■4年間にわたる「いじめ」の放置
こんな事件がありました。すべて、実話です。順を追って、書いてみます。
茨城県石岡市で、市内に住む女子生徒が、小学3年から卒業までの4年間にわたり、同級生6人からいじめられていました。暴力や金銭の要求を受けるという、悲惨ないじめ被害です。
ことの発端は文房具の貸し借りという些細なトラブル。そこから無視や暴力に発展し、首を絞められる、拳で殴られるといった行為がくり返されました。小学生同士で、です。
さらに、鍵盤ハーモニカのふたで指を挟んだことを理由に、「慰謝料として10万円をよこせ」と金銭を強要されるなども確認されています。第三者委員会は、少なくともこれらを12件のいじめとして認定しました。
被害生徒はどうなったのでしょうか。
しかも、です。被害生徒の保護者は小学3年の段階で担任にいじめを訴えていました。それにもかかわらず、担任は「注視したいと思います」と述べるにとどまり、なんら具体的な対応をしませんでした。校長も教育委員会への報告を怠っていました。
さらに、です。当小学校はアンケートなどの資料を年度ごとに廃棄しており、問題を継続的に把握する体制すらありませんでした。結果、4年にわたり被害は放置され、ようやく重大事態として公表されたのは、被害が深刻化した後でした――。
■「犯罪」をボカせる便利な言葉
結論から言いましょう。
この事件で最も追及すべき点は、「子どもが壊れるまで放置した大人が、普通に職場に残っていること」です。
いや、そもそもこれって結構シンプルな話なんですが。
つまり、小学生の女子生徒が4年間、殴られて、首を絞められて、お金まで要求されていた。しかもその情報は学校側に伝わっていた。それでも何一つ、状況が変わらなかった。
普通に考えて、「それって犯罪じゃないの?」って話なんですよ。
まず、この問題をややこしくしているのは、「いじめ」という言葉です。これ、便利な言葉なんです。便利すぎる。なぜかというと、「犯罪」をボカせるからです。
「殴る」のは暴行です。「首を絞める」のは、下手すれば殺人未遂に近い。「お金を要求する」のは恐喝です。普通に全部、刑法の領域の話です。
でも日本では、それを「いじめ」と呼ぶことで、急に「学校内の問題」に変換される。いやいや、ぜんぜん違うでしょ、と。
■この「いじめ」のケースは何が最悪か
今回のケースも同じです。
文房具の貸し借りという、どうでもいいレベルのトラブルから始まっている。でもそこからエスカレートして、集団での暴力と金銭要求に変わっている。
これ、もう「トラブル」じゃないです。明確に「加害行為」です。しかも6人ですよ。1対1のもつれじゃない。つまり、集団でターゲットを決めて、継続的に攻撃している。
構造的には完全に「弱い者いじめ」ではなく、「集団による支配」です。
さらに言えば、小学生が「慰謝料として10万円」という言葉を使っている。
もう一度、言います。このケースで最もヤバいのは、「大人たちが知っていた」という点です。
保護者が連絡帳で訴えている。つまり、担任は知っていた。それなのに、「注視したいと思います」。
これ、翻訳するとどうなるかというと、「面倒なので何もしません」。そう、“やってる感”だけで、何もしていない。実質的には、「放置宣言」です。
■「誰もクビにならない」おかしな構造
しかも、校長も教育委員会へ報告していません。つまり、現場レベルでも組織レベルでも、両方で機能していない。これって企業だったらどうなるかというと、普通にコンプライアンス違反でアウトです。
たとえば会社で、部下が暴行を受けているのを知っていて放置したら、管理職は普通に処分されますよね。下手したら会社ごと炎上して、株価も下がる。
でも学校だと、それが起きない。
なぜか。
理由は単純で、「責任が分散されている」から。言いかえれば、「責任の所在が曖昧だから」です。
担任の問題なのか。校長の問題なのか。教育委員会の問題なのか。
ここでよくある反論があって、「教師も忙しいから」とか「全部に対応するのは難しい」とか言う人がいるんですよね。
でも、それって今回のケースに当てはまるの? って話です。
4年間ですよ。しかも、暴力と恐喝。これを「忙しいから見逃しました」で済ませていいなら、警察もいらないし、法律もいらない。
さらに今回のケースは、もっと、ひどいことが起きている。
■学校と企業の類似構造
それが、資料の廃棄です。
いじめに関するアンケートや指導記録を年度ごとに捨てている。要するに、「継続的な把握をしない」と教師が決めているのと同じです。企業でいえば、クレーム履歴を毎年消しているのと同じ。そんなことすりゃ、問題はなくならない。何度でもトラブルがくり返し起きます。
で、最終的にどうなったか。この女子生徒は、包丁を持ち出して「刺せば死ねるのか」と言っている。つまり、単なる「学校に行きたくない」ではなくて、命の問題になっている。ここまで来て、ようやく重大事態なんて、まったく遅すぎます。
この構造って、実は企業社会でも起きています。
仕事で問題が起きる→誰かが報告する→上司が「様子見」→問題が拡大→ようやく対応→「再発防止に努めます」。これ、テンプレです。
で、このテンプレがなぜ繰り返されるかというと、答えはシンプルです。
■「やらなかった人が損をする仕組み」の作り方
それは、「最初に動いた人が損をするから」です。
担任がすぐに動いた場合、どうなるか。
・保護者対応で時間を取られる
・加害児童の家庭ともモメる
・学校内で面倒な案件になる
つまり、「やらないほうがラク」。これがインセンティブ構造です。
じゃあどうすればいいのか。簡単です。
「やらなかった人が損をする仕組み」にすればいい。
たとえば今回のケースで言うと、
・担任 → 減給または免職
・校長 → 降格または免職
・教育委員会 → 責任者の処分
「隠蔽(いんぺい)は厳罰」だとはっきりさせる。これくらいでないと、何も変わりません。
よく「教育の現場は聖域だから」みたいな言い方がありますけど、むしろ逆で、聖域だからこそ一番オープンにすべきだと僕は思います。
子どもって、自分で環境を選べません。会社なら転職できるし、嫌なら辞められる。でも小学生は、基本的にそこに行くしかない。毎日、通うしかない。つまり、学校って「逃げ場のない閉じた場所」なんです。
そこで暴力が起きていて、大人が見て見ぬふりをしていたら、それはもう教育の場ではなくて「放置された危険地帯」です。
で、もう一歩踏み込むと、こういう問題って「人の善意に頼っている」限り解決しないんです。
■「人を信用しない設計」の必要性
「先生は子どもの味方であるべき」
「ちゃんと対応してくれるはず」
こういう前提で作られたシステムは、一人でもサボる人がいたら崩壊する。だから必要になるのが「仕組み」です。
たとえば、
・暴力や金銭要求が報告された時点で自動的に第三者機関に通知
・一定期間内に対応がなければ強制的に調査開始
・隠蔽が発覚した場合は厳罰
こういうルールを作る。嫌な言い方をすれば、「人を信用しない設計」にする。
「そんなに厳しくしたら教師が減る」という意見も、出るかもしれません。
でも、逆なんですよね。ちゃんとやっている人からすると、サボっている人が守られている環境のほうがストレスなんです。だから、責任を明確にしたほうが、まともな人ほど働きやすくなります。
■「責任を取らない優しさ」の残酷さ
最後にもう一度言います。問題は「いじめがあったこと」じゃありません。それはどこでも起きる。
問題は、「止められたのに止めなかったこと」です。しかも、大人が。教師と名のつく大人たちが、「止めなかったこと」です。
そして、この構造が変わらない限り、文房具の貸し借りから始まって、暴力になって、金銭要求になって、最後は「死にたい」になる。この流れは、何度でもくり返されます。
日本はよく「優しい社会」と言われます。でも実際には、「責任を取らない優しさ」が支配している。
謝るけど、変わらない。反省するけど、辞めない――。それでは、誰も守れない。
なので、今回の件についてのシンプルな答えはこれです。
「放置した大人が、なぜクビにならないのか?」
この問いに対して、ちゃんとした答えが出ない限り、同じことは何度でも起きるでしょう。
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ひろゆき(ひろゆき)
2ちゃんねる創設者
東京都北区赤羽出身。1999年、インターネットの匿名掲示板「2 ちゃんねる」を開設。2015年に英語圏最大の匿名掲示板「4chan」の管理人に。YouTubeチャンネルの登録者数は155万人。著書に『ひろゆき流 ずるい問題解決の技術』(プレジデント社)、『なまけもの時間術』(学研プラス)などがある。
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(2ちゃんねる創設者 ひろゆき)

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