シェアサイクル(共有自転車)の急速な普及によって“マイ自転車”の需要が激減した中国の自転車メーカーは、シェアサイクル事業者向けにフル稼働していた自転車生産ラインを海外の市場開拓に振り向け始めたようだ。新たな市場として注力しているのは欧州、そして、アフリカを中心とする発展途上国だという。
特に、中国で生産台数の拡張が著しい電動自転車の大量輸出をめざしている。

 中国自転車・電動自転車協会によると、中国の電気自転車は生産台数、販売台数ともに世界最多を独走している。生産企業は700社を超え、総従業員数は500万人を上回った。2017年の年産能力は3300万台超、生産額は1350億人民元(約2兆3000億円)に膨らんでいる。中国国内の自転車保有台数は2億5000万台に上る。

 現在、中国の自転車市場の潮流は、「電動化、スマート化、グリーン化、ファッション化」だという。中でも、電動化については、電動アシスト自転車から、ペダルのないフル電動自転車の量産化が進んでいる。日本ではスクーターとして公道を走るには免許が必要だが、同じものが中国では自転車として販売されている。しかも、電気で走るため、排ガスを出さない環境にやさしい移動手段として農村部を中心に急速に普及している。中国政府も「脱炭素社会」に向け、新しい分野であるイーバイクや電気自動車の生産には補助金を出して製造を奨励している。

 広東省に本拠を置く大手メーカーの東莞市台鈴車業有限公司(TAILG)は7日、ドイツの国際的なプロダクトデザイン賞を連続受賞したと発表し、欧州地域での拡販に本格的に乗り出す。海外に合弁工場、または貿易会社を新設し、欧州、またはアフリカを中心とする発展途上国に大量輸出する方針を打ち出している。
TAILGは、多くの業種から最新技術を導入し、軽量のリチウムイオン電池を動力に採用した「簡愛」を今年発売。海外40カ国・地域に向けて輸出を開始した。

 中国メーカーによる電動アシスト自転車の欧州輸出は、欧州自転車製造者組合(EBMA)が2017年10月、欧州委員会にダンピング(不当廉売)訴訟を起こすほど、その量の多さと安い販売価格が問題視されている。EBMAは、中国国内で余った在庫が欧州に大量に持ち込まれているとし、欧州メーカーの4分の1程度の価格で入ってきている中国製品の排除を主張した。また、EBMAは電動自転車に対する中国政府の補助金の存在を取り上げ、「中国メーカーは製造コストを下回る価格で欧州向けに電動自転車を販売している」と主張している。

 実際に、中国の電動自転車マーケットは、すでに飽和期といえる。国内の販売台数は、直近ピークの2013年が約3600万台。その後、14年が3500万台、15年が3257万台、16年が3100万台に縮小した。

 国内で過剰感が広がるなか、メーカーは海外市場の開拓に注力。ドイツ、フランス、インド、ベトナム向けの出荷を増やしている。すでに米国、英国、日本も含めた世界100カ国・地域以上に輸出の実績があり、16年の海外出荷は、前年比20.4%増の133万9000台に拡大している。(イメージ写真提供:123RF)


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