昔ながらの木桶仕込みの醤油は、木桶に棲みつく微生物のはたらきにより約1年間発酵・熟成されることで、味わい深く芳醇に仕上がります。しかし、近年の一般的な醤油は短期間で大量生産するために、ステンレスやプラスチックのタンクで加熱しての生産がほとんどです。
木桶でつくる醤油の国内生産量はわずか1%、醸造用の木桶をつくる職人も2、3社ほどで、もはや絶滅危惧種と言われています。

生活クラブ生協で取り扱う醤油は木桶で天然醸造しており、取組み開始から50年経つ今もなお多くの組合員に愛されるロングセラー品です。「これからも木桶仕込みの醤油をつくり続けてほしい」という想いを込めて、このたび組合員から木桶を生産者に寄贈しました。

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タイヘイ株式会社(千葉県匝瑳市)にて醤油の生産者と桶職人、生活クラブの組合員など

醤油のおいしさを後世に伝える「木桶」

生活クラブと醤油の提携生産者・タイヘイ株式会社は、2025年に提携50年を迎えました。これまで生産者と組合員は意見を交わしあいながら丸大豆醤油をつくりあげてきました。提携を開始した1974年当時、原料の大豆に脱脂加工大豆*を使用していましたが、組合員の声から1996年に米国産の丸大豆に変更。遺伝子組み換え大豆の栽培が増えて入手困難になったため2009年からはJAS有機認証の中国産の丸大豆と希少な国産丸大豆のブレンドに切り替えました。丸大豆醤油をベースに、味付けがこれ1本で決まる「白だし」や「万能つゆ」の開発など組合員の暮らしに寄り添い進化を続けてきました。

50年の節目に自然垂れ製法の丸大豆醤油と減塩醤油をセットにした「提携50周年記念丸大豆醤油セット」を取り組み、価格の一部を活用して、醤油づくりに欠かせない木桶を生産者に寄贈することにしました。2026年1月、組合員が木桶をつくる静岡県藤枝市の青島桶店を訪問。寄贈する木桶がどのようにつくられるのか見学した様子をレポートします。

*脱脂加工大豆:ノルマルヘキサンなどの有機溶剤を使って大豆の油分を抽出し、たんぱく質などの成分を調整した大豆

「伝統製法の醬油」継続を願い、生協組合員が生産者に巨大木桶を贈る


生活クラブで取り扱う「丸大豆醤油」(写真左)、提携50周年を記念した自然垂れ製法の丸大豆醤油と減塩醤油のセット

いざ、木桶づくり

寄贈する木桶は、3メートル×3メートル、50石(約9,000リットル)もある大桶です。木桶には、液漏れしにくく長く使用できる良質な杉が必要なため、奈良県の吉野杉の年輪の幅が狭くて密度が高いものを厳選します。しかし、近年では林業の衰退で入手困難になってきました。
青島桶店では、調達した杉を製材屋で丸太の状態から板状に切り出し、水分を飛ばすために半年から約1年かけて乾燥させます。乾燥させた杉は側板にするために、“かんな” をかけてキレイに整え、4枚1組の束にして、さらにかんながけしていきます。職人の絶妙な力加減で、真っすぐの板をアールのついた美しい曲線に削ります。一つの木桶をつくるのに約1,000回もかんながけをし、桶の形に仕上げます。

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(左)職人が木桶を組む様子

(右)組合員がかんながけにチャレンジ

竹たがでつなぐ、木桶の輪

もうひとつ、木桶づくりに欠かせないのが “竹たが(箍)” です。竹たがとは、木桶を締める重要な部品。竹たがの原料には京都府産のマダケ(真竹)を使いますが、現在、日本におけるマダケの生産量は減少しています。原因は外来種の大型の竹・モウソウチク(孟宗竹)の繁殖が拡大していることに加え、気候危機の影響があるといいます。温かい気候が続くことで、マダケの中に虫が侵入し、内側から竹を食い荒らす被害が増えています。青島桶店では防虫対策のため、夏場を避けて冬にマダケを伐採し、約2週間塩水に漬けて乾燥させたのちに加工しています。

以前は竹たがを編む “たが職人” がいましたが、今では桶職人が兼任しています。良質な竹の入手もまた困難になっています。納品後のメンテナンスを考慮し、今回寄贈する木桶は竹たがと鉄(ステンレス製)のたがを組み合わせて製作します。
150年先まで使う木桶だからこそ、鉄のたがも取り入れ、木桶の強度や使い手の利便性を高めました。

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(左)竹たがは約20メートルの長さの竹を2本使い、足で押さえながら輪をつくっていきます。竹と竹が双方に引っ張る力をいかして固く締まります。

(右)完成した輪状の竹たがを木桶にはめ込む様子。竹たが1本の重さは約30キロ!

全国でも数人の希少な木桶職人

「木桶」といえば、古くから寿司桶やお櫃(おひつ)、水を入れる手桶、風呂桶など、日常生活に欠かせない存在でした。しかし、高度経済成長でプラスチック製品などが普及するようになり、木桶の利用が減ったことで桶屋の廃業が加速。1925年創業の青島桶店は今なお、あらゆる桶製作に応えつづけている希少な桶屋です。醤油を仕込む大桶をつくりはじめたのは、3代目の青島和人(かずと)さんの代から。現在は、和人さんと、甥っ子の4代目・正知(まさかず)さんの2人体制で製作しています。

和人さん

「私が生まれた頃には家の中に作業場があり、桶は生活の一部でした。当時の工場を支えた職人の高齢化や父親の病気が重なり、家業を継ぎました。当初は “数を売ること” を重視していたこともありましたが、桶職人として研鑽を積んでいくにつれ、『本当に桶を必要としてくれる人だけにつくろう』と想いが変わってきました。継いだ頃と変わらないのは、日本中に桶屋がひしめきあっていた時代から数えてもベスト5に入るような桶屋でいたいという気持ち。
博物館に並んでいるような木桶にも負けないものにしようと日々つくっています」

正知さん

「小さい頃から木桶の作業場に遊びに行き、端材でいろんなものをつくっていた影響もあり、自然とものづくりへの興味がわいてきたんです。大学卒業後、両親や親方(和人さん)の反対を押し切って桶職人の道を歩むことにしました。いまは桶職人として親方に認められたいという気持ちが、職人としてのモチベーションを高めてくれています」

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青島桶店代表取締役社長 青島和人さん(写真左)、青島正知さん

150年先まで届け!底板に刻むメッセージ

木桶づくりの職人技を目の当たりにし、丸大豆醤油の魅力をあらためて感じた組合員。「この木桶で醤油を仕込むと思うと、とても愛しい想いでいっぱいです。私たちは木桶仕込みの醤油を食べ続けて未来につないでいきたいです」という声も。底板には、木桶やこれから仕込まれる醤油に対する一人ひとりの想いを筆でしたためました。このメッセージが次に見られるのは、木桶を解体する150年後かもしれません…。これから長い年月が醤油とともに醸されていきます。

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(左)底板の側面にメッセージを書く組合員

(右)底板を囲んで醤油の生産者と桶職人、生活クラブの組合員など

生産者と組合員をつなぐ架け橋に

完成した木桶は、千葉県匝瑳市のタイヘイ株式会社本社に運ばれました。2026年3月16日の寄贈式では、この木桶でこれからもおいしい醤油がつくれるように「生産者と組合員の関係性をより深めていきたい」と登壇者からのメッセージがありました。

タイヘイ株式会社取締役 三浦浩さん

「組合員のみなさんに支えられ、今日まで続けることができました。この木桶同様に100年、150年と生活クラブとともに価値ある消費材*をつくり、次世代につなげていきたいです。寄贈いただいた木桶は大切に使用します」

*消費材:生活クラブでは、取り扱う食品や生活用品を利潤追求が目的の「商品」ではなく、組合員の声を形にした消費するためのものという思いを込めて「消費材」と呼んでいます。

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(左)寄贈した木桶

(右)タイヘイ株式会社取締役 三浦浩さん

生活クラブ組合員 生活クラブ連合消費委員会委員長 籠嶋雅代さん

「生活クラブに加入して30年、ずっと丸大豆醤油を愛用しています。
新たな木桶は、生活クラブとタイヘイをつなぐ架け橋となる存在です。どうか、これからもおいしい丸大豆醤油をつくり続けてください。私たちもしっかり食べる仲間づくりをしていきたいと思います」

青島桶店 代表取締役社長 青島和人さん

「桶職人はタイヘイのような醤油をはじめ、醸造する方の依頼を受けて初めて成り立つ仕事です。木桶仕込みの醤油のおいしさをもっと知ってもらうためには、生活クラブのような『食べ続けつくり続ける』関係性が必要不可欠です。今後も木桶で仕込んだ醤油が日本中に広まることを願っています」

「伝統製法の醬油」継続を願い、生協組合員が生産者に巨大木桶を贈る


(左)生活クラブ組合員 生活クラブ連合消費委員会委員長 籠嶋雅代さん

(右)青島桶店代表取締役社長 青島和人さん

木桶仕込みの醤油を未来へ

タイヘイ株式会社の蔵には110本以上の木桶が並びます。組合員が食べ続けて、生産者がつくり続けていくことは希少な木桶仕込みの醤油の文化や味を継承していくことにもつながっています。

丸大豆醤油は、丸大豆と小麦、食塩というシンプルな原材料からつくられています。一方で、原料の大豆や小麦の食料自給率は低く、安定した原料確保が今後の大きな課題です。そうしたなかでようやく原料の確保と生産体制が整い、国産原料100%の丸大豆醤油の仕込みがはじまりました。生活クラブ組合員への供給は、2026年秋頃からを予定しています。

生産者と組合員が意見を交わしつくり上げた唯一無二の醤油が、150年先もずっと食べ続けられるように…。これからも生活クラブは生産者と組合員、そして桶職人とともに手をたずさえて木桶仕込みの丸大豆醤油をつくり続けます。


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