※本稿は、堀江貴文『バカ親につけるクスリ これ以上ニッポンをダメにしないための教育意識改革大全』(主婦の友社)の一部を再編集したものです。
■「金だけ出せ、口や手は出すな」
ここでは、親は子どもをどう教育すればいいかについて書いていく。
簡潔に言おう。
「子どもの自主性に任せろ」
「金は出して、口や手は出すな」
これに尽きる。
繰り返すが、親がどんなに子どもの将来を心配しても、それは杞憂に過ぎない。また親が最先端の情報を得て、最適の教育を我が子のために選べる自信があったとしても、それが20年後に通用している保証はない。
「親の考えは子どもよりも古い」という事実を、潔く認め、子どもの自主性に任せてほしい。
■「ベストな教育像」はどんどん変わる
僕は中学、高校と福岡県内でトップの進学校へ通い、東大に合格した。当時における最先端の教育環境で学んだ側かもしれない。それでもIT革命やグローバル社会の到来は見通せなかったし、スマホの出現も、中国がアメリカと並ぶ世界最大の富裕国になる世界も、新型ウイルスの出現でEUもアジアも北南米も一斉にパニックになる時代も、予測できなかった。
未来を見越した最良の教育なんていうものは、幻想に過ぎないのだ。
しかも今後は、過去20年の何倍ものスピードで世界が変わっていく。社会で求められる人材が変わるのだから、偏差値教育も、語学の優先順位も変わるはずだ。多くの大人が今持っている「ベストの教育像」は、まったく違う形に変容していくことだろう。
■子供にマウントを取るな
僕はずっと不思議に思っていることがある。
多くの人が親になった途端、まるで自分が立派な教育者にでもなったかのような振る舞いをし、子どもにマウントを取ることだ。
乳幼児は、誰かの庇護がないと生きていけない、か弱い存在である。だから多くの親は、「この子は私が守ってあげなければ」と意気込むのだろう。乳幼児の衣食住を満たし、生かしてあげるのは、たしかに親の仕事だ。
しかしそれが高じて、子どもを自分の所有物のように思い、「親である私は絶対的な存在であり、子どもを正しい道に導いてあげなければいけない」と思ってしまう親があまりにも多い。そして、自分の価値観や今ある知識で判断して、子どもに自分の意見を押しつけるようになる。親が上で子が下という上下関係を作り、マウントを取るやり方でしつけをしようとするのだ。
子どもと親は、対等である。
僕はずっとこう考えている。
この考え方はアドラーと同じだと、ライターの古賀史健さんから聞いた。彼は『嫌われる勇気 自己啓発の源流「アドラー」の教え』の著者(岸見一郎氏との共著)で、僕の『ゼロ なにもない自分に小さなイチを足していく』という本も担当してくれた人物だ。僕はそれまでアドラーの本は読んだことがなかったけれど、読んでみたらたしかに同じ考え方だった。アドラー心理学は子育てのロジックに役立つのだ。
一言で言うと、親は子どもと人間として対等に向き合わなければならない、ということだ。
■粗相をした幼児に「叱りつけ」は無意味
コップについだ牛乳を飲もうとしている2歳くらいの子どもがいたとする。母親が「座って飲みなさい」と何度も言っているのに、子どもは牛乳の入ったコップを手に持ってフラフラ歩き、ついに床にぶちまけてしまう。
ここで母親としては、「だから座って飲みなさいって言ったでしょ! どうして言うことを聞かないの!」と叱りつけてしまう。片づけも大変だし、言いたくなる気持ちはわかる。
しかしここで大切なのは、子どもに注意したり、叱ったりすることではない。叱ることは、親と子の間に上下関係を作ることだ。
「あなたが立って牛乳を飲んだからこぼれたでしょう。こぼれた牛乳は飲めなくなったよね。牛乳をこぼさないためには、次から座って飲んだらいいんじゃない?」ということを、ロジカルにただ説明すればいい話なのだ。
■論理的な説明が子供の考える力を育てる
2歳の子どもは、まだ経験が少ないから、「立ったまま牛乳を飲んだらこぼれる確率が上がる」ということを知らない。親は知っている。ならば、知っている人が知らない人に対して、知識を伝えればいいだけだ。
さらに、なぜ牛乳がこぼれたのか、どうしたらよかったのか、子どもと一緒に考えるといい。「次からはママの言う通りにしなさい!」と、上から目線で一方的に伝えるばかりでは、子ども自身の考える力は育たない。
子どもがスーパーで「このお菓子を買って!」と泣き出したときも、「ダメなものはダメ!」「時間がないから行くよ!」「泣くなんて周りに迷惑でしょ!」などと頭ごなしに叱りつけてはいけない。なぜ今日は買わないのか、どういう条件のときなら買うのか、などを論理的に説明しよう。
もちろん、明確な犯罪行為や、命の危険にかかわることは止めなければならない。
■「禁止」するほど親はゲームやYouTubeに詳しいのか
大人の禁止が、子どもの没頭力や好奇心を奪う。
多くの親が、子どもに対して禁止を乱発している。ゲームをしちゃダメ、YouTubeを見ちゃダメ、スマホばかり見ちゃダメ。許容するタイプの親も、このゲームはしてもいいけどこれはダメ、このYouTubeチャンネルは見てもいいけどこれはダメ、などと、何らかの判断基準に従って、何らかの禁止を子どもに言い渡している。
こういう親は、子どもと対等な関係に立たず、上から目線で「子どもには判断能力がない」と勝手に決めつけている。そして、自分の思い込みを子どもに押しつけているのだ。
僕からすれば、「あなたは親かもしれないけど、そもそもそんなにゲームやYouTubeチャンネルに詳しいんですか?」と思う。
■IT業界の成功者は親からパソコンを勝ち取った人たち
僕も親からそういう「禁止」を言い渡され、大いに反発した。僕は中学生のときにパソコンにハマり、勉強そっちのけでプログラミングに没頭していた。そのため入学当時トップ10だった成績は、みるみる下がって学年で199番にまでなった。
それが原因で母親は、僕が大事にしていたパソコンを、夜中に近くのゴミ捨て場に捨ててきた。
このときの母親は、パソコンよりも勉強をすることのほうが、僕の人生において大事だと判断していたわけだ。でも僕からすれば、「あなたはパソコンのことをどれだけ知ってますか?」という思いだった。
結果としては、あの時期のプログラミングへの没頭体験があったからこそ、それから迎えたIT起業ブームに乗れて、今の僕がいる。プログラミングに没頭して本当に良かったと思っている。
つまり親というのは、明らかに間違った判断をするときもあるのだ。
こうした親子間の「戦い」は、割と普遍的に起きているものでもある。IT業界の仲間を見ていても、親との戦いの中でパソコンを勝ち得た人の一部が、現在成功している。
もちろん、すごく理解がある親もいて、頼めばパソコンなどを買い与えてくれて、しかもそれが役立ったかどうかの結果について何も言及されなかった、という人もまれにはいる。
■「スマホを渡して放置」でいい
今の時代なら、ある程度の知能のある子は、スマホを渡して放置でいい。
子どもは勝手に学んでいく。ITリテラシーも、情報収集能力も、子どもたちはみるみる親世代を追い抜いていく。
こう言うと、「スマホやSNSを自由に使わせたら、犯罪に巻き込まれることだってあるじゃないか。ネットの世界には悪意を持つ人もいっぱいいる」と反論してくる人たちがいる。
まず断言しよう。デジタル犯罪は防止できない。大人はスマホやSNSのなかった時代を知っているから、デジタル犯罪も防止できるんじゃないかと思ってしまうのだろうが、無理だ。
そのため各々がITリテラシーを身につけて自己防衛するしかない。
子どもは失敗しながら、失敗を通じて少しずつITリテラシーを学んでいけばいい。迷惑をかけたりかけられたり、子どものうちに痛い目に遭って、反省すればいいのだ。
「ただの一度も失敗させたくない」とそれでも言い張るなら、ITの利便性を享受するのは諦めて、IT環境のない昭和的生活を送るしかない。
■子供の可能性を潰す「バカ親」
子どもに失敗をさせたくないからと、子どもに過保護・過干渉になる親は、以前からいたし、最近は少子化のあおりもあって特に増えてきている。
僕が最初の会社を興して順調に成長していたとき、有望な若者がバイトとして入ってきた。灘中高出身の東大生で、驚異的な速さでITのスキルを伸ばしていった。社員として働いてくれたら、1億円の売上が立つ。そう言って励ますと、彼はがぜんやる気になって、大学を中退して入社したいと申し出てきた。僕としては大歓迎だった。
ところが、彼の母親がオフィスに怒鳴り込んできたのだ。「こんな会社に入れるために、うちの子は東大に入ったわけじゃない!」と、わめき散らした。呆然とするしかなかった。スタッフがなんとかなだめて、母親には引き取ってもらった。
それがきっかけで東大の彼は意気消沈して、バイトを辞めてしまった。
直後に会社は上場して、僕たちはIT界の旗手となった。もし入社していたら、収入的にも将来的にも、彼の人生はすごく面白いものになっていたはずだ。
母親の言い放った「こんな会社」が、一般的な親たちの考え方を象徴している。
じゃあ、どんな会社だったらいいのか? 名の知れた老舗の大企業に息子が就職すれば、東大に入れた苦労が報われるというのだろうか。報われるかどうかは子どもが決めることなのに、勝手な決めつけで、子どもの選択を操作するのは最悪だ。この母親は、思い込みを押しつける上に過干渉だった。
■20年前の常識を振りかざす過保護な親になるな
「大企業なら安泰」という古い価値観にこだわっているような親には、決して従ってはならない。東大生のバイトの彼は、今でも後悔しているんじゃないだろうか。
親の思考は、だいたい20年ほど前の「常識」でつくられたものだ。今の社会に通用するわけがない。世間は厳しいぞ! などと言うけれど、これから訪れる「未知の世間」を親が理解しているわけではない。
「未知の世間」の当事者は、むしろ子どものほうなのだ。「今」を生きていく子どもが、「今」の情報と感情を、最優先にして生きていくべきだ。
親の命令に従って成功できたビジネスマンを、僕は知らない。
過保護な親も多い。子どもの行動を先回りしてあれこれ世話を焼く様子から「ヘリコプターペアレント」とも呼ばれる。過保護な親のもとで育つ子は、自分の要望ややりたいことがわからなくなったり、無気力になったり、リスクを取る行動ができなかったり、打たれ弱かったりする。また大人になっても親元から自立できなくなるケースもある。
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堀江 貴文(ほりえ・たかふみ)
実業家
1972年、福岡県生まれ。ロケットエンジンの開発や、スマホアプリのプロデュース、また予防医療普及協会理事として予防医療を啓蒙するなど、幅広い分野で活動中。また、会員制サロン「堀江貴文イノベーション大学校(HIU)」では、1500名近い会員とともに多彩なプロジェクトを展開。『ゼロ』『本音で生きる』『多動力』『東京改造計画』『将来の夢なんか、いま叶えろ。』など著書多数。
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(実業家 堀江 貴文)

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