なぜいくら勉強しても英語が話せるようにならないのか。大学や企業で英語を教える濱崎潤之輔さんは「いくら英単語を覚えても話せるようにはならない。
英語を使いこなすには、中学1年で学んだ『3語の文』を口にすることから始めてほしい」という――。(第1回)
※本稿は、濱崎潤之輔『中学英語でつまずいた人が読む本』(日経BP)の一部を再編集したものです。
■英語を読み書きできるのに「話せない」ワケ
英語をやり直そうと思ったとき、多くの人が最初にぶつかるのが「話せない」という壁です。英文を読むのはある程度できる。リスニングも、ゆっくりした音声ならなんとか聞き取れる。でも、いざ自分の言葉で英語を話そうとすると口が動かない。
この瞬間に「自分には才能がないのかも」と感じてしまう人が本当に多いのです。しかし、それは違います。英語が口から出てこないのは、才能や年齢のせいではありません。それは「やり方」を知らないだけなのです。英語の正しい話し方を知らないまま努力してもうまくいかないだけということです。
つまり、裏を返せば、やり方を変えるだけで誰でも話せるようになるのです。
英語について「頭では分かるのに口から出ない」と感じるのは、能力の問題ではなく、練習の方向性が偏っているからです。
英語を声に出す習慣を始めた人たちは、みな口をそろえて「前より英語を話せるようになった」と言います。
■語彙力よりも重要なこと
例えば、ある営業職の男性は、最初は“Yes.”(はい)しか言えませんでした。けれども、毎日“I'll do it.”(私がそれをやります)、“I'll check it.”(私がそれを確認します)と声に出す練習を続けたところ、1カ月後には“I'll check it now.”(今すぐ確認します)と自然に口から出るようになったといいます。
また、ある育児中の女性は、家事の合間に“I'm tired.”(疲れています)、“I'm hungry.”(おなかがすいています)のような、短い英文をつぶやくだけの練習を続けていました。すると、数週間後には旅行先のレストランで思わず“I'd like this.”(これをいただきたいです)と、英語のフレーズが出てきたのです。
この2人に共通しているのは、長時間ではなく、毎日、少しずつでも英語を声にしてきたということです。
英語を話せるようにしたのは、知識の量ではなく、声に出すという反復の力でした。英語は勉強ではなく、使ううちに育つものです。さあ、あなたの日々口に出す短い英文も、きっと自信を持って英語を話す力に変わっていきます。
この稿では、頭で考えるよりも先に、英語が自然と口からこぼれ落ちるようになるための工夫を伝授します。毎日少しずつ「声に出す習慣」をつくるための具体的な練習法も併せて紹介します。

■机に向かうだけでは話せるようにならない
英語は決して才能ではありません。正しい順番で練習を積み重ねれば、誰でも必ず話せるようになります。
「英語を話そうとしても、なかなか言葉が出てこない……」そんな悩みを持つ人の多くは、頭の中で「日本語」を「英語」に変換しようとしています。しかし、日本語を介した翻訳作業には時間がかかるため、どうしても会話のスピードに追いつけず、流れを止めてしまうのです。その原因は、主に次の3つの理由に集約されます。
①「完璧な正解」を求め過ぎてしまう
「文法を間違えたら恥ずかしい」という思いがブレーキになり、言葉が詰まってしまうのです。しかし、英会話で最も大切なのは正確さではなく「伝えようとする姿勢」です。完璧な文を組み立てるまで沈黙するよりも、まずは一言発することからすべてが始まります。
②「知っている」だけで、口が英語に慣れていない
頭では意味が分かっていても、実際に声に出す訓練が足りないと、口の筋肉はスムーズに動きません。「知っている英語」を「使える英語」に変えるには、スポーツと同じように、実際に体(口)を動かす反復練習が不可欠です。
③失敗を恐れて、自らチャンスを逃している
「間違えたくない」という気持ちは誰にでもあるものです。しかし、実は「黙ってしまうこと」こそが、上達への一番の遠回り。
小さな失敗を恐れずにアウトプットを繰り返す人ほど、驚くほど早く英語を自分のものにできます。
これらはすべて、才能の有無ではなく、単に「練習のバランス」の問題です。英語は、机の上で暗記するだけでは決して話せるようになりません。スポーツや楽器と同じように、実際に声に出し、口と耳を連動させる練習を積み重ねることで、初めて英語は自然に口からあふれ出してくるようになります。
■英語を武器に変える「3語の文」
英語が話せる人とそうでない人の決定的な違いは、センスではなく「習慣」にあります。たとえ毎日5分でも、声に出し続けている人は1カ月後には「英語が口になじんできた」と実感できるはずです。
どれほど知識を詰め込んでも、使わなければ英語は一生道具にはなりません。単語や文法はあくまで料理の「材料」です。それを実際に口から発して、初めて「自分の言葉」という血肉になります。
声に出す回数が増えるほど、脳と口をつなぐ回路は太く、強くなっていきます。最初はぎこちなくても構いません。繰り返すうちに、英語特有のリズムが自然と体に染み込んでいきます。
上達を左右するのは「時間の長さ」ではなく「習慣の強さ」です。
まずは1日5分、毎日続けること。それが、英語を「知識」から「使える武器」に変える最短ルートです。最初から長い文を話そうと気負う必要はありません。まずは、たった「3語の文」から始めていきましょう。
I'm hungry.(おなかがすいた)

I like coffee.(コーヒーが好きです)

She is busy.(彼女は忙しいです)
たったこれだけでも、自分の気持ちは十分に表現できます。例えば、職場で「I'm busy.」と言えば、「今は手が離せないんだな」と状況を瞬時に理解してもらえます。カフェで店員さんに「I like coffee.」と伝えれば、そこから自然な会話が生まれることもあるでしょう。
■英会話が上手な人が考えていること
大切なのは、短くても「伝わった!」という成功体験を積み重ねることです。英語の上達は、1文の長さではなく、「声に出した回数」に比例します。まずは短く、シンプルに、声に出してみる。その一歩が、英語を「机の上の勉強」から「日常のツール」へと変えていくのです。

英会話が上手な人は、決して難しい単語を並べているわけではありません。実は、基本となる「型(パターン)」を自由自在に使いこなしているだけなのです。この「型」に言いたい単語を当てはめるだけで、表現の幅は何百通りにも広がります。
まずは、この3つを覚えるだけで日常の多くのシーンをカバーすることができます。
Can I + 動詞……?

(キャナイ)~してもいいですか?
→ Can I sit here?

(キャナイ シッ ヒア)ここに座ってもいいですか?
I want to + 動詞……

(アイ ワントゥ)~したいです
→ I want to eat ramen.

(アイ ワントゥ イート ラーメン)ラーメンを食べたいです。
I'll + 動詞……

(アイゥ)~します/~するつもりです
→ I'll call you tomorrow.

(アイゥ コーゥ ユー トゥモロウ)明日あなたに電話します。

このように「型」さえ身につければ、単語を少し入れ替えるだけで、無限に応用が利くようになります。それは、料理人が基本のレシピを一つ覚えれば、具材を変えて何通りもの一皿を作れるようになるのと同じです。
■誰だって最初は初心者
英語もいわば「文のレシピ(型)」を覚えることで、どんな場面でも瞬時に言葉が出てくるようになります。英会話の上達は、単語の暗記量ではなく、この「型の使い回し」がカギなのです。たった一つの型をマスターするだけで、会話は驚くほどスムーズになります。
最初から豪華なフルコースを作ろうとすれば、誰だって疲れてしまいます。
でも、ご飯とみそ汁なら毎日でも作れますよね。
英語も同じです。最初から長いスピーチを目指す必要はありません。まずは、シンプルで確実な「一皿」から始めていきましょう。そうすれば、いつか「フルコース」をあなたも作れるようになるのです。

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濱崎 潤之輔(はまさき・じゅんのすけ)

大学・企業研修講師、書籍編集者

早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。これまでにTOEIC L&Rテスト990点(満点)を100回以上取得。現在は、明海大学、獨協大学、神戸女学院大学、早稲田大学EXT、福岡女学院大学など、全国の大学で講師を務めるかたわら、ファーストリテイリングや楽天銀行、SCSK(住友商事グループ)、エーザイ、オタフクソース、ブシロードといった大手企業でもTOEIC L&Rテスト対策の研修を行う。主催するTOEIC L&Rテスト対策セミナーはいつも満席になるほどの人気で、スコアアップだけでなく英語力も身につけたい多くの人たちに支持されている。著書に、『改訂版 中学校3年間の英語が1冊でしっかりわかる本』(かんき出版)、『TOEIC L&Rテスト990点攻略 改訂版』、『TOEIC L&Rテスト990点攻略 文法・語彙問題1000』(旺文社)などがあり、累計100万部以上の実績を誇る。

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(大学・企業研修講師、書籍編集者 濱崎 潤之輔)
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