いいお金の使い方とは何か。医師の和田秀樹さんは「圧倒的にお金を使うのは『食』で、中でもワインには一番お金を使っていて、200本くらいのワインがセラーで眠っている。
また外食も好きでラーメンや高いステーキもガンガン食べる。一方で、住まいの優先順位は低い。いま一人で住んでいるマンションは狭くてしょぼいが、広さよりも便利さを重視している」という――。
※本稿は、和田秀樹『どうせあの世にゃ持ってけないんだから 後悔せずに死にたいならお金を使い切れ!』(SBクリエイティブ)の一部を再編集したものです。
■税理士も驚くほどワインにお金を使い続ける理由
何が無駄で何が必要なのかは人それぞれ。私の場合、衣食住や趣味などいろいろある中で、お金を使う優先順位は食が圧倒的です。
その中でも一番お金を使ってるのはワインです。税理士さんも驚くほど使っていますが、ワインは私に至極のひとときを与えてくれるので全然惜しくない。いいワインがあれば、これからも買うつもりです。
ストックもかなり増え、いまは200本くらいのワインがセラーで眠っていますが、普通に買うよりは安い値段で買っていますし、いずれは全部飲むつもりです。
いいワインは、手に入れたときのエピソードを回想するのも楽しいですし、「どんなタイミングで、どんな仲間と飲もうか」と飲むときを想像するのも楽しい。
ワインセラーに並ぶコレクションを眺めるだけでも、子どもが大好きなおもちゃを並べて悦に入るようなときめきを与えてくれます。
もちろん飲んだら飲んだで、その味わいだけでなく思い出や物語も増えていく。ワインの本数分、喜びが幾重にも広がるのです。
次にお金を使うのは外食です。ラーメンが好きで、週に5日食べるときもありますけど、高い金を払ってステーキもガンガン食べています。高いと言っても、ワインと比べたら安いものですが。
■高級ホテルへの宿泊は想像以上の価値
衣食住のうち、優先順位がいちばん低いのは住まい。いま一人で住んでいるマンションはしょぼいですよ。立って半畳寝て一畳じゃないけれど、とくに年を取ってから広い家は必要ない。住まいは、広さよりも便利さを重視しています。
いま、都心でちょっとしゃれたマンションになると3億円ぐらいするでしょう。
私は、その3億円をほかに使えるほうがいいし、どうしても豪華なところで寝たければ、たまにホテルに泊まったほうがよっぽどいいかなと考えています。昔、そういうことをやっていた時期がありましたが、気分転換にものすごくいいです。

だから、都内にお住まいの方でも、非日常を体験するつもりで「マンダリンオリエンタル東京」や「ザ・リッツ・カールトン東京」など、高級ホテルへの宿泊はおすすめです。部屋のグレードにもよりますが、十数万円から宿泊できると思います。
この場合、「たかが1泊に十数万円を払うのか」と考えるより、「高級ホテルの体験代+思い出代+自慢話代+パートナーへのプレゼント代として十数万円を払う」と考えてみてください。想像以上の価値があると思いますよ。
■服や車を選ぶときは「自分の気分の良さ」で
最後に衣食住の「衣」についてですが、私は、洋服にはある程度お金をかけています。通信教育がうまくいって金があった頃は、オーダーで服をつくっていました。
この前、ちょっと本が売れて金ができたので、昔着ていたお気に入りのブランドのスーツを買いに行ったら、当時35万円ぐらいだったのが80万円近くになっていました。人間の価値観というのはそのときどきで変わるものなんだと改めて思ったのですが、100万円のワインは買えるのに、80万円のスーツは高く感じてしまって。
10~15万円で買えるブランドのスーツにしました。まったくの余談ですが、そのブランドも、その後、大谷翔平くんが広告に登場して、いま人気が出ているようです。
いいスーツというのは、ヴィトンのバッグのようなブランド品と違って、わかる人にしかわからない。そこがいいんじゃないかなと思っています。

見栄と気分で買うものと言えば、あとは車ぐらいです。服や車を選ぶときは「自分の気分の良さ」を最も大事にしています。
■見栄や美学に金を使うお年寄りはカッコいい
「見栄なんて捨てたほうがいい」とよく言われますが、私は見栄を張ることは無駄ではないと思っています。
虚勢を張るのは確かに虚しいことだと思います。お金がないのに、見栄を張って浪費するのは問題だと思いますが、たまたま金を持っていて、それでいいスーツを着たりいい車に乗ったりして、その気分の良さを楽しむのは決して悪くない。
年を重ねれば重ねるほど、見栄があるお年寄りのほうが外から見て、カッコ良く見えます。
ちょっとでもいい服を着たいとか、ちょっとでもいい店に行きたいとか、ちょっとでもいい旅館に泊まりたいとか、お金をどこにどのくらいかけるかは別として、そういう見栄や自分の美学に従って生きている人は、若い頃以上に高齢者のほうがカッコいいですよ。
モナコ国際映画祭に招かれたとき、高齢の男性が次々にフェラーリで会場に乗りつけるのを目にして、つくづくカッコいいなあと羨ましくなりました。
そういう贅沢をさりげなくやれるのも高齢者だからこそかもしれません。同じことをしても若者なら、「どうせ金持ちの放蕩息子なんだろう」と白い目で見られるのがオチでしょう。
シワだらけの顔で背中も曲がっているおばあさんが、シャネルのスーツを着ていたら「お笑いもんだね」とけなす人がいるかもしれないけれど、「最後まで綺麗でいたい」というその気持ちを天晴れだと感心する人もいると思う。私は、その心意気を買いたい。

■外見が若々しい人のほうが長生きする
70歳をすぎると、男性でも女性でも贅沢が絵になるし、いろいろなものが似合ってくる世代だと私は思っています。もう年だからと言って、着るものにも無頓着になったら、気持ちも老け込むばかりです。
別に高いものである必要はないけれど、自分の気に入ったものを身につけて、「あの人、年を取ってもカッコいいわね」って言われたいじゃないですか。
そのために使うのは決して無駄金ではない。外見が若々しい人のほうが長生きすることもわかってきているのですから。

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和田 秀樹(わだ・ひでき)

精神科医

1960年、大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。東京大学医学部附属病院精神神経科助手、アメリカ・カール・メニンガー精神医学校国際フェローを経て、現在、和田秀樹こころと体のクリニック院長。国際医療福祉大学教授(医療福祉学研究科臨床心理学専攻)。一橋大学経済学部非常勤講師(医療経済学)。川崎幸病院精神科顧問。
高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたって高齢者医療の現場に携わっている。2022年総合ベストセラーに輝いた『80歳の壁』(幻冬舎新書)をはじめ、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『老後は要領』(幻冬舎)、『不安に負けない気持ちの整理術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『どうせ死ぬんだから 好きなことだけやって寿命を使いきる』(SBクリエイティブ)、『60歳を過ぎたらやめるが勝ち 年をとるほどに幸せになる「しなくていい」暮らし』(主婦と生活社)など著書多数。

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(精神科医 和田 秀樹)
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