
[J2第28節ジェフユナイテッド千葉4-2ベガルタ仙台、25日フクダ電子アリーナ]
J2千葉はJ2仙台に4-2で逆転勝利。リーグ戦6試合ぶりの勝利にフクアリは喜びとあんどに包まれた。
千葉は4日前に行われた同杯から先発7名を継続。J1相手に勝利した勢いのまま挑んだ。しかし狙いとは裏腹に、千葉は前半25分にMF椿直起が負傷交代を余儀なくされると、直後の28分に仙台FWエロンのゴールで先制点を奪われる。出鼻をくじかれる展開がサポーターを不安にさせる中、ピッチ上の選手たちは冷静だった。
天皇杯に引き続きキャプテマークを巻いたDF佐々木翔悟は「点を取られたとき、全体的にまだまだ時間はあるし、『大丈夫でしょ』と話をしていた。そのメンタルが良かったと思います」と振り返る。選手たちは失点直後に集まり、互いに声を掛け合っていた。ここ最近の千葉からは見ることのできていなかった光景が、選手たちの強い気持ちを表していた。
その気持ちが形になったのは前半終了間際45+7分のこと。椿と代わって出場したMF岡庭愁人がコーナーキックからのボールを頭で折り返すと、MFエドゥアルドが角度のないところから右足を振り抜き同点。

両者一歩も譲らないまま前半は終了。白熱した試合展開にスタジアムのボルテージも上昇する中、悶々とした表情を浮かべていたのはFW小森飛絢だ。昨季13ゴール奪い、今季から千葉のエースとして10番を背負うストライカーは不調の真っただ中にいた。
ここまで今季10ゴールの小森はJ2第20節徳島ヴォルティス戦(1-0)から実に7試合得点から遠ざかっていた。千葉の小林慶行監督は天皇杯でも先発出場だったがノーゴールという結果に終わったエースについて、「彼が得点を重ねていたころに比べれば、そもそもチームとしてチャンスをつくっている回数が減ってしまっている。彼だけの問題ではない」とフォローしたうえで、「しかしストライカーというのは、やはりゴールから離れると若干メンタル的な影響もありますし、それは少なからずあると思います」と語っていた。
そのうえで信頼して起用した指揮官の期待に応えたい小森だったが、後半も千葉は厳しい状況を強いられる。
『眠れる獅子を起こしてしまった』
後半9分にコーナーキックを与えてしまうと、今度は仙台のDF菅田真啓がヘディングシュート。GK鈴木椋大が一度はセーブするも、跳ね返ったボールをFW中島元彦がオーバーヘッドぎみに右足で突き刺し再びリードされてしまう。なんとしてでも勝利が欲しい千葉にとって痛恨の極みだった。
千葉は後半20分に佐々木のヘディングシュートで同点に追いつくも、あと1点が遠い。
ゲームが動いたのは後半31分のことだった。途中交代で入ったMF田口泰士から左サイドバックのDF日高大にボールが渡ると、フリーの日高は落ち着いてクロスを上げる。そのボールに頭で合わせたのは不調のエース・小森飛絢だった。
「大くんからいいボールがきたので、自分が空けていたスペースにしっかりと走りこんで頭で合わせることができたので良かったです」と語るゴールシーンは、磨き続けたオフザボールの賜物。喜びを爆発させる小森を仲間たちも祝福する。「決定力不足」の重圧を背負っていたエースストライカーが魅せた8試合ぶりの『ジェフ三唱』は、フクアリが自信を取り戻した瞬間であり、チームを勝利に導く一撃だった。

「最高です。悶々とした気持ちはめちゃくちゃありましたし、早くゴールしてチームを勝たせたいという想いがあった。ようやく自分のゴールで勝たせられたんじゃないかと思っています」と小森は腫れ物が取れたような表情だ。
エースのゴールによって一気に勢いづいたフクアリ。後半40分には岡庭がタッチライン際でボールを残すと、佐々木からのパスにまたしても小森が反応。

試合後、仙台の森山佳郎監督は「点を1番与えてはいけない選手に与えてしまった」とコメント。そのうえで「千葉さんは、ここ数試合悩んでいる風でしたが、きょうのゲームは『眠れる獅子を起こしてしまった』というゲームだった。千葉さんの良さが全開のゲームでした」と相手チームに賛辞を贈った。 仙台戦をもって今季得点数を12に伸ばしたエースは、得点ランキングでも3位に浮上。
「複数得点は自信につながりましたし、これからもっとゴールを量産して、得点王とJ1昇格を叶えられるようにまた頑張っていきたいですね」と15ゴールで1位の谷村海那(いわきFC)を追いかける。
勝利した千葉は8位で勝点を40とし、J1昇格プレーオフ圏内へ望みをつないだ。次戦はレゾナックドーム大分で行われるJ2第29節大分トリニータ戦となる千葉。復活のエースと共に、公式戦3連勝を飾りたい。