日清食品ホールディングスは11日、2021年度以降の中長期的な成長戦略と、10年後、2030年の成長目標を定めた経営計画「日清食品グループ中長期成長戦略」を発表した。成長戦略のテーマは「既存事業のキャッシュ創出力強化」「EARTH FOOD CHALLENGE 2030」「新規事業の推進」。
国内外で既存事業の成長を加速させるとともに、環境負荷低減施策を推進。さらに、CSV(共通価値の創造)の一環として「♯日本を、未病対策先進国へ」をキャッチフレーズとする新規事業「完全栄養食」に取り組む。

中長期成長戦略のカギとなるのは海外事業と国内非即席麺事業。2030年に向けた成長目標(利益構成比、成長性水準)として、海外事業の利益構成比を現在の約30%から約45%に、成長性目標は一ケタ台後半から二ケタ。国内非即席麺事業は利益構成比を現在の約10%から約15%に引き上げ、成長性目標も一ケタ台後半という目標を掲げた。

主力の国内即席麺事業については、利益構成比こそ現在の約60%から約40%に低下するものの、市場成長性を上回る伸びを確保し、引き続きコア事業としてグループ利益を下支えする。新規事業、さらにはM&Aなども視野に入れ、成長を加速させる狙いだ。

新規事業「完全栄養食」は、「見た目やおいしさは(既存のメニュー)そのままに、カロリーや塩分、糖質、脂質などがコントロールされ、必要な栄養素を全て満たす食」がコンセプト。カレーライス、トンカツなど既存のメニューそのままに、完全栄養食化する点が最大の特徴。即席麺などの開発で培ってきた減塩してもおいしさを保つ技術や、油分、カロリーをカットしてもおいしさを保つ技術、味のエグみ・苦みをマスキングする技術、調理時の栄養素流出を防止する技術を駆使して開発を進める。

具体的な取り組みとして挙げたのが「定期宅配便(D2C)」「社員食堂」「健康寿命延伸サポートプログラム」「小売販売」「スマートシティ」。「定期宅配便」は、D2C事業として消費者に直接、完全栄養食を提供するサービス。
健康管理も合わせるという未病対策の新たなアプローチ。年度下期からのサービス開始を予定。

社員食堂については、同社社員食堂で実施した試験結果を踏まえ、今月から伊藤忠商事の社員食堂でも試験的に実施し、従業員の健康管理と健康経営をサポートしていく。100人規模のPoC(概念実証)を経て、1千人規模の事業に拡大していく考えだ。

社会的課題である健康寿命の延伸については、シニア層に対し、少量で栄養十分な食事の提供により、低栄養に起因するフレイル(心身の衰弱)の抑制を目指す取り組みを進める。

小売販売は、現在のパッケージフード(カップ麺など)、弁当、惣菜、ミールキットなどを完全栄養食として提供するもの。将来的にはインスタントラーメンの完全栄養食化なども視野に入れる。

同社では、健康寿命延伸を目的とした「完全栄養食」の事業化に向け、慶應義塾大学医学部と最新の分子栄養学分野で共同研究に向けた協議を開始したほか、株式会社Preferred Networksとの間で、「食と健康状態の解析モデル」の確立を目指し、本格的な共同研究を開始することでも合意。

将来的に「完全栄養食」のレシピ開発とパーソナライズ化に応用していく考え。世の健康志向も背景に、予防医学をベースとする食品が続々と登場しているが、未病対策として既存の定番メニューを完全栄養食に置き換え未病対策を進める、というアプローチは新たな取り組み。スマートシティを含め、事業領域は多岐にわたるが、まずは「日清のおいしい完全食」を普及させ、セカンドステップとしてパーソナライズされた完全食を目指す考えだ。
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