2025年11月13日、独国際放送局ドイチェ・ヴェレの中国語版サイトは、中国の産業政策にはメリットと弊害が共存するとするドイツ紙の評論記事を紹介した。

記事が紹介したのはドイツ紙ハンデルスブラットが掲載した独コメルツ銀行のチーフエコノミスト、ヨルク・クレーマー氏による評論記事。

評論は中国の産業政策が「表向きには成功」している一方で、国際的な摩擦を生むなどの重大な欠点を抱えていることを指摘している。

まず、中国の産業政策の「表向きの成功」にスポットを当て、電気自動車(EV)やバッテリー、太陽光発電モジュールなどの分野で高い世界市場シェアを確保しているほか、人工知能(AI)やロボット、量子コンピューターなどの最先端技術でも世界レベルに急速に接近していると紹介。中国経済の力強さを印象付けるだけでなく、中国人の自尊心が高まることによって中国共産党の統治基盤強化にもつながっていると評した。

その上で、成功の裏に隠れる「大きな代償」について言及。中国は技術の獲得や軍事、政治面で優位性を築くという目的のもと、政府が積極的に打ち出した補助金などの産業政策によって多くの資金と人材が特定産業に集中し、深刻な過剰生産能力を招いたと指摘した。

また、具体的なデータとして、この7年間で中国政府が重点的に支援した新興産業がGDPに占める割合はわずかだったにもかかわらず、投資額は中国全体の約半分を占めたと伝え、資本と労働力が非効率に利用されて生産性が低下するだけでなく「残酷」な価格競争までをも引き起こしており、最終的には国民全体の富を損なうに至っていると論じた。

さらに、政府の補助金を受けた中国企業が廉価な商品を大量に輸出することで、欧米諸国・地域が中国製品に懲罰的関税を課すなど、中国の産業政策が頻繁な貿易紛争も引き起こしていると指摘した。

クレーマー氏は最後に、ドイツが中国の産業政策から学ぶべき点と避けるべき点について言及。学ぶべき点として、企業の支援に加えて「企業活動のための良好な環境整備」を進め、インフラ建設や低廉なエネルギー供給、教育水準の向上、原材料調達ルートの確保に力を入れること、AIなど新興産業の急速な発展を妨げない規制の調整や承認プロセスの迅速化などを図ることを挙げた。

一方で、避けるべき点については「中国のように特定の少数の未来産業を意図的に優遇するのではなく、すべての企業に対して公平で良好な事業環境を創造すべき」と結論づけている。(編集・翻訳/川尻)

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