ピーター・ジャクソン監督のドキュメンタリー映画『The Beatles: Get Back』には、伝説の屋上ライブで幕を閉じる白熱したレコーディング風景の未公開映像が満載だ。1970年のマイケル・リンゼイ=ホッグ監督作『レット・イット・ビー』で使われていたものもあるが、大部分は世界初公開。この半世紀、熱狂的なビートルズ・ファンが喉から手が出るほど待ち焦がれた瞬間――それがついに訪れる。
アルバム『レット・イット・ビー』のレコーディング映像は、1969年1月2日から14日までトゥイッケナム・フィルム・スタジオで、同年1月20日から31日までアップル・スタジオで撮影された。当初は1966年以来初となるコンサートに向けた準備風景を撮影する予定だったが、ジョン・レノンとジョージ・ハリスンがコンサートそのものを却下。その後はっきりした方向性がないまま、来る日も来る日も緊迫したレコーディングが続いた。ジョージ・ハリスンの見事な新作「オール・シングス・マスト・パス」もお蔵入りとなり、メンバーはバディ・ホリーやチャック・ベリー、トミー・ドーシー、カール・パーキンス、リトル・リチャードなどの楽曲を演奏して時間をつぶし、インスピレーションの泉が沸き上がるのを待っていた。
これらはほとんど映像に残っていないが、数年前にいわゆるNAGRAリール(NAGRA社のオープンリールデッキで映像用に撮影されたテープ)の音声トラックがファン・コミュニティに流出し、38枚組コレクション・ボックスとしてリリースされた。大半はよっぽどの熱狂的ファン以外は聞くに堪えないような代物だが、きらりと光る貴重な瞬間もある。
今回はレコーディング初日に収録された、ボブ・ディランの「アイ・シャル・ビー・リリースト」を聴いていただこう。そもそも実験的なアルバム『レット・イット・ビー』は、ボブ・ディランのアルバム『地下室(ザ・ベースメント・テープス)』にインスパイアされたのだ。
この時の映像が新作映画にも登場するかは、公開までのお楽しみ。この作品はあらゆる意味で、実現可能なビートルズの最後のビッグ・プロジェクトだ。50年待った甲斐があることを期待しよう。
From Rolling Stone US.