本作は、ノンフィクション作家・猪瀬直樹氏の著書『昭和16年夏の敗戦』を原案に、太平洋戦争開戦前夜に実在した「総力戦研究所」を題材とした作品。日本が真珠湾攻撃へと突き進む1941年を舞台に、データと分析から「日本必敗」の結論にたどり着きながらも、その警鐘が時代の“空気”にかき消されていった若きエリートたちの姿を描く。
公開にあたり製作委員会は、本作のドラマ版をめぐる係争中の問題に触れつつ、「特定の個人を糾弾したり名誉を毀損したりする意図はない」と説明。「歴史的事実を基にしたフィクションとして、現代にも通じる問題を提示する作品」と位置づけ、「今の時代にこそ観ていただきたい物語として、自信を持って公開する」とコメントしている。
物語の舞台は1941(昭和16)年4月。真珠湾攻撃の8ヶ月前、日本中から選び抜かれた官僚、軍人、民間企業の若きエリートたちが秘密裏に総力戦研究所へ集められる。彼らは日米開戦後の未来をシミュレーションし、米国との戦争が「圧倒的敗北」に終わるとの結論を導き出した。
その予測は、原爆投下を除けば戦後の展開をほぼ言い当てていたとされる。しかし、その提言が採用されることはなく、日本は開戦への道を進むことになる。映画は、なぜ合理的な分析が退けられたのか、そして国を戦争へ向かわせた“空気”とは何だったのかを問いかける。
主演を務める池松のほか、仲野太賀、岩田剛典、中村蒼、三浦貴大、國村隼、佐藤隆太、江口洋介、佐藤浩市ら豪華キャストが集結。理性と感情、正論と忖度の間で揺れ動く人々の葛藤を熱演する。
公開決定にあわせて解禁されたキービジュアルには、総力戦研究所のメンバーたちと、模擬内閣で内閣総理大臣役を担った宇治田洋一(池松)の姿が収められている。鬼気迫る表情を浮かべる池松を中心に、日本の未来を左右する決断に向き合った若者たちの緊張感が伝わるビジュアルとなっている。
予告編では、当時の近衛内閣と総力戦研究所による“模擬内閣”が対比的に描かれ、「机の上で日米開戦か。これは面白いな」という東條英機の言葉も登場。さまざまな立場の人々による緊迫した議論が映し出され、彼らが見つめた“敗戦への道筋”がどのように描かれるのか――。
80年以上前に実在した若き頭脳たちの警告は、なぜ届かなかったのか。『開戦前夜』は、戦争の歴史を振り返るだけでなく、現代社会にも通じる“空気の恐ろしさ”を問いかける作品となりそうだ。
■キャスト・スタッフのコメント
▼池松壮亮
はじめて今作の脚本を読ませていただいた時、知らなかった戦前の敗北の歴史を知り、脈が乱れ、息が詰まり、涙が止まりませんでした。2025年の戦後80年に、自分のできるすべてを今作に捧げたいと願い、毎日祈るように撮影現場に向かっていました。
今作を凄まじい情熱と責任を持って作り上げてくれた石井裕也監督に、感謝と敬意を捧げます。そして大きな使命を共有し、共に闘ったスタッフ、キャストの皆様に心から感謝します。日々あり得ないことが起き続ける世界に、この映画が何ができるのかを考え続け、映画の持つ小さな奇跡を信じ続けました。どうかたくさんの方にこの映画が届いてくれることを願っています。
▼仲野太賀
昭和16年と令和8年。時代も違えばテクノロジーも進歩し、我々の生活は当時とは何もかもが変わりました。
しかし、今作への参加にあたり「総力戦研究所」の存在を知ったとき、過去と現在に共通するある種の「違和感」が浮き彫りになりました。
当時、彼らが対峙していたのは、敵国以上に、抗うことのできない時代の奔流や同調圧力、そして得体の知れない「空気」そのものだったのかもしれません。戦後80年が経過し、社会情勢が不安定さを増す現在、今作が描く不穏さは、決して遠い過去の出来事とは思えないのです。
▼岩田剛典
海軍少佐の村井和正役を演じた岩田剛典です。
個人的なことですが、僕の祖父は予科練に所属していましたので、宿命のようなご縁を感じながら参加させていただきました。
地上波放送では放送されていない未公開シーンを含め完全版の内容です。
ぜひ劇場でお待ちしています。
▼中村蒼
戦後の我々が対米戦争は間違いだったと言うのは簡単ですが当時の「総力戦研究所」に所属していた方がその答えを出すのは相当な覚悟が必要だったと思いますし各自の情報と経験に基づき真剣に議論を重ねたと思います。
正しい知識と情報を基に話し合い導き出した"日本必敗"という答えが"大和魂"というたった一言の精神論で緻密なシミュレーションが無視されて戦争へと進んでしまいました。
どんなに正しい事を言ったとしても歴史の空気や流れには決して勝てないという事はさまざまな組織でもある事だと思うので共感できるところは多々あると思います。
多くの命が奪われてしまった出来事を忘れないためにも多くの方に届いてほしい作品です。
▼三浦貴大
撮影当時、すべての俳優が議論を交わし作品に向けて一つになっていたように思います。
そういった面でも稀有な作品です。
映画として公開されることになり、今、他人事ではなくなった戦争について再び考えるきっかけになってほしいと強く願います。
▼國村隼
誰もが望んではいないであろうはずの戦争がなぜ、起こってしまうのか…。
この『開戦前夜』という作品には、かつて日本がたどった、戦争への道筋が描かれている。
当時、世界から孤立していった日本には、本当に戦争という選択肢しか残されていなかったのだろうか?
世界は、“あの時”に戻っているのではないかと思いたくなる様相で、だからこそこの作品は生まれ、いまここにあるのだろう。
▼佐藤隆太
今回、久しぶりに石井監督と再会できたことが何よりうれしかったです。参加初日から石井組ならではの心地よくも鋭い緊張感が張り詰めた現場に、その場にいた役者たちが武者震いをしているようでした。あの場で生まれたひとつひとつの呼吸までもが伝わるような、研ぎ澄まされた作品になっていると思います。多くの方に受け止めていただきたいです。
▼江口洋介
開戦前夜、日米開戦に向けてのたくさんの書物に目を通し、総力戦研究所や陸軍省軍務局について学び、スタッフキャストと共にこの作品に魂をかけて臨みました。
静かに広がる同調圧力、後戻りができない恐怖、身動きが取れない時代の空気は、現代にも通ずるものがあると感じます。
なぜ日米開戦は起こったのか、たくさんの命がなぜ失われたのか、ぜひ、劇場で観ていただきたい作品です。
▼佐藤浩市
当時は国にへつらう論調のあった新聞。
それに踊らされアメリカを叩けと吠える民。
一周回って、それを世論として看過できずにチキンレースに出ていく国。
戦争という最大の人災が起きる不幸のトリニティが生み出される瞬間、それが開戦前夜。
二度と繰り返してはならないと誰もが思っているのに世界のどこかで起きている戦争。
日本は未来永劫、戦後でなければならない。
▼監督・脚本:石井裕也
日米開戦直前、日本社会に不気味に漂っていた「空気」は、確実に引き継がれて現代にも存在します。
日本を代表するキャスト、スタッフと共に今この作品が作れたことの大きな意義を感じています。
▼原案:猪瀬直樹
僕が『昭和16年夏の敗戦』を取材・執筆していたのは30代前半でした。総力戦研究所の研究生たちも30歳から35歳。だからこそ、自分がその場にいたらどうだったか、どう行動したかと自問しながら書くことができた。
当時、第一期生は70代後半くらいになっていました。直に会って、日本が「空気」に負けた、生々しい瞬間を聞き取りました。彼らがどういう気持ちでいたのか、なるべく再現したつもりです。僕が描こうとしたのは単に「総力戦研究所がありました」ではなく「昭和16年夏の敗戦」という物語なのです。
そして発表当時から40年以上を経て、石井裕也監督、池松壮亮さんら俳優陣が強い思いを持って映像化を実現してくれました。活字と映像表現は違いますから、脚色が加わることは充分ありえることです。原案作品のテーマをしっかり読み込んでいることが伝わる脚本だったので、僕としては満足です。日本の若き才能に感謝しつつ、「空気」ではなくファクトとロジックによる意思決定の重要性をこれからも訴えていきたい。戦後80年を超え、迷走する日本の未来のために。この映画の公開に期待しています。
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