香港メディアの香港01はこのほど、中国に進出した日系企業は、中国というビジネス展開の場には好感する部分もあるが、楽観できない部分もあるとして、中国に対して「愛憎が入り交ざる」状態と紹介する記事を発表した。
在中日系企業の団体である中国日本商会の本間哲朗会長は、同会が行った「第7回会員企業 景況・事業環境認識アンケート」の結果発表会で、「2025年1月から6月の期間において、前回と比べて会員企業の経営状況および中国国内の経済情勢が悪化傾向を示した」と述べた。
同アンケートの結果については、次のような見方が出ている。
第一に、中国に進出している日系企業は、今年の中国経済が期待に届かないと広く認識している。アンケートによれば、25年の中国経済の見通しが昨年と比べて「改善」または「やや改善」と回答した企業は14%で、半年前の調査と比べて1ポイント減少した。また、所在地における景況が「悪化」または「やや悪化」と予測した企業は48%に達し、半年前の調査より4ポイント増加した。「悪化」と考える企業の割合は「改善」と考える企業の割合を大きく上回った。
第二に、中国に進出している日系企業の約半数が今年の利益が減少すると予測した。会員企業の多くは、25年上半期において、経営状況は前回と比べて全般的に「悪化」したと回答した。また、約半数が下半期の利益も引き続き減少すると予測した。中国に進出している日系企業の中で前回調査比9ポイント増の47%が、今年の中国での営業利益が「減少」または「やや減少」するとの予測を示した。
第三に、日系企業の過半数が中国への投資を「増加または維持」すると回答したが、その主な理由は中国の刺激政策だった。
投資「増加」を選択した企業が挙げた主な理由は、「中長期的な成長を見据え、既存事業と相乗効果のある分野への投資を検討」「スタートアップ企業への投資を行う予定」などで、「中国が今後も刺激策を拡充すると信じる」が主要な動機だった。中国への投資を「減少」させると回答した企業の主な理由は「中国経済の将来の見通しに対する不確実性」「価格競争の激化」だった。
第四に、中国の投資環境に対する満足度は高いが、価格競争の過熱に対する懸念は強いことが分かった。また、「事業環境への満足度」および「中国企業と同等の待遇を受けているかどうか」の指標は依然として高い割合を維持していた。「中国企業と同等に扱われていない」と分野としては、「政府の財政支援・補助金」が引き続き最上位だった。事業運営上の課題としては、「販売価格の下落による影響」が最も多く、「人件費の上昇」がそれに続き、「国際情勢の影響」については前回調査との変化が見られなかった。
本間会長は結果発表会で、「商会としては、中国政府に対して、日本企業を含む海外企業に対して、国内外の差別なき競争環境や過度な競争の問題を改善するよう引き続き求めていく」と述べた。
第五に、中国に進出している日本企業は、従業員およびその家族の安全問題に対して高い関心を示した。中国に対してビジネス環境の改善を求める中で、安全確保に対する要求が高まりつつあることが分かった。
中国日本商会によるアンケート調査以外でも、日本企業の中国での業務に対する消極的な傾向はすでに長期化している。
日本貿易振興機構(JETRO)の調べによれば、21年から23年にかけて、中国に進出している日本企業のうち、当該年度に利益を見込む企業の割合は72.2%から60%強へと段階的に低下した。また、業務拡大の姿勢を持つ企業の割合も23年には初めて30%を下回った。これに対して、業務縮小あるいは中国市場からの撤退を検討する企業の割合は明らかに増加しており、いずれも4ポイント以上の上昇が見られた。
24年の調べでは、中国本土に進出している日本企業のうち、業務拡大の姿勢を持つ企業の割合は前回より6ポイント減少し、香港に進出している企業では7.8%ポイント減少した。日本企業のグローバルな産業チェーンの構造調整に伴い、日系企業の中国での生産品の主要な供給先は中国国内市場に集中するようになっており、中国経済の低迷と製造業、金融業、小売業などでの中国企業との競争が、日本企業の姿勢が徐々に消極的になっている主な要因だ。
また、日本企業が中国での業務を維持する主な要因は短期化する傾向にある。中国の改革開放以降の歩みを振り返ると、日本企業が中国市場に進出して業務を維持・拡大する主たる要因は、常に中国市場の長期的な展望への期待と信頼だった。サブプライム危機が発生し、中国経済の動向に不確実性が急増した時期においても、実質的な逆転は見られなかった。しかし、中国日本商会の今回のアンケート結果によれば、日系企業が中国での事業を継続する主たる理由は、政府の刺激政策といった短期的な要因に集中している。一方で、中国政府による一連の補助政策の実際の効果は、政策刺激が長期的なマクロ環境の改善をもたらすことができないことをすでに示している。従って、日本企業が中国での業務を維持することを後押しする要因は、徐々に弱まる可能性がある。
さらに、日本企業が多元的な海外移転を求める傾向は、もはや変えることができない可能性がある。JETROの24年通年の調査結果によれば、中国での業務拡張を計画している日本企業の割合は、インドでの業務拡張を計画している日本企業の半数にも満たなかった。注目すべき点は、米国の圧力および日本政府とインド政府の積極的な接近政策により、日本企業がインドへ移転する動きが今後も増加する可能性があることだ。
ただし中国の対外開放政策は中国共産党と政府の既定方針だ。中国政府商務部によれば、25年1-7月に、外資による対中直接投資は13.4%減少したが、日本企業による投資は逆に53.7%増加した。この傾向は中国にとって非常に貴重だ。中国がグローバルな分業と資本の流動において関与度を維持するための重要な支えとして、日本企業をいかにして真に引きとどめるかは、中国にとって深く探究すべき課題だ。
総じて言えるのは、日本企業の中国での経営および業務についての基本的な姿勢は「喜憂が混在」および「愛憎が入り交ざる」状態だということだ。(翻訳・編集/如月隼人)