日本への想いとロックンロールの美学
―4月に東京で2日間のスペシャルな来日公演が決定しました。今回のツアーを通して、日本の観客にどのような体験を届けたいと考えていますか?
リッチ:結局のところ、ライブは生き物だから、ふたつとして同じものはないんだ。僕らも曲を入れ替えたり、新しい曲を試したりしながら、毎回セットリストを変えている。だから、そのどれもが”宝石”のようなんだ。来てくれた人たちにそれを感じてもらえればいいなと思う。
あと、観てもらえばわかるとおり、僕らはバッキングトラックもクリックも使わないし、Pro Tools も使わない。ステージにはアンプがどんと置いてあって、みんなで歌って演奏するだけ。あくまでもアナログで、リアルなロックンロール・バンドなんだ。
残念だけど、そうやって生まれる”魔法”は往々にして見過ごされてしまう。コンピューターのツールを使って毎晩同じセットを再現するだけでは、どうしても人間味を欠いたものになってしまうんだ。テンポが少し速くなったり、遅くなったりしたっていいじゃないか。それが人間ってものだからね。
リッチ・ロビンソン(Photo by Ross Halfin)
―日本のファンのために用意している「特別なサプライズ」はありますか?
リッチ:しばらく演奏してなかった昔の曲をやるよ。楽しみにしてて。
―長年ツアーを続けてきた中で、日本の観客ならではの印象や、演奏していて特別だと感じる点はありますか?
リッチ:どの国にもそれぞれ独特のキャラクターがあるんだけど、日本は本当に大きく変わったね。90年代に初めて行った頃は、”礼儀正しいファン”という印象で、楽しんでいても拍手をするくらいだった。でも今はほんと盛り上がって、感情を表に出してくれる。思いきりロックして楽しんでくれているのが伝わってくるよ。
それでいて、日本ではみんなちゃんと音楽も聴いてくれる。本当の意味での音楽ファンだ。
―ライブパフォーマンスの中で、「”今の”ザ・ブラック・クロウズらしさ」が最も表れる瞬間は、どんな時ですか?
リッチ:難しい質問だな。この前やったライブでもそうだったけど、ステージは毎回が違う。だから「あれ、今夜は何か違うな」と感じる曲があることもあれば、逆に「Wiser Time」とか「Sting Me」とか「Thorn In My Pride」といった曲で、ストンと収まるべきところに収まる瞬間が訪れることもある。そうすると、そこから一気に曲が”生き物”になり、すべてが噛み合うんだ。まるでエンジンがかかったみたいにね。そうなったら、あとはうまく行くだけなのさ。
―その瞬間がいつ訪れるかはわからない、ということですね?
リッチ:うん、いつ訪れるかはわからないし、計算してそうなるものでもない。
―今回のジャパンツアーでは最新アルバム『A Pound of Feathers』の曲と、バンドのクラシックナンバー、両方をやるということですよね?
リッチ:もちろん。
―ライブで新曲を演奏するのは、あなたたちもオーディエンスも馴染みのある楽曲を演奏するのとでは違うものですか?
リッチ:それはあるね。たとえば前作『Happiness Bastards』の曲はライブで演奏しても、昔の曲との相性がすごく良くて、自然な流れの中で収まる曲ばかりだった。
新しい曲を演奏することには、独特のおもしろさがある。どんな曲にもそれぞれの命があって、そこには山もあれば谷もある。波の満ち引きという言い方をしてもいい。生まれたばかりの曲は、子供のようなものだ。その子がどんな方向に進んで、育っていくのか、見えてくるまでには時間がかかるんだ。だからこそ、その過程自体がいつもすごく興味深いんだよ。
―曲はライブで演奏されることで、新しい意味や感情を持つようになる、ということですね?
リッチ:ああ、そうさ。
最新アルバム『A Pound Of Feathers』の先行シングル「Profane Prophecy」
―その最新アルバムのレコーディングは、わずか10日でレコーディングされたそうですね。あなたが「言葉にできないほどの即興性をもたらした」とクリスが語っていました。ではライブでは、その即興性はどのように表現されるのでしょう?
リッチ:ロックンロールに”抑制”はないんだ。
―曲に驚かされたいんですね?
リッチ:うん。曲は川みたいなもので、自然に自分の道を作って流れていくんだよ。
―長いキャリアを経た今、ツアーや楽曲制作において”若い頃と変わった点”と”変わらず大切にしている点”はそれぞれ何でしょうか?
リッチ:ソングライティングについて言うと、「さらにいい曲を書きたい」という思いは全然変わっていない。やり方は少しずつ変わってきたかもしれないけど、曲を書くこと自体は大好きだし、「曲作りがなんたるか、全部知ってるさ」なんていうふうに思ったことは一度もない。
でも、ギターの腕は変わった、かな。知ってるコードもチューニングも増えたし、ソロだけでなく、ベースも弾くようになった。そしてまずベースラインを書いた上にカウンターメロディやメロディを重ね、そこでベースやギターがどう動くかを考えながら、曲を組み立てるんだ。まるで探検みたいで、いつも楽しいよ。
―ツアーはどうですか? 昔とは変わりましたか?
リッチ:ああ、昔みたいに無茶をすることはなくなった。でも行く先々で、街を探索したり、食事に出かけるのは今も好きだよ。旅自体が楽しみなのは変わってない。昔よりも自信がついたっていうのもある。
ストーンズやジミー・ペイジとの共演を振り返る
―これまで数多くのステージを経験してきた中で、今振り返っても特別だと感じるライブや瞬間はありますか?
リッチ:もちろん、中でも印象に残ってるのは、初めてエアロスミスとやった時、モスクワでAC/DCやメタリカと100万人を前にやったのも凄かった。ドニントン(Monsters of Rock)に出たこと、ロバート・プラントとのショー、自分たちのヘッドライン・ショー、ストーンズの前座…。
初めてジミー・ペイジとニューヨークのRoseland Ballroom でやったショーも忘れられない。あれは本当にパワフルなショーだった。やがてそれが発展して『Live at the Greek』が生まれたんだ。ジェリー・ガルシアが亡くなる前にグレイトフル・デッドとやれたのも良かった。
ストーンズと回ってたツアーでは一度ボブ・ディランがゲストで出たことがあった。南仏のモンペリエでさ。ステージ脇、クリスと僕とボブとで並んで、ステージを観たのはいまだに忘れられない思い出だ。自分たちのショーでも最高の出来だったのはいくつもあるんでね、どれか一つを選ぶのは不可能だよ。
スティーヴン・タイラーとの共演パフォーマンス(2024年)
ジミー・ペイジ&ザ・ブラック・クロウズ『Live at the Greek』メイキング映像
―長いツアー生活の中で、心や感覚をリセットするために欠かせない習慣やルーティンはありますか?
リッチ:特にないよ。ツアーではいつも違う街を訪れ、あちこち飛び回り、そこでやることもたくさんある。決まりきったルーティンになることはないんだ。着いた街をちょっと歩いて、街を感じるだけで、ツアーという世界から一瞬でも離れられる気がする。それで十分さ。
―あなたはギター・プレイだけでなく、絵画や写真などのアートにも造詣が深いですよね。音楽以外の情熱は、あなたの作曲やギター・トーンにどのような影響を与えていますか?
リッチ:影響はないと思う。二つは、脳の全く別の部分を占めてる。たまに鍛える別の筋肉という感じで、それぞれが独立している。なぜか絵を描くことと音楽を一緒にしようと思ったことは、一度もないんだ。それぞれに違うことだし、それでいいんだと思う。絵を描いているときは、音楽のことをすっかり忘れていることもある。でもそのあとでまた音楽に戻ると、前よりもやる気が増してる気がするんだ。
―執筆とか、他の表現方法で挑戦したいものはありますか?
リッチ:アートの世界で、ちょっとやってみたいことはあって…彫金には前から興味がある。特に金属の彫金に挑戦したい。あとは、色々と旅をし、世界を見て周りたいと思ったりもするよ。でも実際にはそこまで手が回らないんだ。小さな子供が5人いるんで、毎日彼らを追い回してばかり(笑)
―バンドとして、そして一人のミュージシャンとして、今後数年で「ここに辿り着けたらいい」と思い描いている理想の姿はありますか?
リッチ:そういうことはあまり考えない。このバンドも、最初から「よし、バンドを始めよう。こういう音楽をやろう」と宣言したわけじゃなかった。やって来た汽車に飛び乗り、そのまま走って来ただけ。だからこそ続く限りは続けたいし、あとは「なるようになるさ」という気持ちだよ。正直、先のことはあまり考えたりしないんだ。
―今年はガンズ・アンド・ローゼズとツアーするそうですよね。
リッチ:ああ、何本かの公演でね。楽しみだよ。
―あなたが現在注目している他のミュージシャンや、一緒にツアーをしたいミュージシャンはいますか?
リッチ:というか、そのガンズのショーをすごく楽しみにしてるところさ。随分昔から知ってはいたんだ。個人的にもスラッシュとダフとは親しいし、イジー・ストラドリンとは今でも友達だよ。なんてったって、彼らは最高のバンドだ。それは今も昔も変わらない。僕らとの相性もバッチリだと思うし、最高のロックンロール・ショーになるのは間違いないよ。
若手の中にもクールなバンドがたくさんいる。あいにく、今すぐには名前が出てこないんだけど… 若いバンドとツアーができたらいいだろうね。
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―2024年のエアロとのツアーは残念ながら、すぐ中止になってしまいましたが、あなたはとても感謝されてましたよね。
リッチ:ああ。僕らにとって初のアリーナツアーは、エアロスミスのオープニングだったんだ。だから彼らが引退を宣言し、ツアーに出るとなった時、声をかけられたのは光栄だったよ。
―2026年がスタートして間もないですが、どんな1年にしたいですか?
リッチ:素晴らしいツアーの1年になることを願っているよ。とにかくいいショーにするよ。皮切りはオーストラリアと日本。ツアーの幕開けとして、申し分ない。エキサイティングな1年になるだろう。楽しみだ!
―最後に、4月の東京公演を心待ちにしている日本のファンに向けて、メッセージをお願いします。
リッチ:みんなに会うのを心待ちにしてるよ。日本に行くのが本当に楽しみだ。大好きな国だからね。クリスも僕もコンサートの後、数日滞在を伸ばして、色々と見て回ろうと思ってるところさ。多分東京で何日間か過ごすと思う。
※Rolling Stone Japanでは、ザ・ブラック・クロウズの最新アルバム『A Pound Of Feathers』(3月13日リリース)とバンドの現在地に迫る独自インタビューを後日公開予定。
Photo by Masanori Doi
ザ・ブラック・クロウズ来日公演
2026年4月14日(火)・15日(水)Zepp DiverCity (TOKYO)
18:00 開場/19:00 開演
オープニングアクト(両日出演):The Asteroid No.4
チケット料金:1F スタンディング ¥17,000/2F 指定 ¥20,000(ドリンク代別途/税込)
公演詳細:https://udo.jp/concert/TheBlackCrowes26
The Asteroid No.4は米出身シューゲイズ・ドリームポップバンド
ザ・ブラック・クロウズ
『A Pound of Feathers』
2026年3月13日リリース
詳細:http://bignothing.blog88.fc2.com/blog-entry-16529.html


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