったあと何もしないでしょう。
リモートで結果を出している人はルームから退出した直後に「時間を作ってもらったことのお礼」を伝えます。そしてその後も定期的に何かの理由をつけ、接点を持ち続けるのです。
「お会いした人と接点を持ち続けた方がいい」ということは誰でも知っていることです。
当たり前のことのように思えますが、実際その後きちんとフォローしてくれる人は驚くほど少ないのです。
これはリアルでもリモートでも言えることです。
ここにつけ入るスキがあるのです。
講演をさせて頂いた時のことです。
講演が終わった後20名の営業の方と名刺交換をさせて頂きました。
話を聞いても名刺交換をしない人が大半です。
「講師と名刺交換をしよう」という方はこれから頑張って結果を出したいと前向きな人たちです。にもかかわらず、お礼メールを送ってくれた方はたった2人でした。
結果的に10%の人しかお礼メールを送ってくれなかったのです。
■商談後のお礼メッセージを送るタイミング
その後も様々な場所でデータを取りましたが、リアルでは10%前後でした。
今結果を出している営業はリアルの商談ではその日にお礼メールを送り、リモートの商談ではルームを出て1分以内にお礼のメッセージを送ります。
そしてその後も定期的に情報を送り、接点を持ち続けます。
こういった基本を押さえているからこそ結果が出せるのです。

今後のコミュニケーションは出会った時のインパクト以上にその後のフォローで決まります。幸いそのことに気がついている営業は多くありません。
お礼メールとフォローを続け、しっかりと関係を構築してください。
リモート面談が終わったら

1分以内にお礼メールを送る!

■ミスをした時に周りから援護される人の行動
稼げる営業は困る前から周りを助け、

ダメ営業は困った時にだけ周りにすがる。

私は運動不足解消と健康のために10年以上前からソフトボールをやっております。
あるソフトボールの試合のことです。
ひとりの選手が守備で手痛いミスをしました。
いわゆる致命傷になるエラーで、それをきっかけに大量失点となってしまいました。
しかし、私も他のメンバーもその人を責める気にはなれませんでした。
スリーアウトになり、チェンジになってからもみんなから「ドンマイ、気にしない」「この回に打ってとり返そうぜ」などと励ましの声をかけられていました。
一方ミスをした時に、冷ややかな対応をされる選手もいます。
この違いはなんなのでしょうか?
前者の選手は日頃からみんなに温かい声をかけています。

ですからその人がエラーをした時も援護したくなります。
こうした日頃からのコミュニケーションによって、ミスをした時の対応が変わってくるのです。
これは仕事においても言えます。
以前、関連会社のお客様と商談していた時のことです。
私の頭のどこかに「関連会社の社員だし、まあ契約してくれるだろう」という油断があったのでしょう。一瞬気を抜いた時にライバル会社の営業につけ入られ、契約をとられてしまったのです。それを知った上司は激怒します。
■私をどん底から救った仕事のデキる先輩の言葉
「こんな誰でもとれる契約を落とすなんて、救いようがないな」とガッカリされます。
契約率の高いお客様を落としたのですから、無理もありませんが。
深く落ち込んでいる私に、常にいい成績を残している先輩はこう声をかけてくれました。
先輩「関連会社のお客様だって簡単じゃないんだよ。いい勉強になっただろう?」
私「はい、勉強になりました」
先輩「これを教訓として同じ間違いをしなければいい。
分からないことは俺達が教えるからまた頑張れよ」
私「次は頑張ります!」
その先輩の一言にどれほど救われたことでしょうか。
私はその後もその先輩の手助けができるなら喜んでしようと思いました。
実際、先輩が忙しそうな時やミスをしてピンチの時は「私に何かできることはありますか?」と声をかけました。
これは私だけでなく、他のみんなもそう声をかけていたのです。
一方、ダメ営業は誰かが失敗した時に温かい言葉などはかけません。
「だから注意しろと言っただろう! お前はバカか!」、「つくづく、営業センスがないなぁ~」などと傷に塩を塗り込むようなことを平気で言ってきます。
言われた方は泣きっ面に蜂状態です。
■「自分が困った時だけすがる」は手遅れ
そういう無神経なことを言う人にだって、ミスをしてピンチになることもあります。
そんな時は助けを求めても「すみません。今日は手が離せない仕事がありまして」と誰からも協力してもらえないのです。
稼げる営業だって完ぺきではありません。失敗したり、ミスしたりすることだってあります。
普段から周りの人に助けてもらえる環境を作っておくことが大切なのです。
自分が困った時だけすがるのではなく、普段から周りの仲間に温かい言葉をかけるように心がけましょう。
いつも温かい言葉をみんなにかける!

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菊原 智明(きくはら・ともあき)

営業コンサルタント

営業サポート・コンサルティング代表取締役。関東学園大学経済学部講師。社団法人営業人材教育協会理事。1972年生まれ。群馬県高崎市出身。群馬大学工学部卒業後、トヨタホームに入社し、営業の世界へ。自分に合う営業方法が見つからず7年間、ダメ営業時代を過ごした後、手紙で情報を提供する営業に切り替えたことをきっかけに4年連続トップ営業に。2006年に独立し現職。主な著書に『訪問しなくても売れる!「営業レター」の教科書』(日本経済新聞出版社)、『売れる営業に変わる100の言葉』(ダイヤモンド社)、『面接ではウソをつけ』(星海社)、『トップ営業マンのルール』『「稼げる営業マン」と「ダメ営業マン」の習慣』『残業なしで成果をあげるトップ営業の鉄則』(明日香出版社)、『営業1年目の教科書』『営業の働き方大全』(大和書房)、『リモート営業で結果を出す人の48のルール』(河出書房新社)、『仕事ではウソをつけ』(光文社)、『使ったその日から売上げが右肩上がり!営業フレーズ言いかえ事典』(大和出版)などがる。

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(営業コンサルタント 菊原 智明)
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