日本の「学歴社会」は今後どうなっていくのか。実業家の堀江貴文さんは「大学全入時代となったいま、『大卒』という肩書き自体に意味がなくなってきている。
今日本で行く価値がある大学は一つしかない」という――。
※本稿は、堀江貴文『バカ親につけるクスリ これ以上ニッポンをダメにしないための教育意識改革大全』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。
■ホリエモン「学校は不要」
「学校は不要」と僕は断定している。また、僕ほど強い論調ではなくとも、学校制度の問題点はさまざまな人たちが長年指摘してきた。それでも、小・中学校から高校、大学と、学校という教育機関は現在に至るまで綿々と維持されてきた。
その背景には、根強い「学歴偏重主義」がある。未だに多くの日本人が学歴を崇拝し、学歴をより高くしようと奮闘したり、学歴で他人を値踏みしたりしている。
人材を採用する企業側も、現時点では依然として、人材を選ぶ際に学歴でフィルタリングすることが多い。
だが、こうした学歴の役割も、近い将来崩壊するのは間違いない。僕はずっと前から、「大学にはブランドとしての価値しかない。だから、東大以外に行く必要はない」と公言している。炎上しようが批判されようが、撤回するつもりはない。

■大学は「ハイブランド」と同じ
偏差値の高い有名大学を出たからといって、その人が優秀な人材であるとは限らない。つまり大学とは、いわば「必ずしも実態の伴わない幻想」と化している。だから「大学はブランドに過ぎない」のだ。
そういう意味で大学は、ルイ・ヴィトンやエルメスなどの「ハイブランド」と同じだ。ハイブランドの価値が失われないのは、作り手・売り手と買い手とがブランドの価値という幻想を作り上げ、お互いにそれを信じ、ビジネスとしているからだ。
彼らは「ハイブランドの品を持っている」という「ステータス」を売り、それを欲する人が買う。「ブランドのステータスなんかいらない、自分に似合うかどうか、機能性は高いかどうかなどのほうが大事だ」と考える人は買わない。シンプルな需要と供給の話なのである。
■真に価値がある大学は東大だけ
大学に関しても、「大学に入学した」あるいは「大学を卒業した」というブランドステータスが欲しい人は、大学に行けばいい。
ただし現在は、進学先を選ばなければ大学に入学できる「大学全入時代」に突入している。2024年度の全国の国公私立大学の総入学定員に対する定員充足率は、98.1%と、記録が残る10年度以降初めて100%を切った(文部科学省調べ)。私立大学に至っては59.2%が入学者の定員割れを起こしている(日本私立学校振興・共済事業団調べ)。

かつて、大学への入学あるいは卒業自体がブランドステータスだった時代はたしかにあったが、それはとっくに終わっている。
となると、「どんな大学でも行く価値がある」わけではない。しょうもないブランド品を持つ必要がないように、ブランド価値が低い大学には行く必要がない。
せいぜい「入学志望者が殺到するような上位の名門校なら、まだ行く価値がある」ということになる。大学側としても、特に上位の名門校に関しては、今後ブランドビジネスに突き進む可能性が大いにある。そうなれば、「名は知れていても教育の中身はない」という、教育機関としてあるまじき事態も出てきそうだが。
日本で真にブランド価値のある大学は、東大くらいだ。だから、「大学に関するブランドステータスが欲しい」と考える人は東大に行くべきであり、むしろ東大以外なら行く必要はない。
以上が、「大学にはブランドとしての価値しかない。だから、東大以外に行く必要はない」と僕が断言する理由だ。
■ホリエモンが東大を卒業せず中退したワケ
僕自身は、「東大中退」という学歴である。わざわざ時間をかけて卒業しなくても、「東大」というブランド価値はすでに手に入れることができた、と感じたから中退した。

親を含む周囲の人たちからは、「せっかく東大に入ったのに、中退するなんてもったいない」「卒業はしておいたほうがいい」などとさんざん言われ、心配された。
しかし日本社会においては、「東大に入学することは難しい」という共通認識が世間に浸透しているため、東大に入学した人物だというだけで十分「箔」はついた。それは中退しようと卒業しようと変わらない。だから、「やっぱり東大を卒業しておけばよかった」などと後悔したことはない。海外の大学の場合は、入学よりも卒業のほうが難しいため、こうはならないが。
とはいえ僕が東大に入ったのも、中退しても箔はついたなと感じたのも、「学歴偏重主義」最盛期だった頃の話だ。ちなみに僕は1972年生まれなので、団塊ジュニア世代であり、受験戦争は今よりも厳しい時期だった。
■「学歴フィルター」はやがてなくなる
「そうは言っても、企業に『ホワイトカラー正社員』として入社するには、やっぱり学歴が必要でしょ」という反論が聞こえてきそうだ。
もちろん就活の現場では、学歴によって応募者をふるい分ける「学歴フィルター」が存在している。たとえば何万人分ものエントリーシートが送られてくる大企業は、人数を絞るために学歴を選考の手段にしているし、エンジニアを採用したい企業は、応募者が大学で何を専攻してどんなスキルを持っているかを確認する。
ただしそれは、これまでの話だ。これからは、ホワイトカラー正社員なんて過去のものになる。
就活自体が激変するのだ。
そもそも、なぜ会社が設立されるのかといえば、投資家からお金を募るためだ。会社は個人よりも信頼があるため、お金を集めやすい。資金は成し遂げたい大きなプロジェクトを遂行するために用いられ、そのひとつの例として、給料を支払って労働者を雇っている。労働者は、労働力(知力)を切り売りすることで、対価(金銭)をもらう。
しかし、今まで当たり前に成り立っていたこの構図も、今後は変わっていく。
■AIに多くの人が仕事を奪われる
インターネットや産業ロボット、そしてAIの発達により、昔よりも労働力が必要ではなくなっているからだ。今後、ホワイトカラーの9割は仕事を失うことになると僕は予想している。
企画書やプレゼン資料、プレスリリース、議事録などの書類作成、情報収集、営業事務、会計処理、メールのやりとり……。こうした知的労働や事務作業など、今まで人間の手作業で行われてきた仕事の多くが、AIで代替可能になった。
つまりこれらの仕事をしている人たちは、まもなくお役御免となる可能性が高い。日本の全労働者の4割以上がホワイトカラーなので、その9割となると、労働者の約3人に1人が職を失うことになるわけだ。

企業の「ホワイトカラー正社員」でいられるのは、一握りの経営幹部と、将来の経営幹部候補だけである。
そしてこの「一握りの経営幹部」と「将来の経営幹部候補」は、結局のところ東大卒レベルの「超高学歴」で頭のいい奴しかなれない。
やはり、東大以外の大学に行く必要はないということだ。

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堀江 貴文(ほりえ・たかふみ)

実業家

1972年、福岡県生まれ。ロケットエンジンの開発や、スマホアプリのプロデュース、また予防医療普及協会理事として予防医療を啓蒙するなど、幅広い分野で活動中。また、会員制サロン「堀江貴文イノベーション大学校(HIU)」では、1500名近い会員とともに多彩なプロジェクトを展開。『ゼロ』『本音で生きる』『多動力』『東京改造計画』『将来の夢なんか、いま叶えろ。』など著書多数。

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(実業家 堀江 貴文)
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