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後編:八村塁が歩んだレイカーズでの成長の軌跡

ロサンゼルス・レイカーズに移籍した八村塁は、フィル・ハンディACとの日々の取り組みによって、成長を遂げていく。

夏にはレブロン・ジェームズとのワークアウトに励み、研鑽。

多くのことを学びながら、チーム内での存在感を増し、NBA7年目の2025-26シーズンは3ポイントシューターとしての存在価値を高めてきた。

このオフにはフリーエージェントとなり、その動向が注目される八村だが、自身の転機となったレイカーズへの強い気持ちは変わることはない。

前編〉〉〉八村塁がNBAプレーオフ史上成功率トップでも「3ポイントが好きではない」という理由

【自身の成長に影響を与えたレブロンとのワークアウト】

 2023年1月、ワシントン・ウィザーズから名門ロサンゼルス・レイカーズへシーズン中盤にトレード移籍した八村塁は、いきなり西カンファレンス決勝まで勝ち進んだプレーオフも経験した。フリーエージェントとなったオフには、レイカーズと3年間5100万ドル(当時の為替相場で約73億円)の再契約を交わした。

 その夏には、フィル・ハンディACの勧めで、八村はNBAのスーパースターであり、チームメイトのレブロン・ジェームズと一緒にトレーニングを行なった。

 ハンディACは、「レブロンとプレーすることは、塁にとって起こり得る最高のことのひとつだ。彼と一緒にプレーすることで、バスケットボールについての知識、競争心、ゲームへの理解、努力の仕方など、非常に多くのことを学べる。塁がこのチームに来て、レブロンから学べることをどれほど喜んでいるかは私にもわかる。レブロンと塁は同じようなポジションだし、自らのキャリアをより高いレベルに押し上げ続けていくために、レブロンから得られることはあまりにも多い」と語っていた。

 レブロン自身も「塁には大きな可能性がある。なり得る限りの、また彼が望むような偉大な選手になってほしい」と望んでおり、自らの旅先までもついてくる八村を快く受け入れた。

 ふたりのトレーニングは、今や毎年恒例のものとなっている。八村は、レブロンから学んだことについて、「練習に取り組む姿勢だ。

彼にとってはすべてがバスケットボールなんだ。そのために体のケアをしっかり行なったり、細かなことまで気を配っている。それにとても賢い。彼のことを人として尊敬している。すごく、すごくいい人だし、大好きだ。彼と一緒にいて、ドラフトされた時とか、昔の話とか、いろんな話を聞くのが好きなんだ」とレブロンについて話すと止まらない。

「彼は、もう一度勝ちたい(優勝したい)と思っている。それが、彼が今もプレーしている理由だ。だから僕も彼を助けていかなければならない」と力を込めた。

 八村が移籍した最初の2年間のレイカーズは、レブロンとアンソニー・デイビスのチームだった。ふたりのスーパースターとともにフロントコートでプレーすることは、決して簡単なことではない。そんななか、八村は相手選手をしっかりとボックスアウトし、デイビスらチームメイトにリバウンドを取らせる「献身的なプレー」でチームを支えた。

「ひとりがボックスアウトしていないと、チームでリバウンドが取れない」。自らの数字よりも、チームの攻撃のチャンスが増えることを優先した。

【レブロンから得た信頼の証】

八村塁が心掛けた「自分の役割を受け入れようと努力してきた」姿勢 レイカーズ在籍4年で成長を遂げた背景とは?
 昨年12月4日のラプターズ戦でのブザービーターは大きなハイライトに photo by Getty Images
 昨季からレイカーズのヘッドコーチとなったJJ ・レディックからは、得意のミドルショットを排除し、3ポイントを積極的に打っていくことを求められ、さらに練習に励んだ。今シーズンのトレーニングキャンプが始まる前に、オフシーズンに取り組んだことについて尋ねると、「キャッチ&シュートをもっと早めに打てるようにすること。クイックに打てる、もっと難しい状況でも打てるということを意識した。NBAというのは一瞬の判断が大事なリーグなので」と話した。

 そして、その成果を試合で発揮した。今季のレギュラーシーズンの3ポイント成功率はリーグ5位の44.3%。しかも、単にキャッチ&シュートの向上ぶりを見せただけではなかった。

 昨年12月のトロント・ラプターズ戦、第4クォーター同点の場面でレブロンが最後のショットを八村に託し、ブザービーターの3ポイントを決めるなど、八村は大事な場面でレイカーズの勝利につながるビッグショットを幾度となく決めてきた。ラプターズ戦に関しては、レブロンがそれまで8得点で、2007年1月6日から続いていた1297試合連続2ケタ得点のNBA記録が更新されるかどうかがかかっていた。自ら打って決めて2ケタ得点にするか、または外してもオーバータイムで2ケタ得点に持ち込むチャンスもあった。しかしレブロンは、自らの記録更新よりも、八村の一撃を信じてパスを出した。

 前編でも触れたように、八村は3ポイントについて「好きではない。今でも僕の得意なことだとは思っていない」と言うが、こういったチームメイトからの信頼が自らの責任感を強めてきた。そして、シュートを決めれば決めるほど自信につなげていった。一方で、そういった3ポイントを外した時は、その責任を真摯に受け止めた。

 今年1月22日のロサンゼルス・クリッパーズ戦。八村は9点を追う第4クォーター残り3分半、タイムアウト後の3ポイントと、5点を追う残り1分の3ポイントと、ともにミスした。どちらもレブロンからパスを受けたもので、「もし僕が決められると思っていなかったら、僕にパスしない。僕が決めなきゃいけないショットだった。僕がビッグショットを2本とも外した。あれらのミスで敗戦が決まったと思っている。自分の責任として受け止めている」と厳しい表情を見せた。

 今季の初め、八村は「自信は経験から来る」と話していた。

うまくいった経験、うまくいかなかった経験、それらの積み重ねが八村を成長させた。

【自身の役割を受け入れることで成長】

 リーグを代表する長身万能型選手のルカ・ドンチッチとオースティン・リーブスという超攻撃型のガードにレブロンの3人が軸となるレイカーズで、コンスタントにパスをもらうことは難しい。なかなかパスが回ってこない試合も珍しくない。しかし、その状況は、ドンチッチがトレードで加入する以前、デイビスがいた時と大きく変わるわけではない。

 八村は言う。

「自分の役割を受け入れようと努力してきた。僕はボールハンドラーではないから、3ポイントで貢献できるように練習した。そして余計なことをせずにシュートを沈めて、その瞬間を楽しむんだ」

「時にはボールが回ってこないこともあるけれど、常に準備しておくことだ。メンタル面でもそういう瞬間に備えておかなければならない。たとえボールがずっと来なくても、耐えてその瞬間のために準備する」

 ボールが来たその時に全集中力を注ぐ。八村のその心構えは、ドンチッチを故障で欠き、リーブスがプレーオフの西カンファレンス1回戦の第4戦まで欠場したレイカーズの、大きなあと押しとなった。それでいて、八村は、自らの3ポイント力を評価されるたびに、レブロン、ドンチッチ、そしてリーブスがディフェンダーを引きつけてくれることを理由に挙げ、感謝した。

 シーズンが深まるにつれて、闘志あふれるディフェンスも目立つようになったが、それもロールプレーヤーとしての自らの役割と研鑽を積んだ証だ。

 レディックHCは、「塁は(シューティングのほかに)フィニッシュ、意思決定、決断力、クローズアウト、すべての分野で進歩した。守備面でも、私たちの戦術を理解するという点で、彼にとってさらなる1年の成長があった」と、ロールプレーヤーに徹しながら、細かな面まで成長した7年目を評価した。

【来季はどのチームのユニフォームを身にまとうか?】

 八村はこのオフ、フリーエージェントとなる。ロールプレーヤーとしてチームに影響を与えられる点、チームの主力が負傷すればステップアップしてカバーできる点、プレーオフという大舞台で活躍できる精神力の強さ。そして精度の高い3ポイントのみならず、インサイドでのプレーもこなし、ミドルショットを得意とするなど、攻撃の中心として起用できるオフェンス能力も見逃せない。これらが揃った八村の獲得に多くのチームが手を挙げそうだ。

 八村が来季、どのチームのユニフォームを着るかは現時点では予測困難だ。ただ、わかっていることは、レイカーズへの強い思いだ。

「このチームを愛しているし、この球団が好きだ。(レイカーズの経営者や)スタッフの人たちとも4年目で、ロブ(・ペリンカGM)をはじめ、前オーナーのジニー(・バス)、新オーナーのマーク(・ウォルター)、みんなに感謝している。この球団の経営の仕方もすべて気に入っている」

 そして、「(強いチーム)でやりたいというのはいつもあるし、そういうところで活躍したい」という思いは変わらない。

 常に優勝を目指すレベルにいるレイカーズでの日々は、「毎日起きて、目標がある。

そのなかでやっていくのはモチベーションになるし、シーズンも楽しくできている」ものだったという。

 その気持ちをレイカーズで持ち続けるのか、新天地で心機一転して臨むのか。

 結論は、7月には出ているはずだ。

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