
従来の防災食は乾パンやミネラルウォーターなどが定番だったが、最近ではアルファ米など米飯類を中心に、パン、缶詰、麺、菓子、スープ、デザートなど日常食と変わらない食品が出回り、技術開発が進んだ結果、賞味期限の長期化が進んだ。さらにアレルギー対応食品やハラール対応食品などの開発も進み、食のバリアフリーは防災食にも浸透している。需要も、今までは東日本大震災が発生した3月11日前後、それに9月1日の「防災の日」前後と、年2回にわたって跳ね上がる傾向だったが、ネット販売が普及した結果、年間を通して需要が定着。新型コロナウイルス感染症が広まったため、今年は法人も個人も改めて防災意識が高まっている。
カゴメの通販事業部は、防災に関する役立つ情報や同社通販商品の新たな食べ方などを知ってもらおうと、管理栄養士であり防災士の今泉マユ子氏を講師に迎えて、通販顧客に向けたオンライン防災セミナーを開催。カゴメ健康直送便の顧客を中心とした約350人が、動画投稿サイトYouTubeによるライブ配信を視聴した。
今泉氏は、防災の備えとして非常用持ち出し袋の再点検を促すとともに、「想像力を働かせて食べる場面を想定し、体験しておくことが重要」とし、家族で断水や停電を事前に体験する「断水ごっこ」や「停電ごっこ」などを紹介。
カゴメの「つぶより野菜」で戻した「アルファ米ワカメご飯」を実演し、視聴者から「つぶより野菜とワカメご飯の組み合わせだと、野菜も摂れて良さそう」「ためになる有意義な時間だった」「災害時にも野菜が摂れる備えを改めて考えたい」などの投稿があった。
パシフィコ横浜では初の「防災食品展」が開催された(3月17日、18日)。今回で25回目を迎えた「震災対策技術展・横浜」の同時開催として行われ、「普段からあるものを無理なく備蓄することで災害に備える」をテーマに掲げ、缶詰やレトルト食品、麺類、パン類、デザート、菓子、ミネラルウォーターなど多彩な商品が紹介された。
井村屋の防災食は、食べきりサイズのミニようかん「えいようかん」が定番だ。
永谷園のブース(防災食品展) 永谷園の「フリーズドライご飯」」は、既存の備蓄食は調理時間が長く、食べたい時にすぐに食べられないという不満を払拭したい思いから生まれた。「さけ茶づけ」の鮭などに活用しているフリーズドライ技術を使えば備蓄食も短時間で調理ができるため、2017年にFD技術を導入して「フリーズドライご飯」を発売。災害時でも「手軽に」「おいしく」食べられることはもちろん、少しでも「安心して」食べ物を口にしてほしい思いから、一目で永谷園の商品と分かる「定式幕」を採用した。お湯を注げば3分、水でも5分でそのまま食べられ、スプーンが付いているので食器が不要。しかも袋の内部には注水量の目安線が付いているので、お湯加減でふつう、やわらかめの2つの食感が選べる。
「タナカショク」の「豆腐ジャーキー」は、豆腐でできたたんぱく質が豊富な防災食。非常時にはインスタント食品などを長期間食べることが予想され、そうすると栄養不足になりがち。特にたんぱく質が不足するとエネルギー利用効率が低下し、様々な障害を招きかねない。
「マルキ」の「揖保乃糸 防災食セット」は、1袋ににゅーめん(揖保乃糸)とスープ、折り畳み式容器、お箸がすべてセットされ、お湯さえ注げば3分待つだけで(夏場なら水でも20分でもどる)温かい素麺が気軽に食べられる優れもの。防災食には汁物が少ないばかりか、非常時の強い緊張やストレスによって唾液の分泌量は極端に低下。こんな時こそ食べ慣れた温かい素麺はありがたい。しかも素麺の中でも「揖保乃糸」はれっきとしたブランド品。まさに「いつも」が「とっておき」になる時間だ。
防衛省が調達する戦闘糧食を40年にわたって納入してきた経験を生かして開発されたのがホリカフーズの「レスキューフーズ」だ。大規模災害時はライフラインが遮断され、食料の調達や調理は難しい。特に温かい食事が取れないのが最大のネックとされる。「レスキューフーズ1食ボックス・和風ハンバーグ」には加熱キットが同梱されて、火を使わずに温かいハンバーグとホカホカごはんが食べられる。カレーライスや牛丼、中華丼など品揃えも豊富で、メニューが飽きないよう3食詰め合わせもある。
