若者マーケティング機関「SHIBUYA109 lab.」所長の長田麻衣さんによると、繊細なZ世代には「ほめ方」にもコツがいるという。どんな環境で、どれくらいの頻度でほめればいいのか。
長田さんの著書『ほめられると気まずすぎてしぬZ世代、ほめて伸ばそうと必死になる上司世代』(徳間書店)より一部を紹介する――。
■ほめると「いやいや私なんて!」と謙遜する若者
実は私も、大勢の前で自分のチームにいる当時新卒1年目の社員たちに「この資料、めっちゃいいね」とほめていた時期がありました。すると、「いやいや! これは私だけじゃなくて、同期のAさんやBさんにも手伝ってもらってつくったんです。決して私だけの功績ではありません!」と過度に謙遜されたことがあります。
いや、そこは素直に受け取ろうよ……と思いましたが、後日、新卒社員の一人から「長田さんにめっちゃ読んでほしい本があります」と、ある本を薦められました。現在、共同研究をさせていただいている金沢大学の金間大介教授による『先生、どうか皆の前でほめないで下さい いい子症候群の若者たち』(東洋経済新報社)という本です。
これを読んで、あのときの部下の心理が理解できた気がしました。さらに本質に迫りたく、金間先生と「若手世代はなぜみんなの前でほめられたくないのか」をテーマに共同研究をスタート。それで気づいたことは、若手世代は自分が周りからどう見られるかを非常に気にしているというリアルな感情の揺らぎでした。
■過度な期待をされたくない、出る杭になって打たれたくない
たとえばみんなの前で表彰されると、まわりからさらに期待され、それがプレッシャーになる。それでさらなるチャレンジを与えられると、「同じ給料なのに何で自分だけ頑張らされているの? なんか割に合わなくね?」というネガティブな思いが強くなるそうです。
加えて、彼らは基本的に自分に自信がない。
自己肯定感が低くて、謙遜する気持ちが強い。何を聞いても「いや、私なんかよりできる人とか上の人って、もっといるんで」「いや、私より詳しい人いっぱいいるんで」と、自分を必要以上に下げる。自分が目立ちたくない思いもあるけれど、その他にも、自分より上はごまんといることがSNSで可視化されているので、自分に自信が持てない。こうした自己肯定感の低さも、「みんなの前でほめられたくない」気持ちの裏にあるようです。
さらに、ほめられたくないのは、ほめられた先に、自分が「やっぱり違ったね」「期待していたよりできなかった」と思われる“拒否感”を味わいたくないから。自分だけ目立ったら炎上するかもしれない、「出る杭」になって打たれたくない、拒否されたくない、嫌われたくない――そんな思いがとても強いため、相手にも同じように振る舞うわけです。
■若者は決してほめられたくないわけじゃない
一方で、「人前でほめられたくないけれど、個別にはほめてもらいたい」というアンビバレントな思いを抱えているのも特徴です。われわれが実施した調査によると、「人にほめられるのが好き」なZ世代は78.4%、でも「ほめられるのが苦手」なZ世代は46.3%という結果に。
このことから垣間見えるのは、「人前ではなく、個別に」「細切れに」「それも、相手が謙遜しない程度に、サラッと軽くカジュアルに」ほめる方法が受け入れられやすいということです。個別のほうが、周囲の目がないため気まずい思いをしない上、「個」の部分に目を向けてもらえた嬉しさを感じられます。
また、細切れにちょこちょこほめられると、「ちゃんと私の仕事を見てくれているんだな」と実感を持てます。それが少しずつ、モチベーションにつながっていくのだと思います。

私の場合、エレベーターホールとかで出くわしたときや会議が終わって部屋から出るタイミングに、「この前の資料よかったよ」とひと言声をかけるなど、日常的に軽く、細切れにほめていくことを心掛けています。もちろん、チャットでも可。私もチャットでポンと送って終わりにすることも多いですから。
【NG例】

・面と向かい改まった態度でほめる

・みんなの前でほめる
【OK例】

・エレベーターホールや廊下などで会ったときに「この間の資料けっこういけてたよ」とほめる

・チャットでやり取りしているときに、自然な流れで「そういえば、あのときの○○もすごくよかった」とほめる

もう一つ、あなたが若手世代に贈るほめ言葉には、自分が思う以上に重みがあると心得ましょう。ほめたいことを溜め込んで、1対1の面談で一気にほめることも、改まって丁寧にほめることも若手世代にプレッシャーを感じさせる可能性があります。
■「20代なのにすごい!」「さすが○○大学出身」はNG
ここまで、「ほめるときは個別に、すれ違いざまなどにサラッと」ほめることをおすすめしました。それとは別に、日誌などでフィードバックをしなければならないときは、どう返したらよいのかをお話しします。
多くの上司世代が「まだ若いのにこんなことまでできてすごいね」といったほめ方をしがちですが、これは若手世代にとってモヤッとする言葉。
同様に、「20代でここまでできるのはすごい」「若いのにしっかりしている」「自分が若い頃はここまでできなかった」「さすが○○大学出身だね!」「そこまで考えてるんだね」もNGです。
いずれも相手を「若い人」などのマクロな視点で見ており、その人自身にフォーカスしたほめ方ではないからです。われわれの調査によると、Z世代は自分自身=個に注目してほしい人が多いことがわかっています。「○○さんのこういう〈行動〉がいいよね」と、個に目を向けること、また周りやその人の属性を視点から一切排除して、その人の「プロセス」と「現在」だけを見ることがポイントです。

また、「すごい」は何がすごいのか抽象的すぎて評価が伝わりません。
では、若手世代に響くのはどのようなほめ方なのでしょうか。下に、NG例とOK例を挙げてみます。
■若者に響く「うまいほめ方」
【NG例】

「良かったと思います」「頑張っていました」

→抽象的過ぎる。何が良かったのか、何を頑張っていたのが不明瞭
「ありがとう、君のおかげだよ」

→抽象的過ぎる
「違うと思ったけど、努力を否定したくないので…」

「新人としては十分。細かいところは気にしないで」

→忖度、遠慮が入りまどろっこしい
「入社1年目とは思えない! もうプロですね!」

→「入社1年目の新人」という大きなくくり(マクロな視点)で捉え、個を見ていない。上から目線な印象を与えることも
【OK例】

「○○さんの提案は、実際のアンケート結果をもとにターゲット層を絞っていて、説得力がありました」

→具体的根拠がある。◎行動・成果・構成などに触れており、評価の理由が明確
「○○さんがいつも笑顔で接してくれたおかげで、お客様の警戒心がほぐれたようです」

「○○の時、あなたが~~の提案をいくつもしてくれたおかげで突破口が見えて、とても助かりました」

→具体的根拠がある
「アイデアの独自性があり、ターゲット層への訴求力も感じました。ただ、実現に向けた課題整理が必要です。課題整理をしていくには~」

→フラットな視点

→新人扱いせず、目的や実用性で評価

→ほめるだけでなく改善点も伝える

このように、彼らの取った行動と成果(事実)と、それによってどう受け止めたか(感想)を、そのときの光景が浮かび上がるように具体的に伝えていくほうが、謙遜しがちな彼らに刺さります。さらに、その人自身の成長が伝わる文言があるとベターです。
繰り返しになりますが、その人の同期や「若い人全体」といった他人・属性との比較をするのではなく、その人個人の「過去」と「現在」を比較し、その人が以前に比べてどれだけ成長したかを言葉で表すと「ちゃんと見てくれているんだ」と実感でき、モチベーションにつながります。

■「事実」「感想」「提案」の3段階構成で
また、フィードバックはポジティブかつ建設的であることが大事です。改善点を伝える場合、「こういうところは改善してください」とふわっと伝えるのではなく、「ここがこうなるとよりあなたの力が発揮できると思う」「ここがこうなると、あなたのキャリアにこういう良い影響がありますね」というように、未来を見据えた提言になっていることがポイントです。
それも、ただ箇条書きにして伝えて終わるのではなく、「どうしたら改善できるか?」を一緒に考える姿勢で会話を進めるとよいでしょう。
内容そのものはかなり具体的であることが求められています。「こういう事実があって、これに対して上司はこういうふうに感じた。次はこうしたらもっと良くなる」というように「事実+感想+提案」の3段階で示すと、具体的です。ポジティブな評価であっても、ネガティブであっても、この3段階を意識しましょう。
【具体的なフィードバック方法】
事実:若手が取った具体的な行動や成果を挙げる→評価の根拠が明確に

例:「○○さんは○○をしていた」
感想:それに対して上司がどう感じたか、どう助かったかを率直に伝える→安心感や気づきを与える

例:「その結果、○○と感じた」
提案:改善点や次のステップを前向きに伝える→成長を後押し

例:「次は○○してみるとさらに良くなるかも」

■成果だけではなく、要所のプロセスでもほめる
フィードバックは、タイミングと頻度も大事。最終的な成果だけでほめるのではなく、できればこまめに要所要所でプロセスをほめていくことで、若手世代のモチベーションは維持されます。
たとえば、毎回ミーティングに参加している若手世代がいたとします。彼は毎回参加していながらも、「ここのミーティングのこの発言が良かった」というプロセスはスルーされ、最終的な成果物に対するフィードバックしかなかった。こうしたケースは少なくありません。

しかし若手世代が欲しいのは、各プロセスでどう考えてどう行動してきたかということに対するほめやフィードバックのほうです。要所でほめてもらえたほうが成長の実感を得やすいと答える若手世代は多くいました。
■対面より文字で見返すことのできるチャットで
そもそも、20代の若手世代は、まだまだ成長途中にいます。上司世代がわが身を振り返っても、星の数ほどの失敗を経て、何年もかけてようやく一定の成果を出せるようになったのではないでしょうか。そう考えると、20代の社員を数字など見える結果だけで評価しようとするとどうしても不足感を持ってしまい、奥歯に物が挟まったようなほめ方になってしまいがち。「数字はイマイチだったけど入社2年目にしてはよくやったよね」というように。
それよりも、プロセスを細かいフェーズに分け、それぞれの段階で、取り組みの姿勢や立ち居振る舞いなども含めて数字ではないところを一つひとつほめていくほうが、若手世代の成長支援につながります。
また、フィードバック時は対面よりチャットを好む人が多いこともわかっています。理由は「チャットの方が文字で残るので後から何度でも読み返せるから」「じっくり読むことで理解できるから」。上司世代は対面を好む人も多いでしょうが、チャットで文字に残した後、口頭でポジティブな声掛けをすると、若手の安心感も高まるかもしれません。
対面でフィードバックした後は、チャットで見返せるようにフォローできるとさらに安心です。

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長田 麻衣(おさだ・まい)

SHIBUYA109エンタテイメント SHIBUYA109 lab.所長

総合マーケティング会社にて、主に化粧品・食品・玩具メーカーの商品開発・ブランディング・ターゲット設定のための調査やPRサポートを経て、2017年にSHIBUYA109エンタテイメントに入社。
SHIBUYA109マーケティング担当としてマーケティング部の立ち上げを行い、2018年5月に若者研究機関「SHIBUYA109 lab.」を設立。現在は毎月200人のaround20(15歳~24歳の男女)と接する毎日を過ごしている。繊研新聞連載「シブヤ109ラボ所長の#これ知ってないとやばみ」、宣伝会議等でのセミナー登壇、TBS「ひるおび」コメンテーター、その他メディア寄稿多数。

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(SHIBUYA109エンタテイメント SHIBUYA109 lab.所長 長田 麻衣)
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