6月に入り、中元商戦が本格化した。ギフトセンターには、贈答向け商品が並ぶが、そこには「夏の贈り物」と掲げられることが多くなった。
この1~2年の間に、大手百貨店を中心に「中元」の言葉が消えた。

▼ギフト総市場は年々成長して、24年は推定で約11兆円を超えた。市場を牽引するのは「LINEギフト」など、相手の住所を知らずに贈ることができるSNSサービスで、中元や歳暮市場は年々縮小する。そのなかでも比較的、カジュアルギフトや自分用のご褒美需要は好調だ。小売各社では売上減少分を補填するため、「中元」の枠にとらわれない、新しいニーズの開拓に取り組む。

▼某百貨店バイヤーは「この時期限定で手に入る百貨店品質のグルメとして打ち出したい」と、自社でしか購入できない商品の品揃えに力を入れる。大丸松坂屋百貨店では、その名も「GOHOUBI(ごほうび)」カタログを展開して6シーズン目を迎えた。ギフトと自宅用の両方に対応した商品を揃え、昨年の商戦は売上を伸ばした。

▼時代の流れに合わせた新たなスタイルが広がっている。それは決して「中元」という伝統が失われた訳ではない。伝統を残すために、変化を加えてでも守っていこうという、関係者の意気込みなのかもしれない。
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