独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは17日、中国広東省深センの街中にフードデリバリーに従事する子どもらが現れ、議論を呼んでいると報じた。

記事によると、こうした光景が見られるのは同市福田区にある巨大電気街の華強北だ。

子どもらはビルの間を駆け回り、配達員に代わって「届け先までの最後の100メートル」を担っている。

子どもらは10歳前後で首に2次元コードをぶら下げており、電動バイクに乗った配達員がバイクを完全に停める前から駆け寄って来て「代わりに配達するよ。自分を選んで」と声を上げる。配達員はその中から1人を選んで届け先の住所を伝え、2次元コードを使って1、2元(1元は約20円)の「お使い代」を支払う。配達員から商品を受け取った子どもは配達先めがけて駆けて行き、配達を終えると再び次の配達員がやって来るのを待つのだという。

中国ではこの件を複数のメディアが取り上げており、極目新聞は現地取材を通して街の構造や地形が背景にあるとの見方を示した。

華強北一帯は地形が複雑で、オフィスビルが密集している。内部が「迷宮」のようなビルもあり、配達員が届け先までの「最後の区間」で時間を費やすことは多い。道に迷って配達時間をオーバーすればペナルティーにつながり、土地勘のある近隣の子どもらはその「最後の区間」を引き受けて商品を客のもとに届けているのだという。

また、深セン晩報は、フードデリバリーに従事する子どもらは単独で行動する子の他に、チームを組んで役割分担をしている子もいると報じている。

中国ではこうした現象がすぐに議論を呼び、あるネットユーザーは「子どもらは夏休みを利用して『仕事』で人と関わる力を鍛え、お小遣いを稼ぐと同時にお金を稼ぐことの難しさを理解する」と肯定的な意見を示した。この一方で、「大勢の子どもが交差点に集まり、現れた配達員に駆け寄って注文を奪い合うこと自体、交通事故につながる危険性がある」という声や、「届け先の注文者に悪意があったら…」と子どもの安全確保を懸念する声も上がっている。

他にも「これは児童労働に当たるのではないか」という疑問の声があり、商品の提供元である店側や子どもから実際に商品を受け取った客からはトラブルが起きた時の責任の不透明感を不安視する声も聞かれた。

また、中国メディアは夏休みの子どもの居場所問題に注目し、「さまざまな文化的な場所を設けて子どもに社会経験の機会をより多く提供すべき」と呼び掛けている。

地元の行政機関はこの件が報道された後、子どもの代理配達禁止に関する通知を出し、子どもが充実した夏休みを送ることを目的としたイベントや趣味のクラスが提供されていることも紹介したという。(翻訳・編集/野谷)

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