
[J2第8節ブラウブリッツ秋田0-1ベガルタ仙台、4月5日、宮城・キューアンドエースタジアムみやぎ]
秋田は0-1で仙台に惜敗し、今季2度目の2連勝を逃した。前半10分に失点を許し、今季リーグ戦7ゴールで得点ランキング首位を走る秋田FW小松蓮を筆頭に計シュート7本(仙台3本)の猛攻を仕掛けるも、最後まで相手の堅守を破れなかった。
激しいマークに得点源が不発に
通算リーグ戦対戦成績1勝3分3敗の難敵相手に試合開始早々から苦しめられた。前半10分に先制されてからは秋田が反撃に打って出るも、得点源である小松は激しいマークにより前半はシュートゼロ本に抑え込まれた。
「相手が1点多く取っていたので、守備の意識がすごく高かった。帰陣のスピードは相手の方が僕らの攻撃に出るスピードより圧倒的に速かったので、僕ら前線はきょう何もできなかったという試合でした」と落胆していた。
試合に敗れて落胆する秋田イレブン仙台は先制後にゴール前を固く閉ざす守備を披露し、秋田に付け入る隙を与えなかった。ペナルティエリア中央は仙台の守備陣が構えており、中盤も小松を筆頭に秋田のアタッカー陣へ泥臭くプレッシャーをかけて自由にボールを触らせる時間を与えなかった。
東北のライバルは試合巧者といえる試合展開でゲームを支配し、着実に時計の針を進めた。
「あれだけペナルティエリア内に人数が多くなると(自分が)入っていくスペースや、相手の死角の部分が少なくなってしまう。外から単純にクロスを放り込んだとしても、きょうに関してはファーに逃げても(仙台GK)林(彰洋)選手が出てくるので、そういうところはすごく対策されている」と、相手守護神と守備陣の好連係にストライカーは手を焼いた。

昨季はJ1昇格プレーオフ圏内6位に入り、東北では最も長くJ1に居続けた名門は手強かった。「チームが強くなればなるほど、相手の隙がなくなってくる」(小松)と、秋田に決定機を与えなかった。今季7ゴールで得点ランキングトップを走る小松は張り付くようなマークによりシュート1本に抑え込まれてしまったが、チームの攻撃をけん引するストライカーはこの敗戦を糧にさらなる成長を目指す。
「(得点を)取れるときはチャンスがあると思う。
泣きそうになった半年間を乗り越えた先に
小松は泣きそうになった半年間を過ごしたという。秋田が先月11日にオフィシャルYouTubeチャンネル上にアップロードしたドキュメンタリー動画で昨季入団当初から夏まで苦しい半年間を過ごしたと明かした。
秋田の背番号10は「僕自身はゴールを取ることが生きがいなので、取れないことが一番つらかったですね。 試合に出ていても点を取るイメージが湧かないというか、そういう時期があったので、なかなかきつかったです」と打ち明けるように、昨季前半戦は公式戦2得点(リーグ戦1得点、Jリーグ杯1得点)と苦しんだ。
2019年にU-22日本代表に選出された大型レフティーは、2023年シーズンJ3松本山雅FCでリーグ戦36試合19得点で自身初のJ3得点王に輝いた。その実績を引き下げてのステップアップ移籍を果たした秋田では、期待通りの活躍をなかなか見せられなかった。

思い出したくもない苦しい期間に思えるが、ストライカーはその期間がいまの自分を作ったと胸を張る。
「僕にとっては重要な半年間でした。もちろんその半年もうまくやれたら理想でしたけど、簡単にはいかなかった現実でした。 ただそこでまったく下を向かなかったし、向きかけたときもありましたけど、『より成長しよう』というモチベーションが高かったので、1個(壁を)乗り越えられたかなと思います」
時間の経過とともに自身のコンディションが向上し、味方との連係も徐々に噛み合っていった。
目標はリーグ戦40得点を掲げる小松は現状に満足していない。
「あまり得点王になろうと考えてはいませんけど、1試合に1点を取って、年間40ゴールを取れるストライカーになることを目標に掲げています。40ゴールを取って、それ以上のストライカーがいればしょうがないなと思いますけど、40ゴールくらい取ったら必然的に(得点王に)なっているのかなと感じています」と、ストライカーは自分自身の可能性を信じている。

次節は13日午後2時にホーム・ソユーススタジアムでRB大宮アルディージャと対戦する。
「きょうは結果論ですけど、1点(先に)取れていたら僕らのゲームになるんじゃないかなと思いました。ただ結果的には負けてしまったので、僕らのやり方を変えずに、自分を見つめ直して点を取れるように前を向いて頑張ります」と背番号10は言葉に力を込めた。
松本でたくましく育ち、秋田で花開いたいま売り出し中の点取り屋に慢心の文字はない。壁を乗り越えた男は自分自身の可能性を信じ、目標に掲げるリーグ戦40得点を目指して着実に結果を積み重ねていく。
(取材・文 高橋アオ)