※本稿は、山川清弘『教養としての 三菱・三井・住友』(飛鳥新社)の一部を再編集したものです。
■昔のパソコンはNECばかりだった
NECが住友グループの中心企業だと理解している方は、現代ではそう多くないかもしれません。公式な社名である「日本電気」にも住友の文字はありません。NECは1899年に米ウェスタン・エレクトリック社などの共同出資で設立された、日本初の外資合弁企業(複数の会社の出資で運営される企業)です。
始まりは通信機器メーカーで、一貫して日本のハイテク産業をリードしてきました。1977年には、当時の小林宏治会長が「コンピュータ&コミュニケーション(C&C)」戦略を提唱し、「第二の創業」と位置づけました。
これは、コンピュータ技術と通信技術の融合が社会を変えるという先見の明を示すものであり、NECはこれを軸に、コンピュータ、通信機器、電子デバイス(半導体)の三部門をバランスよく成長させ、一時は「世界のNEC」と呼ばれるまでになります。
しかし、この「C&C」の成功体験が、後の同社を苦しめる要因ともなりました。NECの栄光の象徴は、1980年代から1990年代初頭にかけて国内市場で大半のシェアを占めたパソコン「PC-9800シリーズ(通称:98、キュウハチ)」でした。
■「自社が一番」という巨大企業の誤算
この成功は、部品まで自社で内製するビジネスモデルと、ソフトウェア・周辺機器メーカー(サードパーティ)を巻き込んだ独自のエコシステムによって支えられました。しかし、世界の潮流は、マイクロソフト(OS)とインテル(CPU)が標準規格を握り、製造は異なる企業が分担していくモデルへと移行します。
NECは成功体験と「自社で開発したものが優れている」という思い込みから、世界標準であるIBM互換機(DOS/V)への移行が遅れました。そしてそれが、NECの屋台骨を揺るがします。
1994年度にはパソコンの国内シェアが低下し、低価格攻勢をかけるDOS/V勢に急激に侵食されました。国内トップシェアでありながら、過剰在庫とサプライチェーン管理の遅れにより、パソコン事業は2000年度に72億円の営業赤字に転落しました。
この危機を受け、当時の西垣浩司社長は「このままではNECのパソコン事業はダメになる」とし、開発・生産子会社を統合した「デザイン・&・マニュファクチュアリング・サービス」(DMS)を設立。
■世界トップクラスだった半導体も…
自前主義であった製造部門を切り離し、他社からの受託生産も視野に入れる大転換をしました。それでも、パソコン事業はその後も苦境が続き、2011年に中国レノボ社との合併化に踏みきることで、長年の「コア事業」に事実上の終止符を打ちました。
パソコンと並ぶNECのもう一つの柱であった半導体事業も、国際競争の激化により次第に存在感を失っていきました。NECは1980年代後半には世界トップクラスの半導体メーカーとして知られていましたが、韓国・米国勢との激しい競争の中で次第に劣勢に立たされます。
特に、汎用品であるDRAM(PC作動時の記憶メモリ)事業は、巨額の設備投資を必要とする一方、市況変動が激しく、収益性の確保が難しい分野でした。そこでNECは生き残りを図るため、1999年に日立製作所とDRAM事業を統合し、合弁会社「エルピーダメモリ」を設立しました。
さらに、2002年にはDRAM以外の半導体事業を「NECエレクトロニクス」として分社化し、翌2003年に上場させています。
■どん底から這い上がり、奇跡の復活
その後、2013年には政府系ファンド主導の増資により、NECは持分法適用対象から外れることとなります。かつてNECは、NECエレクトロニクスの過半数の株式を保有し、実質的な支配権を有していました。
そのため市場では、親会社の意向による事業調整の可能性が指摘されることもありましたが、最終的に半導体事業はNECの手を離れる結果となりました。こうした半導体事業の不振は、NEC全体の業績悪化の一因となり、同社が事業構造の転換を迫られる背景の一つとなったのです。
NECは、パソコン事業での敗退や半導体事業での凋落を経て、現在は企業変革を推進しています。その軸は、長年の通信インフラ構築で培った技術力と、官公庁や通信事業者向けに強みを持つITサービスです。
コンピュータや通信機器の納入を通じて培ってきた企業・官公庁向けのシステム構築、運用・保守の事業は、NECの「原点」であり、現在も主力事業です。
2000年代以降、NECは顧客の業務課題をシステムで解決するSIer(システムインテグレーター)事業の高収益化に注力し、コンサルティング能力を持つアビームコンサルティングの買収などを進めています。
■世界一の「顔認証」が拓く日本の未来
またNECは、顔認証など生体認証技術において、米国国立標準技術研究所のベンチマークテストで複数回世界1位を獲得しています。2025年11月1日放送のドキュメンタリー番組『新プロジェクトX~挑戦者たち~』(NHK総合)でも、この顔認証技術実用化と世界トップに上り詰めるまでの苦労が描かれました。
またAIにも強みを持ち、映像から事故状況や作業進捗を自動で分析・レポート化するAIシステムを世界で初めて開発。保険会社の事故査定や空港運営など、さまざまな分野への応用を目指しており、「映像を“読む”AI」としてNECの新たな成長ジャンルとなっています。
さらに防衛・航空宇宙、量子技術など、日本の安全保障・社会インフラを支える企業としての側面も強化し、これらの分野への研究開発投資を強化しています。
森田隆之社長は、現在の株価は「あくまでも通過点に過ぎない」とし、研究開発の強化、ジョブ型人事制度の導入などにより、日本発のテック企業として、世界の安全保障に貢献し、グローバルなプレゼンスを高めていくことに自信を見せています。
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山川 清弘(やまかわ・きよひろ)
東洋経済 記者
1967年、東京都生まれ。91年、早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。東洋経済新報社に入社後、記者として放送、ゼネコン、銀行、コンビニ、旅行など担当。98~99年、英オックスフォード大学に留学(ロイター・フェロー)。『会社四季報プロ500』編集長、『会社四季報』副編集長、『週刊東洋経済プラス』編集長などを経て「会社四季報オンライン」編集部編集委員。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、日本テクニカルアナリスト協会認定テクニカルアナリスト。著書に『世界のメディア王 マードックの謎』(今井澂氏との共著、東洋経済新報社)、『ホテル御三家 帝国ホテル、オークラ、ニューオータニ』(幻冬舎新書)など。
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(東洋経済 記者 山川 清弘)

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