各メーカーが続々と見直し...。ポテチに続く「白黒パッケージ...の画像はこちら >>

カルビーは5月25日出荷分から、「ポテトチップス」などのパッケージを白黒化している

カルビー、カゴメ、日清製粉ウェルナ......パッケージの見直しを各メーカーが次々と発表しており、この流れはしばらく止まらなそうだ。この先、パッケージを簡素化する商品はいったい何? 経済評論家やパッケージデザインの専門家らが大胆予想!

*  *  *

【日本の消費者は情報過多が好き】

「実は、ポテトチップスの包装が白黒に変更されることは報道される少し前から知っていました。

印刷会社の友人に『インクの原料不足が深刻で、多くのパッケージから色が消えるかも』と言われたんですよ。それでもニュースを聞いたときには『まさか本当に』と驚きましたが......」

こう語るのは、広告制作会社の社員で、大手メーカーのスナック菓子などのパッケージデザインを手がけてきたデザイナーだ。

「それはそうとして、日本のパッケージデザインは色に限らず情報が過剰だとは感じていました。

面積が限られたスーパーやコンビニの棚で、少しでもライバルより目立とうと派手になっていくんですね。新商品をデザインする際もクライアントから『地味な色にして売れなかったら困る』と言われ、過剰化は歯止めが利かなくなっていました」

一例を挙げると、食品のパッケージで食べ物の質感を想像させる、いわゆるシズル感の追求だ。食品のパッケージには、カップ麺の外装にラーメンの写真を載せたり、グミのパッケージに果実の写真を使ったりと、味をイメージさせるデザインが多い。

「シズル感につながる具体的な画像を使うのは日本のパッケージの特徴ですが、海外では必ずしもそうではないんです。

グローバルなブランドの仕事を手がけたこともあるんですが、同じ商品でも、日本の広告は明らかに情報量が多かった。実は日本のパッケージは"ガラパゴス化"しているんです」

各メーカーが続々と見直し...。ポテチに続く「白黒パッケージ商品」大予測
日清製粉ウェルナは「マ・マー スパゲティ」のパスタを束ねるテープを無地のものに切り替えると発表した

日清製粉ウェルナは「マ・マー スパゲティ」のパスタを束ねるテープを無地のものに切り替えると発表した

経済評論家の鈴木貴博氏は、商品のパッケージがカラフルになったのは比較的最近のことだと指摘する。

「1962年生まれの私が子供の頃のスーパーの棚は、パッケージの色数は少なかったですし、個包装もなかった。『カルビーポテトチップス うすしお味』が発売されたのは1975年ですが、パッケージは色みも今ほど明るくなく、地味ですね。

しかしバブル期から、日本のメーカーはパッケージをどんどん派手にしていった。

仕事を増やしたい印刷会社がメーカーにデザインを無償で提供したりと、モノがあふれていく中で、パッケージで勝負する流れができたんですよ。 

今回のナフサ不足は長期化しないと思いますが、それ以前から、脱炭素の観点から過剰な包装を改めようとする動きはありました。ですから今回の出来事は、日本の『過剰包装文化』が変わるきっかけになるかもしれません」

【スーパーやコンビニの棚が"業スー化"する】

では、どんな商品の包装が見直されていくのだろうか。

「まずは定番品ですね。消費者が中身をよく知っていて、パッケージの情報に頼る必要がないからです。具体的には、日清のカップヌードルやキッコーマンの醤油、ネピアのティッシュペーパーなどは、パッケージが単色のシンプルなものになっても抵抗感は少ないのではないでしょうか。

同様に、冷凍食品も中身の品質がイメージできる商品ならパッケージを見直せるはず。もともとフタが透明な惣菜(そうざい)や弁当なんかも、ラベルの色を削ったり印刷部分を減らしても問題なさそうです」

各メーカーが続々と見直し...。ポテチに続く「白黒パッケージ商品」大予測
カゴメは「トマトケチャップ」のパッケージのデザインを当面の間変更する。右が変更後で、トマトのイラスト部分を減らす

カゴメは「トマトケチャップ」のパッケージのデザインを当面の間変更する。右が変更後で、トマトのイラスト部分を減らす

このほか、多くの消費者がその中身はナショナルブランドであることをわかっているプライベートブランド(PB)商品も、パッケージを簡素化できそうだという。

「逆に、パッケージで情報を伝えなければいけない新商品にとっては厳しい時代になりますね。またシャンプーやリンスなど、ヘアケア品や美容用品もパッケージでは鮮やかな色を使って美しさにつながることをアピールしたいはず。

こうしたトレンドが続くと、日本中のコンビニやスーパーの棚が、シンプルな包装の先駆けである『業務スーパー』のようになっていくと思います」

デザイン会社であり、AI技術を応用したデザイン評価やリサーチを提供するプラグ社の代表で、パッケージデザインについての著書もある小川亮(まこと)氏によると、色数を減らしやすい商品とそうでない商品には特徴があるという。

「感情や感覚に訴える商品のパッケージは色を減らしにくいですね。子供向けのお菓子全般や、フルーツフレーバーのグミやソフトキャンディ、ガム、シズル感が大事なカップ麺などです。

一方で、情報や機能でアピールするものは、色を減らしても受け入れられやすいでしょう。サプリメントやエネルギーゼリー、栄養補助バーといった機能性食品、ティッシュやトイレットペーパーといった日用品が該当します」

また、小川氏によると、ロングセラー商品はそもそもデザインをシンプルにしていく傾向があるという。

「コカ・コーラの赤い缶は、色数が少なくてデザインもシンプルですよね。それは、誰もが知るロングセラーほど『赤い缶=コーラ』のように記号化していくからです。

色だけではありません。ヤクルトの容器やキユーピーマヨネーズの菱形が連なった模様、サッポロ黒ラベルの黒丸に金の星が入ったロゴ、森永チョコボールのキョロちゃんなども印象に残っていると思います。

こういった容器や模様、ロゴやキャラクターも記号です。そして色以外の記号は白黒でも機能しますから、記号化できている要素があるデザインについては色数を減らすハードルは比較的高くないでしょう」

【色や触り心地は味覚に影響する】

しかし、パッケージを白黒にしたら味気なく感じてしまうのも事実。そして驚くことに、パッケージが変われば、消費者の味覚体験も実際に変わってしまうという。料理研究家・作家で、調理科学の第一人者でもある樋口直哉氏が解説する。

「人の味覚に、視覚や聴覚といった別の感覚が影響することは数々の研究で確かめられています。特に色は味覚に影響を及ぼすことが知られています。

例えば茶色は苦みやコクを、赤は辛さを連想させることがわかっていて、おそらくお菓子などのパッケージも、色の効果を想定して作られているはずです」

具体的には、今のパッケージではどういうふうに色が使われている?

「味覚以外の感覚で味を変える方法には大きく2通りあって、本来の味と同じ方向の刺激を与えて強める『同化効果』と、逆に、ギャップで味を引き立たせる『対比効果』とがあります。チョコレートのパッケージを茶色にしてコクや甘みを補強するのは前者ですね。

後者の例だと、同じコーヒーでも、茶色いカップで飲むよりも白いカップで飲むほうが、マイルドな味に感じられることが知られています。カップの白によってコーヒーの黒さが引き立つ一方、予測よりも苦みが弱かった場合、対比効果を生み出すからです。

また、仮に白一色のブラックコーヒー缶を作ったら、消費者が事前に形成する『ミルク感が強そう』という予測を裏切る対比効果が働き、濃くてビターな味に感じられる効果が期待できるはずです」

各メーカーが続々と見直し...。ポテチに続く「白黒パッケージ商品」大予測
日本のコンビニやスーパーの棚はカラフルすぎたとの指摘もある。そのトレンドが逆転し、モノトーンや簡素なパッケージの商品が増えるかも?

日本のコンビニやスーパーの棚はカラフルすぎたとの指摘もある。そのトレンドが逆転し、モノトーンや簡素なパッケージの商品が増えるかも?

そう聞くと、ポテチやチョコレート、缶コーヒーの外装は色数を減らしやすそうだ。

「それと、味覚体験には色だけではなく、素材なども影響します。ざらざらした紙を巻いたクラフトビールの缶は高級感がありますし、同じポタージュもざらざらしたカップで飲むほうが、濃厚に感じます。だから、インクが使えなくてもやりようはあるんじゃないでしょうか」

樋口氏によると、今よりも地味だった、伝統的な包装にヒントがあるという。

「ジュースは紙パックよりもビンに入れたほうがフレッシュ感が出ますし、おにぎりもフィルム包装よりも竹の皮に包んであったほうがおいしそうですよね。

お肉だって、昔は買うと木を削った薄皮に包んでくれたんです。コストはかかりますが、伝統に返るのはひとつの手ですね」

先の小川氏も、インクが使えなくなっても、メーカーが消費者にアピールする手段は残されていると指摘する。

「弊社の、1500万人ほどの消費者のパッケージ評価データを学習させたAIにポテトチップスのデザインを分析させたところ、白黒化に当たって消された通称『ポテト坊や』の存在感が大きく評価されていたことがわかりました。これは残したほうが良かったかもしれませんね。

このように、色以外で消費者が重視していた要素があるはず。それを抽出できれば、色数が少なくても効果的なデザインは可能です」

前出のデザイナーは「パッケージ簡素化」の流れについて、こう漏らす。

「シンプルなデザインって、簡単に見えて難しいんですよ。『無印良品』のような強い哲学が必要ですし、数年前には、コンビニのローソンがPB商品のパッケージをシンプルなものに変更したところ、批判が殺到しました。

日本の消費者はなんだかんだ、情報が多いデザインを好むんです。ですから、パッケージをうまく変更できるところばかりとは限らないでしょうね」

小川氏はこう言う。

「パッケージは世相を映す鏡ですから、色が寂しいパッケージばかり増えると、社会が暗くなると思うんです。皆で知恵を出し合いながら色数が減っても楽しめるデザインは作れるはず。

平和になって再びインクの材料が潤沢になれば、冬が終わって春が来るように、カラフルなパッケージがたくさん出てくると思いますよ」

いつか終わる冬の間だけは、各社のパッケージの工夫を楽しもう。

取材・文/佐藤 喬 写真/時事通信社

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