■「ただ褒める」だけでは足りない
あなたが営業目標を達成して、上司から褒められたとします。もし、努力もせず、目標数字にも満たなかった同僚も同じように褒められていたら、褒められた嬉しさも吹っ飛んでしまうのではないでしょうか。
しっかりと過程と成果を観察して、フェアに評価して褒めることが重要です。よくないことはしっかりと指摘するからこそ、ポジティブな意見がより活きてくるのです。
たとえば「オーケー」という、テレビでもよく紹介されている人気のスーパーマーケットがあります。ここの店内には「オネストカード」と呼ばれるPOPがあり、ネガティブな情報も隠さず書いてあります。
「長雨の影響で、レタスの価格が急騰しているので、他の野菜をおすすめします」
このようなマイナスな情報があることで、その横で書かれた、「きゅうりが今とてもみずみずしくておいしいです」という「褒め」の信憑性が高まります。「褒め」に重みが出るのです。
ウソでもなんでもいいからとにかく褒める、というスタンスは見抜かれてしまいます。
■相手の成長を常に考える「利他褒め」
本当に心に残る「褒め」とは、その場しのぎの耳に心地よい言葉ではありません。
相手にとって手厳しい指摘が含まれていたとしても、眠っている能力や情熱を引き出すような力強い言葉です。そのような「褒め」は、相手の成長を心から願っている「利他の視点」から生まれます。
「利他褒め」は、本書『できるリーダーはどこを「ほめる」のか?』の17節でお伝えした「励まし承認」のように、うまくいかなかったときに、どう声をかけるかにも影響します。
「あの一言があったから踏ん張れた」「あの人に言われたから、やってみようと思えた」。そんな風に記憶に残る褒め方には、相手の未来を思うまなざしが込められています。
リーダーであれば、課題点をしっかり指摘しながらも相手の成長を促し、「この人から褒められたい」と思われる存在でありたいものです。
■J.Y.Parkに学ぶ「褒め」の理想型
そのお手本ともいえるのが、ガールズグループ「NiziU」を発掘したオーディション番組「Nizi Project」のプロデューサー、J.Y.Parkさんです(別の章でもオーディション番組を例に挙げましたが、こちらもとても参考になります)。
彼の褒め方・叱り方・フィードバックは、ビジネス界でも絶賛されて話題になりました。企業のマネジメント研修でこの番組を見るべきと思えるほどに、示唆に富んでいます。
「このレベルだと歌手になれません。自信は膨大な練習量から出てきます。僕が思うに優れた才能を持っています。しかし、その才能を活かせるかどうかは自分次第です」
このように、フィードバックは常に相手を尊重し、成長をゴールと捉えて努力を促す言葉になっています。改善点からも逃げず、でも必ずいいところもセットで伝えて、その人の才能や人格を否定することは決してしません。
番組を通して彼が伝えた褒め言葉は、しっかりとした観察に基づき、決して上からではなく、欠点からも目を逸らさず、成長を褒め、相手が気づいていない箇所も具体的に褒め、そして、心から相手の成長を願う……と、本書で紹介したスキルを網羅しています。
しかも特筆すべきことに、これらを覚えたての日本語で伝えることもあったのです。
語彙力や表現力に頼らなくても、相手を本気で思う姿勢は十分に伝わるということです。
ポイント➡相手の成長を常に考え、課題点も丁寧に指摘することが重要。
■褒める人は、褒められる人になる
最後にお伝えしたいのは、「褒める」という行為は相手を幸せにするだけでなく、めぐりめぐって自分の人生をも明るくしてくれるということです。
「褒める人は、褒められる人になる」ということを、わたしは日々実感しています。
褒めることでメンバーが成長し、チーム全体のパフォーマンスが向上します。結果が出て、リーダーの自分も褒められると、感謝の気持ちが強くなり、さらに人を褒めやすくなります。
これが「褒めスパイラル」です。
■見る人は、見られるようになる
相手をしっかりと見ることの重要性をお伝えしてきましたが、注目すると注目されるようになる、という効果もあります。
知人に誰からも愛される、社交性の塊のような人物がいるのですが、パーティーや出会いの場ではひたすら人の目を見続ける、と語っていました。そうすると向こうが気になってこっちを見てくるそうです。
モテる人の発想は違うなと感心しました。わたしがやるとただの不審者に思われる気がしてなかなか真似はできませんが、人は見られると見返すというのは確かです。
本書でお伝えしてきたように、「褒める」というのは相手をしっかり見るという行為です。
周囲をしっかり見れば、周囲からも見られるようになり、これが「褒める人は、褒められる人になる」のベースを作ることになります。
■「なぜかうまくいく人」の正体
ここまで読んでいただき、褒める技術とは、ただ単に言葉だけを磨いて上辺で感じのいい発言をすることではない、と理解していただいたと思います。
● 相手をしっかり見る視点や姿勢
● 物事を多面的に見る柔軟性のある思考
● マイナスの中にもプラスを見つけ出す力
これらを身につけていくことで、人生が好転していきます。
周りの「華がある人」「持っている人」「愛されるキャラの人」を思い浮かべてください。知人にいなければ、タレントやスポーツ選手などでもかまいません。その人は、ポジティブ思考の持ち主ではないでしょうか?
常にネガティブで、人の欠点ばかり探し、いつも愚痴を言っている人ではないはずです。
世の中には「なぜかうまくいく人」がいますが、その正体は本書でお伝えしてきたようにポジティブに物事を捉えて、言語化する人でもあります。
ここまで読んでいただいたら、もう準備は整っています。あとは実行に移すだけです。
ぜひ今日から、「褒め」を始めてみてください。
ポイント➡褒めの技術や思考を身につけることで、結果として物事がうまくいき始める。
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山本 渉(やまもと・わたる)
マーケティング会社統括ディレクター
引きこもりを経験し、高校を中退後アメリカに留学。大学でマーケティングとエンターテインメントを学び卒業。帰国後、国内最大手のマーケティング会社に入社。現在はジェネラルマネージャー。部長を束ねる統括ディレクターも兼ね、年間100近いプロジェクトをメンバーに依頼している。著書『任せるコツ 自分も相手もラクになる正しい“丸投げ”』(すばる舎)はベストセラーに
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(マーケティング会社統括ディレクター 山本 渉)

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