好印象な人はどこが違うのか。美容師の操作イトウさんは「いわゆる『清潔感』があるかどうかで印象は大きく変わる。
特に男性は『清潔感』と衛生面での『清潔』を勘違いしている人が多いので、注意したほうがいい」という――。
※文中、「男性」「女性」と断定した言葉を用いていますが、差別的な意図はありません。
■なぜ男性ばかり「清潔感がない」と言われるのか
今年も暑すぎる夏、外に出るだけでも噴き出す汗。通勤時間の電車やバスでは、いわゆる「清潔感」がない男性を見かけます。
疲れた体に鞭打って出勤するビジネスパーソンに敬意を表しますが、「清潔感」がない人を目にすると、正直、同性であっても心地良くはないものです。
昨今、XなどのSNSで、男性の「清潔感」をめぐる議論が頻繁に巻き起こっています。
またマッチングアプリでの出会いもポピュラーになっている一方で、適齢期でありながら結婚できない男性も増加中。メディアではズバズバ言う婚活アドバイザーも話題になっています。こうした中、男性が一様に問われる「清潔感」とは、なんなのでしょうか。
まず、「清潔感」はなぜ男性にばかり求められ、問われるのでしょうか。それは、多くの女性はその条件をクリアしているからです。それも“意識的に”です。

「清潔感」は多くの女性にとって「自身も日常的に気にかけている」ことであるため、常識的な振る舞いだと捉えられています。だからこそ、「清潔感」がない人に対して不快感を抱くのです。
そもそも改善できる「清潔感」について、多くの男性ができていないからこそ「だらしがない」と感じているのでしょう。
また、このところ「チー牛」に代表されるような、「女性が男性を揶揄する/侮蔑する」表現が頻出しているように感じます。そしてこれらには、以下のイラストのような「テンプレート的な外見」がイメージとしてあるのも事実です。
イラストのような外見はなぜ女性から「清潔感がない」と言われるのでしょうか。
■「清潔感」と「清潔」は大違い
背景には、多くの男性が「清潔感」という概念を上手く捉えられていないことがあります。一般に用いられ議論されている「清潔感」が示す範囲があまりに広すぎるのです。
ですから、まずは言葉の解像度を上げてみましょう。
女性のいう「清潔感」という言葉は、基本的に「女性から男性に向けられる」ものを指しています。恋愛関係の有り無しを問わず、女性が日常生活で触れる「人への印象」を測る指標の一つで、その指数が低いと不快感を覚えたり、不愉快に感じてしまいます。
まず多くの男性が勘違いしているのが、「清潔感」と「清潔」について。
この2つは、異なる概念です。
衛生面での「清潔」は、毎日お風呂に入っていれば担保されますが、「清潔感がある」とは言えません。同じく、店前で必ずアルコールをシュッシュしていても、「清潔感」があるとは感じません。
■「パーカーおじさん」が嫌われるワケ
つまり、いわゆる「清潔感」は、主に「外見」に対して向けられる言葉なのです。「立ち居振る舞い」に関しての要項もたくさんあるかと思いますが、筆者は美容師なので、こちらは割愛して「外見」についてのお話として進めます。
そして男性が見落としがちなのが、「清潔感」の基準が世代ごとにアップデートされ続けていることです。
皆さんもお察しの通り、若い世代の「清潔感」への感度はかつてないほどに高まっています。メンズメイクやムダ毛処理など、若い男性の抵抗感は低く、積極的に取り入れています。
2025年現在の「清潔感」の水準は、若い世代によって確実に引き上げられています。
つまり、若い頃に覚えた「清潔感」を意識していても、時が経った今ではその水準に達していない可能性があります。
だからこそ、“元”若者のおじさんは揶揄されやすい対象なのかもしれません。
パーカーおじさんだったり、お父さんの整髪料の匂いだったり、“あの頃”のマナーを貫いていても、「基準に達していない」と揶揄されてしまうのです。

■男性を邪魔する「ありのまま信仰」
このように、「清潔感」のポイントは「内面」ではなく「外見」が大きく占めています。しかし多くの男性は、なぜプラスに働くはずの「清潔感ある身なり」をしようとしないのでしょうか。
筆者は、日本人男性にある2つの「特有の価値観」が関係しているのではないかと推測しています。多くの「清潔感」を欠く男性には一定の価値観があって、それが意識改革を阻んでいるのです。
その価値観とは、「ありのまま信仰」と「カッコつけたくない思想」です。
例えば、恋愛や人間関係にはよく「人は見た目によらない」という格言が用いられます。SDGs等、差別的な言動が慎まれるようになった現代では、至極真っ当な意見です。
ですが「人は見た目によらない=ありのまま信仰」を信じて、初対面の相手に「ありのままの格好」をすれば、怪訝な顔をされること請け合いです。
「人は見た目によらない」は、時間を共有して、お互いを認識してから通用する話です。初対面の相手に「不快感を与えない外見」に気を遣うのは基本的なマナーです。
また、男たるもの「気取らない」ことで、ワイルドなカッコよさを醸し出したい、と考えている方もいるはずです。
この「ワイルドなカッコよさ」もまた、「ありのまま信仰」の一部です。
ですが、これらは男性が考えている以上に「女性ウケ」が良くありません。
■身なりを整えるのはナルシストなのか
2つ目は、「カッコつけたくない思想」です。
どんな男の子にも小学3年生ぐらいから訪れる「カッコつけるのは、カッコ悪い」という価値観。これを、大人になっても信じている方は多いです。
これには、男友達から「ナルシストだと思われたくない」というバイアスがかかっています。だから、身なりを整えることに対しても「カッコつけてる」と感じて、施した自分に嫌悪感を抱いてしまう。
つまり多くの男性は「身だしなみ」と聞いても、「カッコつけること」だと紐づけてしまっているのです。
このように、身なりを整えることにうっすらと抵抗感があるという男性は多いのではないでしょうか。このような考えを持つ男性が「清潔感」を意識するには、意識改革が必要です。
■「清潔感」とは、「エチケット」のこと
「清潔感」がない男性が相手を不快にさせている理由は、“無意識に”嫌な思いをさせているからです。裏を返せば、相手が不快にならないような「気配り」ができていれば、「清潔感」の問題は解消され、好印象を与えます。
これは、言い換えると「エチケット」です。

つまり女性の言う「清潔感」とは、「外見のエチケット」のことです。女性は男性に、相手への気配りが感じられる「外見」を求めているのです。
ここまで「清潔感」の正体を紐解いてきましたが、好印象になるためには「カッコつける」のではなく、「外見のエチケット」を意識するのが正解です。
では具体的に、どうすれば「清潔感」を獲得できるのでしょうか。
美容師からオススメするポイントは、たった二つ。
それは、今すぐ「メガネ」と「ヘアスタイル」を変えることです。
■①まず、メガネを新調しよう
まず、清潔感のない男性の「テンプレート的なルックス」で一番目立っているのが、メガネです。
何年使い続けているか分からない、そのメガネ。
フレームが傷ついていたり、ちょっと歪んでいたり、レンズが指紋で曇っていたり、経年劣化でちょっと黄ばんでいたりしませんか。これらは、相手にはお見通しです。
もちろん「メガネをかけていること」が悪いのではありません。多くの清潔感のない男性がかけているその「横長のフレーム」は、2000年代に最もポピュラーだったもの。

そのため、これをかけているだけで、長らく新調していないことが既にバレています。そして、そこに注意を払っていないから「だらしない」印象を助長してしまうのです。
今のメガネの定番は、縦に広めのクラシカルなデザインです。
とはいえ、わざわざトレンドを追う必要はありませんし、カッコつけたデザインを選ぶ必要もありません。ですが、今っぽいフレームを選ぶと不思議と若々しく、スッキリした表情に見えるようになります。
メガネは量販店でお手頃に購入することができますし、実は店頭に並んでいるもののほとんどがトレンドに沿ったデザインのものです。ですから、その中から自分の好みで選ぶだけで自然と「清潔感」はアップします。
後は、毎日そのメガネをかけるだけ。このように、簡単なのに大きな変化を生むからこそ、定期的にメガネを新調することは大変オススメです。
■②美容室に行かずとも、髪を整えよう
二つ目は、伸びた髪を整えることです。
伸びた髪はだらしない印象になってしまい、清潔感のない印象に直結します。そのため、自分の普段のペースよりも早めに髪をカットすることは、かなり効果的です。
ですが、「美容室に行くのは抵抗がある」「近所の床屋で済ませている」「1000円カットで十分」と考える男性は多いのではないかと思います。
「美容室でカッコよくしてもらう」必要はありません。改善することはたった一つ、「トップのふんわり感」です。
この「トップのふんわり感」は、床屋さんや美容師さんからよく聞くアドバイスだと思います。そして、これに関して「ワックス付けるんでしょ? カッコつけたくないから」と、躊躇する方は多いと思います。
ですが、「トップのふんわり感」は「カッコつけるため」だけにオススメしている訳ではありません。
シンプルに、頭全体の「バランスが良くなる」のです。
■アジア人の頭は“ジャガイモ”に見えやすい
多くのアジア人は、「頭でっかち」で“ジャガイモ”に見えやすい要素を兼ね備えています。
前から見た時に、特に目立つのは「ハチ」です。
「ハチ」とは、頭の上の両サイドの“骨張っている部分”のことです。ハチが張ると頭が四角く見えて、伸びた髪の毛もそのまま四角く、大きくなります。
これが「トップがふんわり」立ち上がることで、トップのフォルムが三角に変わり、ハチを目立たないようにすることができます。するとイラストのように、頭がバランスよくスッキリして見えるようになるのです。
この「トップのふんわり感」は、ドライヤーで簡単に作ることができます。ですが、ドライヤーの風だけで根元を立ち上がらせると、不自然な立ち上がりになってしまいます。
そこで、髪のてっぺんを片手で握りながら、根元にドライヤーの風を当てましょう。これによって、根元が立ち上がるクセが付き、自然にふんわりした形になります。
これらは「清潔感」を演出する上での最初の一歩でしかありません。ですが、やるかやらないかで大きな差がつくことでもあります。
少しずつでもブラッシュアップして、好印象な外見を目指すキッカケになれば幸いです。

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操作イトウ(そうさいとう)

美容師

東京・自由が丘を拠点にするアラフォー美容師。「ヘアスタイルはロジックで美しく、カッコよくなる」「ステキな美容師さんに出会ってほしい」をメインテーマにしたブログをnoteにて執筆している。

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(美容師 操作イトウ)
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