食品パッケージ製造・販売の富士特殊紙業(=フジトク、愛知県瀬戸市)は今期(25年9月期)、受注、売上ともに昨対約5%のプラスで前半戦を折り返した。

利益も増益を確保したが、「下期の展望は正直言って厳しい」と同社・杉山真一郎社長。
今年も数多くの食品の価格改定が実施・予定されているが、これまでの「物量減を値上げ分でカバー」という図式がいよいよ頭打ちの様相を呈してきた。その一方で原料となるフィルムやインクについては価格がさらに上昇する見通しで品薄感も強まっている。自社の強みを磨き、いかに売上拡大と適正利益の確保を進めるか。難しい舵取りが続く。

上期については、「業界として盛り上がりを欠く中で、数量ベースで前年を超えられたのは健闘している方かと思う。引き続きふりかけやグミ、米菓、パスタなどが好調だった」と振り返る。

あらゆるコスト増が続くなかでユーザーの環境配慮型包装への取り組み意向の減退が懸念されるが、「水性印刷の採用は着実に増えている。社会的にも食品業界としてもCO2排出量や揮発性有機化合物(VOC)などの削減は重点テーマ。油性インクが高騰し、水性との価格差が縮小したという、相対的な部分もあるだろう。いずれにしても水性というワードは決して後退していない」。

水性印刷に続く柱としてノンソルベント(有機溶剤不使用のラミネート加工)や押し出しラミネーション、ジッパー袋などを差別化の武器として強化・育成に力を注ぐ。

ノンソルベントに関しては来期(26年9月期)、本社工場に新しい貼合機械を導入予定。
ボイル対応やレトルト包材など、より広い用途でユーザーの要望に応えていく。

横方向開封ピロー「スマートカット®」および同技術を生かした「スマートカット®ジッパー袋」は、畜肉や米菓、近年はグミなどで導入が進んでいるが、「少し前には、2㎏サイズのジッパー付米袋の大口注文があった。単身・少人数世帯の増加や米食の減少に加えて、このところの米価高騰も背景にあるのだろう」と世相を映す動きを指摘する。

下期については、冒頭の通り厳しい見通し。特に深刻度を増しているのが原料事情だ。「フィルムやアルミ箔、インクなどの値上がりはもちろんだが、フィルムをはじめ包材原料がどんどん廃盤になっており10年後には欲しくてもないという状況になりそうだ。値上げと品薄、こうした要因があいまって、この秋頃から業界が騒がしくなってくるのではないか」と警戒感を強めている。

そうした中で、重点取り組みに掲げる「攻める分野を意識し、フジトクの強みを生かした営業活動」を継続推進。「お客様も確実に事業ポートフォリオの見直しに入ってきている。そこをしっかり判断し、価格競争に巻き込まれないように顧客・アイテムを絞って営業活動を展開していきたい」。

同業者との協業・協働にも引き続き力を入れる。中小印刷業者・食品包装業者はどこも人手不足や機械の老朽化で受注に応えきれなくなってきているが、「それぞれの強みを生かせるような業務の委託・受託のネットワークを構築し、食品包装の安定供給と業界全体としての生産性向上につなげていきたい」。
編集部おすすめ