独メディアのドイチェ・ヴェレ(中国語版)は15日、中国で消費主義が民族主義を打ち負かしているとの記事を掲載した。

記事は、「中国は国民の民族主義的な感情をあおることに長けており、過去には日本や米国との摩擦が大規模なデモや不買運動に発展したこともある」とする一方、「現在では、純粋な民族主義は中国の消費者の間で共感を呼び起こしにくくなっているようだ」と指摘。

マーケティング会社WPIC Marketing+Technologiesの最高経営責任者であるジェイコブ・クック氏の「中国の消費者、特に都市部の中間層や若い世代は、日常的な購買活動を民族主義に基づいて行っているわけではない」との見方を伝えた。

また、高市早苗首相のいわゆる「台湾有事」発言に強く反発する中国政府が日本への渡航自粛を国民に呼び掛けているとしつつ、「政府の警告にもかかわらず多くの中国人が今なお個人旅行で日本を訪れている」と説明。さらに「昨年12月、日本の回転寿司チェーンのスシローが上海のショッピングモールに新店舗をオープンした際には客が殺到し、長い行列ができた。同社は2021年に中国(広州)に初出店して以来、大きな成功を収めている」とも指摘した。

北京のショッピングモール内のスシローで食事をしていた23歳の大学生・蕭(シアオ)さんは「入店までに30分以上並んだ。味がとても良く、食材の品質も保証されている」と話した。日本の「ちいかわ」のファンでもあるという蕭さんは「(緊張している)日中関係は自分の日本文化への愛着や日本の飲食店での消費行動にはほとんど影響しない」とし、「あくまで政府指導者の発言であって、国民の態度が変わったことを意味するわけではない」と語ったという。

反日でもスシローは大盛況、「消費主義」が「民族主義」に勝る中国―独メディア
上海のスシロー

同じ現象は米中関係においても見られるという。記事は、米中両国は関税や台湾問題などで緊張関係が続いているが、中国の消費者は米国製品をボイコットしているわけではないとし、例としてディズニーのアニメ映画「ズートピア2」が中国で興行収入44億元(約975億円)を超え、中国で公開された米国の映画として史上最高のヒットを記録したことを挙げ、「中国政府は国産映画に補助金を投入して強化に取り組んでいるが、それでも中国の観客は依然として外国映画を好んでいる」と評した。

北京で同作を鑑賞した阮(ルアン)さんは「気軽に楽しめるし、とても面白かった」と語った。中国市場研究集団・総経理のシュアン・レイン氏は「中国の多くの消費者が新型コロナの影響や景気低迷に疲弊し、不安を感じている。彼らはハリウッド映画、とりわけ『ズートピア』のようなアニメ作品を見る。

それは単にリラックスしたいからだ」と述べた。

このほか、米ファッションブランドのラルフ・ローレンも、中国の都市部中間層の支持を獲得している。中国での売上成長率は、欧州や北米を上回っているといい、クック氏は「米国のブランドが中国で成功している理由は、消費者のニーズを的確に満たしているから、あるいは中国の消費者が共感するライフスタイルを示しているからだ」と分析した。

中国では「国潮」と呼ばれる愛国主義的(自国ブランドを積極的に購入する)消費ブームが巻き起こっているが、レイン氏は「中国人はもはや中国ブランドだからという理由だけで購入することはなくなった。消費者は自身の価値観やライフスタイルに合うブランドであれば、中国ブランドであれ、外国ブランドであれ、購入する」との見方を示した。

記事は、「10年前と比べて民族主義的感情が(中国人の)消費行動に与える影響は弱まっている」と指摘。12年の尖閣諸島をめぐる問題で大規模な反日デモが行われ日本車や日本料理店が破壊されたこと、21年には新疆ウイグル自治区産の綿をめぐってナイキなどのブランドの不買運動が起こったことを挙げつつ、「しかし最近では靖国神社で開催予定だったポケモンカードゲームのイベントをめぐる論争などが中国のSNS上で怒りのコメントを呼んだものの、より広範な影響には至らなかった」と論じた。

中国の独立系消費アナリストである蒋亜玲(ジアン・ヤ―リン)氏は、「中国のすべての消費者が政府の指示に従い外国製品を排除するというのは誤解を招く。地政学は地方レベルのビジネスの消費動向を決定付けるものではない」と指摘しているという。(翻訳・編集/北田)

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