2024年のプロ野球が開幕して1か月と少し経ち、セリーグは連覇を狙う阪神が首位を走っている状況だ。一方、永遠のライバル巨人は大城卓三と小林誠司の扱いが注目を集めている。
なぜなら、阿部慎之助新監督になって最も大きく変わったのが「捕手の起用法」だからである。
本記事では、これまでプロ野球から高校野球まで野球関係の記事や書籍を幅広く執筆している野球著作家のゴジキが、「現在の巨人における捕手運用」について考えてみたい。

“正捕手を固定しないこと”が勝てるチームの鉄則に…巨人・阿部...の画像はこちら >>

守備面が向上している大城だが…

打力が注目されがちな大城だが、ここ2シーズンを見ていると、スローイングやフレーミングと言った守備面でも水準以上のパフォーマンスを残していた。指標だけ見ると、2021年シーズンは阻止率は1位を記録しており、2021年と2022年のDELTA FIELDING AWARDSにも選ばれた。

しかし、データでは見られない課題が存在する。それは、プレッシャーがかかる場面で随所に見られるディフェンス面でのリカバリー力で、小林と比較すると及ばない点でもある。

もちろん、2桁本塁打を見込める点では、起用したくなる心境も理解できる。
そのため、オプションとして2019年のように大城を一塁手として起用するのも一つの手段だろう。

大城と「反対のタイプ」の小林

そして、小林は大城とは正反対のタイプといえる。リードやフレーミング、スローイング、ブロッキングなどの捕手として総合的な守備力は、巨人の中では間違いなくずば抜けて一番だ。現在の球界を見てもトップクラスの実力ではないか。

また、調子が上がらない投手を立て直す“リードの巧みさ”も強みである。記録には残らない部分だが、若手投手や制球に難がある投手には、身体を大きく見せて構える場面もあった。捕手としての頼りがいも小林の武器だからこそ、先に言ったような投手が先発登板する試合では、スタメンマスクで起用するのも一つの手段としていいのではないだろうか。


大城と小林に共通した課題として挙げられるのは、試合に出続けると、攻守に渡りパフォーマンスが落ちること。現状は小林を中心に投手陣をまとめているが、両選手の負担を軽減するために、岸田をはじめとした“第3の捕手”をローテーションに組み込むのも、重要なポイントになるだろう。

近年日本一に輝いた球団は軒並み「捕手運用」が上手い

近年結果を残している球団は、得てして「捕手運用」をバランスよく行なっている。

昨年日本一になった阪神は、坂本誠志郎と梅野隆太郎をうまく併用した。具体的には、坂本のスタメンマスクは76試合、梅野は63試合だった。この2人でシーズンを乗り切った結果、12球団でNo.1の防御率を誇る投手陣を形成できたわけだ。


2022年に日本一に輝いたオリックスも、投手との相性によって若月健矢と伏見寅威の2人体制だった。また、リーグ3連覇を果たした昨年は打力のある森友哉と、リードがうまい若月が均衡して試合に出ていた。

阪神とオリックスの事例から透けて見えるのは、現代野球における捕手のポジションは、投手と同様に柔軟に起用を考えなければならず、それができないと勝てないこと。

思い返せば、「2019年の巨人」は大城、小林、炭谷銀仁朗の3選手をうまく起用していたものだ。それぞれが高いパフォーマンスを維持し、リーグ優勝を果たした。

大城と小林には、良きライバルとして互いに切磋琢磨してほしい。
1人の正捕手にこだわる時代でもないからこそ、併用で生まれる“相乗効果”に大きな期待がかかっている。

<TEXT/ゴジキ>

【ゴジキ】
野球評論家・著作家。これまでに 『巨人軍解体新書』(光文社新書)・『アンチデータベースボール』(カンゼン)・『戦略で読む高校野球』(集英社新書)などを出版。「ゴジキの巨人軍解体新書」や「データで読む高校野球 2022」、「ゴジキの新・野球論」を過去に連載。週刊プレイボーイやスポーツ報知、女性セブンなどメディアの取材も多数。Yahoo!ニュース公式コメンテーターにも選出。
日刊SPA!にて寄稿に携わる。Twitter:@godziki_55