日本映画では『万引き家族』以来、8年ぶりとなるオリジナル脚本作品となる本作。“少し先の未来”を舞台に、子どもを亡くした夫婦が息子の姿をしたヒューマノイドを迎え入れたことに始まり、想像を超えた〈未来〉に向き合う姿を描く。
主人公の夫婦を演じるのは綾瀬はるかと千鳥・大悟。綾瀬は建築家の甲本音々(こうもと・おとね)、大悟は工務店のの二代目社長、甲本健介(こうもと・けんすけ)を演じている。
そんな甲本夫妻の亡き息子のデータを基に作られたヒューマノイド・翔役に抜てきされたのが、200人を超えるオーディションを勝ち抜いたくわ木里夢だ。
是枝監督は子役のキャスティングについて、「男の子は日によってムラがあるので、何度かオーディションを繰り返す。やるたびに印象が変わるんです」と、その難しさを語る。その中で、「里夢が一番安定していましたし、僕自身もかなり最初の段階からこの子だなと思っていました」と振り返った。
さらに決め手となったのは、大悟との演技だったという。
「オーディションを繰り返す中で、スタッフも『やっぱりいいね』となっていきましたし、大悟さんにも来てもらって実際に芝居をしてもらった時に、彼が圧倒的に良かったです」と絶賛。監督の直感が確信へと変わった瞬間だったことを明かした。
あわせて解禁された本編映像では、健介と翔が「江ノ電ゲーム」で盛り上がる印象的なシーンを観ることができる。
壁に描かれた消えかけの絵を指さす翔。健介は「電車。お前が描いたんや――お前じゃないか」と返す。亡き息子と、目の前にいるヒューマノイドの翔。その境界線に戸惑いながらも、健介は「電車好きやったんや。江ノ電の線路やな」と、もの悲しそうに壁を見つめ、思い出を語り始める。
「4歳になる前に、江ノ電の駅名を全部暗記してな」という健介の言葉に、翔が「僕が?」と気になった様子で聞き返すと、健介は当時を慈しむように、「鎌倉、和田塚、由比ヶ浜」と車内アナウンスの真似を披露。すると、翔も続いて「長谷」「極楽寺」と、江ノ島電鉄の駅名をスラスラと暗唱し始める。その姿に驚きながらも、うれしそうに声を合わせて駅名を唱える健介。
ヒューマノイドでありながら、あまりにも息子らしい反応を見せる翔。ヒューマノイドの翔が家にやってきた当初は、「たまごっちやん」「ルンバやん」などと懐疑的だった健介の心が揺れ動く、切なくも温かな場面となっている。
一方、撮影現場ではヒューマノイド役とは対照的に、くわ木は年相応の無邪気な一面を見せていたという。
是枝監督は「お腹が減って眠いのはもうしょうがないですから」と微笑ましそうに回想。大悟もくわ木について「そういったところが自分を自然にさせてくれました。もし、すごく良くできた子役で“おはようございます”みたいな台詞を完璧に覚えてこられたら逆に嫌だった」と語っていたという。くわ木の飾らない姿は、父親役の大悟にも好影響を与えていたようだ。
これまでも数々の子役の才能を見出してきたことで知られる是枝監督。映画『誰も知らない』(2004年)で主演を務めた柳楽優弥は同作で史上最年少でのカンヌ国際映画祭男優賞を受賞。その後も第一線で活躍を続けている。また、『万引き家族』(2018年)で注目を集めた城桧吏や、『怪物』(2023年)で存在感を放った黒川想矢、柊木陽太らも映画出演後に活躍の場を広げており、“是枝組”から羽ばたく若手俳優は少なくない(柊木は本作にも出演)。今回の『箱の中の羊』で大役を射止めたくわ木里夢にも、大きな期待が寄せられそうだ。
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