米プロバスケットボール(NBA)ヒューストン・ロケッツのゼネラルマネジャー(GM)、ダリル・モリー(Daryl Morey)が香港の街で抗議の声を上げている多くの人々を支持するツイートを4日夜にTwitterに投稿したものの、後に削除した。

香港でのデモ活動は、犯罪容疑者の中国本土への引き渡しを可能とする条例改正案に反対の声が上がったことからはじまった。
改正案に反対する人々は、中国政府に対する香港からの批判が封じ込められるだけでなく、限定的ながら半自治を保ってきた香港の独立性が侵害されると主張している。9月に改正案は撤回されたが、デモ隊はさらに、警察当局による暴力行為に対する独自の調査やキャリー・ラム香港行政長官の辞任を求めて抗議活動を続けている。

中国のような共産党政権に関わる際には、恐怖感が生じるのも納得できる。以前からNBAは、リーグに所属する選手たちの政治的立場について自由な発想で最も積極的に発言してきた団体として知られている。

しかしモリーGMにとって問題なのは、中国でもまたバスケットボール人気が高いということだ。最近の調査によると、中国でヒューストン・ロケッツは、ゴールデンステイト・ウォリアーズに次いで2番目に人気のチームとなっている。これは間違いなく、元ヒューストン・ロケッツのスター選手で現在は中国バスケットボール協会(CBA)の会長を務めるヤオ・ミンのおかげだろう。NBAにとって中国はあまりにも大きな上得意客であるが故に、中国の人権問題に対して意見するのは難しいのかもしれない。

ヤオ・ミン自身は、モリーGMのツイートに対して批判的な立場を取っている。彼は「香港に関する不適当なコメント」だと非難し、CBAはロケッツとの「交流と協力関係」を一時停止した。中国のスポーツウェアメーカー、リーニン(Li-Ning)も同様の対応を取り、チームとの提携を一時中断している。中国政府もまた領事館を通じ、GMのツイートに「大きな衝撃を受けた」とコメントした。
ロケッツのオーナーであるティルマン・ファティータは即座に、モリーGMのツイートはチームを代表する意見ではないと否定している。

ティルマン・ファティータのツイート「皆さん、ダリル・モリーの発言はヒューストン・ロケッツとしての意見ではありません。私たちは政治団体ではありません。現在私たちが東京に滞在しているのは、NBAを国際的に広める活動の一貫です」

ロケッツもNBAも良識的に、モリーや香港のデモ隊や彼らの人権を擁護しようと思えばできたはずだ。中国政府が「暴動」と呼ぶ数カ月に及ぶデモで、2000人以上が負傷する中、彼らはスニーカーやウェアを売り、試合を続けている。彼らは、共産主義国家からかき集めるお金を手放したくないと思うあまりに、いとも簡単に謝罪した。

NBAの中国依存に政界からも避難の声

NBAは、モリーによるツイートが中国のファンを「深く傷つけた」ことを認識し、同リーグは「中国の歴史と文化を大いに尊重している」として謝罪声明を出した。まるで、独裁政府に対して批判的なジャーナリストや批評家を抹殺することも可能な法案と関係があるような印象も受ける。スポーツ関連のウェブサイトThe Ringerに、GMとしての立場が危ういと報じられたモリーはその後、謝罪を表明したが、まるで上司から命じられて書かされたようにも取れる内容だった。ブルックリン・ネッツのオーナーで、中国Eコマース業界のコングロマリット、アリババの共同創業者でもあるジョー・ツァイは、Facebook上に公開書簡を投稿した。彼は投稿の中で、香港のデモを「分離主義運動」と表現している。ロケッツでガードを務めるスター選手のジェームズ・ハーデンも自分は関係ないにもかかわらず、なぜか「不徳の致すところ」などという謝罪のコメントを出している。


このように独裁政府に対して尻尾を振るような行為は、NBAが中国へどれほど依存しているかを示している。米大統領選への立候補を表明しているフリアン・カストロや、ベン・サス上院議員(共和党、ネブラスカ州)ら政治家らも左派・右派問わず、NBAの卑屈さを非難した。ロケッツ・ファンのテッド・グルーズ上院議員ですら、道義的な意見を述べている。

テッド・クルーズのツイート「長年のヒューストン・ロケッツ・ファンとして私は、ダリル・モリーGMが、中国共産党による香港のデモ隊制圧のやり方を批判したことに誇りを感じます。恥ずべきことにNBAは、目の前の大金のために尻込みしているのです。私たちはもっとしっかりとした考えを持てるはず。人権は売り買いできるものではないのです。NBAは中国共産党による弾圧を助長すべきではありません」

キング牧師の日を祝うTシャツをはじめさまざまな象徴的な意思表示の方法で社会正義をアピールしてきた米国にすら、機会ある毎に人権を抑圧している政権とのビジネスが適切だと考える団体が存在する。NBAは、中国北西部に位置する新疆ウイグル自治区にも出先機関を設置している。オンラインマガジンSlateが2018年に伝えたところによると、同地区ではチュルク語を話す約100万人の少数民族のイスラム教徒が、いわゆる強制収容所に入れられているという。同地区の首府ウルムチでNBAは、中国に3つあるナショナルトレーニングセンターのひとつを運営している。
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