東大では少数派の貧困家庭
入学者のうち半数近くが世帯年収950万円以上といわれている東京大学。現役東大生の私は、「入学祝いにオメガのスピードマスターを買ってもらった」「毎年年末年始は必ず海外に2週間以上旅行に出かける」など、裕福な家庭ならではのエピソードを多く耳にします。ですが、中には私のように、比較的年収が低い世帯から苦学の末に東大に入った方もいます。
その中で「自分の家は裕福か、貧乏か」と質問したところ、富裕層が多数派を占める中でも、一部印象的な貧困エピソードがあがってきました。今回は、私を含め東大生が経験してきた貧困の実態を紹介します。
「10円安いスーパーまで自転車を5キロ以上漕がされた」
まずは私の経験から。私は東京都足立区の生まれで、都内としては低水準となる年収300万円台の家庭で育ちました。両親は私にはなるべく「貧困家庭に生まれた」自覚が起きないように育ててくれましたが、振り返ると当時の生活の苦しさを象徴するような日常が浮かび上がってきます。あとから母に聞いた話では、当時の食費は家族三人で一か月2万円台。
当時はまだ体も小さく、子ども用の小さな自転車をこぎながら、必死に母の後をついて回っていました。私は今でも自転車に乗ることが趣味なのですが、その原体験は、貧困に追われて町中を駆けずり回った、当時の自転車乗り体験であるように感じます。
「今月の給料がまだだからクリスマスプレゼントを買うのが間に合わなかった」と泣いて謝られた
子どものクリスマスプレゼントなんて、親からすれば何においても買いたいものだと思いますが、その1万円すらも用意する余裕がなかった。
とはいえ、人気のゲームソフトなどを持っていないと、クラス内での人間関係に支障をきたす可能性があります。昔は「ゲームなんかで切れる人間関係は本当の友達じゃない」なんて言われましたが、ゲームが共通言語になった今の時代では、時代遅れも甚だしい発言でしょう。
これをきっかけにクラス内で浮いてしまい、いじめにあってしまうリスクなども考えると、はやりのおもちゃを子どもに買い与える重要性は高い。今回のケースではプレゼントが用意できませんでしたが、親御さんには相当な後悔とプレッシャーがのしかかったことでしょう。
東大は富裕層のものなのか?
いかがでしたでしょうか。今回100人中53人がそれぞれのエピソードを答えてくれましたが、貧困を感じた話が8件しか集まっていないのに対して、45件はすべて「裕福エピソード」。
やはり、東京大学は富裕層が通う大学であると、再認識させられます。貧困家庭出身者にとっては、立身出世に一番近い道である東大入試。もっと、貧困層の家庭にも親しみ深いものになってくれるよう願うばかりです。
―[貧困東大生・布施川天馬]―
【布施川天馬】
1997年生まれ。