日本時間4月11~13日、4月18~20日の2週に渡って開催される世界最大級の音楽フェス「コーチェラ(Coachella)」。初のラティーナ(中南米系女性)ヘッドライナーから、同フェス史上初となるフィリピン出身グループのデビューまで。
興奮と歴史的瞬間に満ちた第1週目を振り返る。

日本時間4月11日(金)、8人組の強き女性たちBINIがフィリピンの誇りを体現し、レディオヘッドの「Motion Picture House Kid A MNESIA」が世界初公開され、スレイター(Slayyter)は最新アルバム『Worst Girl in America』からの新曲を披露した。

4月12日(土)は、ギース(Geese)がジャスティン・ビーバーをカバーし(その数時間後に行われたビーバー本人のヘッドライナー・セットは賛否両論となった)、ナイン・インチ・ノイズ(Nine Inch Noize)が初のフルセットを敢行。さらにジャック・ホワイトのサプライズ・パフォーマンスや、デヴィッド・バーンの演劇的なカムバックなど、見どころが尽きなかった。

4月13日(日)には、カロルG(Karol G)がラティーナとして史上初めてヘッドライナーを務め、3度目の出演となったイギー・ポップは、再びパンクロックのカリスマ性で観客を魅了した。

週末を通して、数多くのサプライズゲストも登場した。サブリナ・カーペンターのヘッドライナー・セットでは、音楽界からのゲストを避け、ウィル・フェレル、サム・エリオット、コーリー・フォーゲルマニス、サミュエル・L・ジャクソンら豪華俳優陣を招くという「ハリウッド流」の演出を見せた。ジャスティン・ビーバーはザ・キッド・ラロイ、ディジョン、テムズ、ウィズキッドを呼び寄せた。テディ・スイムズ(Teddy Swims)はデイヴィッド・リー・ロス、ジョー・ジョナス、ヴァネッサ・カールトンと共演。ヤング・サグは、サプライズゲストのカミラ・カベロとともに大ヒット曲「Havana」を披露した。

FKAツイッグスは、ハニー・バレンシアガ、マカイラ・バスキア、ダショーン・ウェズリーを迎え、西海岸のボールルーム・カルチャーへの賛辞を込めた圧巻のパフォーマンスで観客を圧倒。ソンバー(Sombr)はスマッシング・パンプキンズのビリー・コーガンを登場させてファンを驚かせ、メジャー・レイザーはM.I.A.をステージに呼び込んだ。
これらは、この週末に起きた数え切れないほどのサプライズ出演のほんの一部に過ぎない。

あまりに多くの出来事があった今回のコーチェラ。ここでは、2026年初週のセットの中から、特に記憶に刻まれた15の瞬間を紹介する。

1日目・4月11日(金)※日本時間

BINI(ビニ)

コーチェラでパフォーマンスを行う初のフィリピン出身グループとして、8人の女性からなるBINIは、Mojaveステージに立つ自分たちの置かれた状況がいかに重大であるかを十分に理解していた。そして彼女たちは、期待以上のステージを見せつけた。

男性ダンサーのチームを従え、緻密に構成された振り付けを披露。英語、フィリピン語、そしてその混合であるタグリッシュを使い分け、リリースされたばかりのEP『Signals』から新曲「Blush」を初公開したほか、「Karera」「Salamin, Salamin」、そしてラストの「Pantropiko」といったファンのお気に入りの楽曲を畳みかけた。

「フィリピンを代表してこの場所に立てることを、心から光栄に思います」と彼女たちは観客に語りかけた。P-POPが世界の舞台に躍り出るまでには長い時間がかかったが、彼女たちはフィリピンの人々の誇りを鮮やかに証明してみせた。 – Althea Legaspi

Turnstile(ターンスタイル)

ターンスタイルのコーチェラへの帰還は、ハードコアの熱狂とモッシュピットのエネルギーを、汗まみれのZ世代の群衆に呼び戻した立役者らしく、期待通り騒々しく、型破りで、最高に楽しいものだった。

彼らのセットリストには、元ギタリストのブレイディ・エバートがフロントマンのブランドン・イェーツの父親を殺害しようとした容疑で逮捕されたという、最近のショッキングなニュースの影が落とされていた。しかし、バンドは音楽にすべてを語らせる道を選んだ(イェーツの父親は事前に録画されたセグメントに登場し、ターンスタイルが最近、彼の家の地下室での練習を卒業し、本物のスタジオを借りるようになったことを誇らしげに語っていた)。
現ギタリストのメグ・ミルズは、天まで届くようなリバーブと、重厚でリフの効いたパワーコードを交互に繰り出し、バンドのハイテンションなエネルギーと同調していく。

「Endless」や「Blackout」といった楽曲で観客を圧倒し、巨大化するサークルピットを煽った後、最後は強烈な「Birds」で締めくくった。「全員ジャンプしろ」というイェーツの促しに応え、会場全体がカタルシスに包まれる。最後、彼は長い時間をかけてクラウドサーフを行い、全力のサポートを誓う観客からの愛を一身に浴びていた。 – Jeff Miller

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Radiohead Motion Picture House: KID A MNESIA

少し前まで、レディオヘッドの芸術的で不安に満ちたロックは、彼らをコーチェラの守護聖人たらしめていた(彼らはこれまでに3回ヘッドライナーを務めている)。それゆえ、2000年代初頭の2枚のアルバム『Kid A』と『Amnesiac』の世界観を表現するために新設されたこの没入型の映画上映・回顧展施設は、まさに彼らにふさわしいものに感じられた。

特筆すべきはその会場自体だ。会場の斜面に建設された本格的なバンカー(地下施設)には、L-Acoustics社による驚異的な没入感と鮮明なサウンドを誇るスピーカーシステムが完備されている。そこで常時上映されている映画(今年は他の場所への巡回も予定されている)は、生と死、テクノロジー、人間関係、そして感情についてのストップモーションによる考察だ。一言で言えば、バンドの深淵な神話を拡張するに値する見事なコンテンツだった。 – J.M.

Dabuell(ダベル)

フランス出身のプロデューサー兼ミュージシャン、ダヴィッド・サイード(別名ダベル)は、70年代のソウルスターのいかがわしい美学をこれ以上ないほど突き詰めていた。立派な口髭を蓄え、グリッターが輝く衣装に身を包んだ彼と、レジャー・スーツを着こなした大所帯のバンドは、腰を揺らすようなボコーダー・ファンクを完璧に盛り立てる。


こうしたスタイルは往々にして飽きられがちだが、ダビュエルはアナログ機材を駆使したバンドのシンガーを次々と入れ替えることで鮮度を保ち、キーボードが唸る新曲の数々に新たな息吹を吹き込んでいた。 – J.M.

Slayyyter(スレイター)

スレイターが3枚目のスタジオアルバム『Worst Girl in America』をリリースしてからまだ1カ月も経っていないが、それらの楽曲が初めて命を宿す場所として、コーチェラ以上の舞台はなかっただろう。

フェス初日の午後3時という出番ながら、彼女は夜のメインタイムでも遜色ないほどのパフォーマンスを見せ、他のアーティストへのハードルを一気に引き上げた。ステージ上でのスレイターの圧倒的な支配力は、まさに幸福そのもの。「Cannibalism!」から「Im Actually Kind of Famous」、「Beat Up Chanel$」へと、楽曲を次々と破壊的な勢いで畳みかけていく彼女の姿に、コーチェラの観客は間違いなく熱狂の渦に叩き込まれた。 – Larisha Paul

2日目・4月12日(土)※日本時間

David Byrne(デヴィッド・バーン)

デヴィッド・バーンは、演劇的でカタルシスに満ちた、壮観なステージで会場を熱狂の渦に巻き込んだ。世界情勢は暗いニュースが続いているが、彼のセットリストは楽観的な展望に満ちていた。ワイヤレス機器を身につけ、自由に動き回るミュージシャンやダンサーと共に、彼は「愛」と「共通の基盤」というテーマを通じて、人生の浮き沈みを反映した没入感のある世界へと観客を誘った。

トーキング・ヘッズ時代の楽曲を多用した構成の中には、最新アルバム『Who Is the Sky?』の曲も含まれていた。「愛と思いやりは、一つの抵抗の形なんだ」。「What Is the Reason?」を披露する前に彼はそう語った。その後、「Life During Wartime」の演奏中に、ICE(米入国管理局)に対する抗議活動の映像が流れると、観客からは大きな歓声が上がった。
人類共通の人間性を謳歌しながら、彼はファンに対し、どんなに最悪な時代であっても希望はあるのだということを思い出させてくれた。 – A.L.

PinkPantheress(ピンクパンサレス)

ピンクパンサレスは、将来のヘッドライナー就任を予感させるほどの大群衆と轟音のような歓声を惹きつけた。現在Hot 100でトップ10入りしているヒットシングル「Stateside」をセットの最後まで温存することなく、彼女はいきなりオープニング曲として披露した。もしその曲だけが目当てなら、観客は開始5分で立ち去ることもできただろう。しかし、そうした人々はこの週末で最高のパフォーマンスの一つであり、彼女のキャリアにおける傑出した勝利の瞬間を見逃すことになったはずだ。

倉庫でのパーティーを彷彿とさせるパフォーマンスの中、観客は「Pain」を合唱し、ザ・デア(The Dare)やDJジョーによるDJセットに合わせて踊り明かした。最後に「Illegal」で締めくくられる頃には、ポップの未来はピンクパンサレスの手の中にあるということが、否定しようのない事実として感じられた。 – L.P.

Jack White(ジャック・ホワイト)

音楽の世界が多様化し、「誰もが知るヒット曲」という概念が神話のように思える昨今、コーチェラの観衆すべてを一つに結びつけられるものはほとんど存在しない。だからこそ、ジャック・ホワイトが「Seven Nation Army」のあの刹那的なオープニングのリフを弾き始めたとき、それはまるで啓示のように響いた。

あの曲を聴いて、本能的に「ウォー・オ・オー・オー・ア・オー・オー」と口ずさまない者は、会場に一人としていなかっただろう。2番のサビの後、彼の轟くギターをかき消すほどの観客のチャントを聴き、ホワイトがにやりと笑う様子(そのチャントは、ライブ終了後に観客がMojaveテントを去る時まで続いていた)は、たった一つのリフの力だけでなく、音楽そのものが持つ力を証明していた。 – J.M.

Geese(ギース)

今まさに旬を迎えているブルックリンのインディーロック・バンド、ギースは、「ロックの再来」という看板を背負うには最も意外な存在かもしれない。
5人編成のライブ・ラインナップは、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドとマーズ・ヴォルタの間を絶妙に突き進んでいた。Gobiテントでのステージでは、シンガーのキャメロン・ウィンターのどこか冷めたキャラクターに合わせ、常に奇妙で、時に甘く、時に咆哮するような楽曲を繰り出した。

ジャスティン・ビーバーの「Baby」を一部カバーしてみせたのは、彼らが自らを世間が思うほど深刻に捉えていないことの表れだろう。そして熱狂的なフィナーレを飾った「Trinidad」では、サビの「俺の車に爆弾が仕掛けられている!(Theres a bomb in my car!)」というフレーズを観客全員が絶叫した。これが彼らにとってのブレイクスルー・シングルに最も近い曲だ。あと数曲もあれば、彼らがメインステージへと昇り詰める日はそう遠くないだろう。 – J.M.

Nine Inch Noize(ナイン・インチ・ノイズ)

ドイツ人プロデューサーのボーイズ・ノイズ(Boys Noize)と、トレント・レズナー率いるナイン・インチ・ネイルズ(NIN)によるコラボレーション・バンドの初お披露目は、期待に違わぬ黙示録的な暗黒世界だった。

グレーの全身タイツに身を包んだダンサーの群れが、インダストリアルにリミックスされたNINの楽曲に合わせて悶え苦しむ様子は、さながら「バウハウス(バンドとデザイン哲学の両面において)を経由したマッドマックス」といった趣だ。最大のハイライトは、レズナーが「Closer」を歌いながらその群衆に飲み込まれた瞬間だろう。ドラマチックな場面に満ちたセットの中でも、ダンサーたちが彼を丸呑みにせんとする姿は、ひときわ強烈な印象を残した。 – J.M.

Sombr(ソンバー)

ちょうど1年前の今日、ソンバーはニューヨークで、解散したWhy Don't Weの元フロントマン、ダニエル・シーヴィのオープニングアクトを務めていた。当時の彼にとって、ステージはまだ馴染みの薄い場所であることは明らかで、どこかその場の空気に圧倒されているようにも見えた。


だが、この日のコーチェラのステージに立った彼に、当時の面影は微塵もなかった。それはおそらく、彼のこれまでのキャリアにおいて最も重要で、決定的なパフォーマンスとなったはずだ。さらなる高みを目指すアーティストらしい自信に溢れた立ち振る舞いで、彼はステージと観客を完全に支配した。ビリー・コーガンの飛び入り参加もあり、ポップから激しいロックへと展開した彼のセットは、将来のヘッドライナー候補としての実力を十二分に証明してみせた。 – L.P.

3日目・4月13日(日)※日本時間

Karol G(カロルG)

カロルGは、ラティーナとして史上初めてコーチェラのヘッドライナーを務め、歴史を塗り替えた。爆発的なエネルギーと野性的なセクシーさを放ちながらも、地に足のついた社会意識を感じさせる彼女のステージは、すでに忘れがたい記録をいくつも持つ彼女のキャリアにおいても、最大の一夜となった。

3階建ての石の洞窟を模した圧倒的なセット、自身のヒット曲「TQG」や「Amargura」を含む20曲のセットリスト、グロリア・エステファンの「Mi Tierra」のカバー。さらにはレゲトン界のパイオニア、ヤンデル(Yandel)による4曲のミニセットや、全米初の女性プロ・マリアッチ・グループ「Mariachi Reyna de Los Angeles」との共演など、彼女は観客を終始魅了し続けた。

「これは、この国で苦境に立たされているラティーノのみんなに捧げます。私たちは彼らの味方。私はラティーノ・コミュニティと共にあります……誇りを持って、旗を掲げて」と彼女が呼びかけると、客席には中南米やカリブ諸国の旗がたなびいた。このパフォーマンスにより、彼女はラテン・ミュージック界の「新たな母」としての地位を不動のものにした。 – Vanessa Diaz

Iggy Pop(イギー・ポップ)

イギー・ポップにとって、今回は3度目のコーチェラ出演となる。1度目は2001年のソロ、そして2003年にはザ・ストゥージズを再結成させ、歴史的な瞬間を刻んだ。そしてこの日のステージもまた、語り草となる一幕だった。

「パンクのゴッドファーザー」は4月21日に79歳を迎えるが、ステージ上の彼は、70年以上の歳月を感じさせない活力に満ち溢れていた。Mojaveテントに現れた彼は、まさに本領発揮といった様子。上半身裸でステージを支配し、「T.V. Eye」「Search and Destroy」「I Wanna Be Your Dog」といったストゥージズの古典から、ソロの人気曲「Passenger」、そして荒々しい「Lust for Life」まで、グレイテスト・ヒッツを次々と叩き込んだ。 – A.L.

【コーチェラ 2026】第1週 ベストアクト15選

Photo by Christopher Polk/Billboard

Wet Leg(ウェット・レッグ)

ウェット・レッグが最後にコーチェラに出演した2023年当時、リアン・ティーズデイル率いるこのパンキッシュなバンドは、まだ期待先行の「バズ・バンド」という、インディーロック界の端境期にいた。

しかし今や、彼女たちは本物のヒットメーカーだ。メインステージでのパフォーマンスはこの日の早い時間帯におけるハイライトとなった。今やコーチェラの制服とも言える「下着をアウターとして着こなす」スタイルで登場したティーズデイルは、全盛期のアーティストらしい気迫で「Too Late Now」や「Pillowtalk」を堂々と歌い上げた。 – J.M.

※ライブ動画はこちら

Major Lazer(メジャー・レイザー)

この日の夕暮れ時に行われたメジャー・レイザーのパフォーマンスは、ジャスティン・ビーバーとのコラボ曲「Cold Water」やシングル「Light It Up」がチャートを賑わせていた2016年以来の出演となった。フェスティバルは、彼らを最高の形で迎え入れた。

フィールドの遥か後方まで埋め尽くした観客は、EDM、ダンスホール、ポップスを織り交ぜたミックスに合わせて一斉にバウンド。さらにM.I.A.が登場して「Paper Planes」を披露するというサプライズもあった。今回のセットは、2019年に加入したエイプ・ドラムス(Ape Drums)、そして2025年に加わったヴォーカルのアメリカ・フォスター(America Foster)にとって初のコーチェラの舞台となった。セットの最後、自分たちが辿り着いた場所を目の当たりにして涙を流すフォスターが、エイプ・ドラムスに寄り添う姿は、人々の心を打つ感動的な瞬間だった。 – L.P.

From Rolling Stone US.
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