ビジネスシューズの製造販売を行うリーガルコーポレーションが大規模なリストラ策を発表しました。50人の希望退職者の募集をかけ、主力のビジネスシューズを製造する子会社の操業を停止。
在籍していた63人が退職することとなったのです。革靴は10年以上前から売れなくなっていました。そこにコロナの襲来で需要が急減。リーガルの業績を直撃しました。
リーガルが大規模リストラ。老舗が直面する「革靴離れ」…20代...の画像はこちら >>

リストラ費用が嵩み、純益は低迷

リーガルは2026年3月期の通期純利益を、従来予想の8億円から3億6000万円に55.0%引き下げました。リストラ策に必要な特別退職金と再就職支援に関連する費用が嵩んだため。当初は投資有価証券の売却をリストラ費用に充当するという計画だったものの、通期予想を下回る結果となりました。

リーガルは構造改革にも取り組んでおり、分散していた各事業の業績責任を統一。迅速な意思決定や戦略実行ができる体制を整えました。また、企画・製造・調達を一体化し、ブランド価値の最大化を図るといいます。リーガルの2026年3月期の通期売上高は、229億円を予想しています。2020年3月期は291億円でした。足元の売上はコロナ禍が本格化する前の8割にも届いていません。


「ロイヤルカスタマー」は戻ってきたものの…

市場調査を行うクロス・マーケティングは、ビジネスシーンにおけるスニーカー利用に関する調査を行っており、「ビジネスの場面でのスニーカー着用に対する気持ち」において「スニーカーは避けたほうが良いと思う」との回答は20代が22.7%、50代は32.7%でした(「スニーカーに関する調査」)。コロナ禍で企業のリモートワーク化が進み、若い世代を中心にカジュアルな服装で仕事をすることへの抵抗感は薄れています。

リーガルの2020年3月期の直販売上は147億2000万円で、2025年3月期が145億7300万円。直販の売上はコロナ前と近い水準まで回復しています。一方、卸売の売上は2020年3月期が143億7700万円で、2025年3月期が89億6800万円。卸売による売上の4割近くが、コロナで吹き飛んでしまいました。

卸売は百貨店やセレクトショップ、シューズ専門店などに販売するもの。リーガルの直販店やECサイトを利用するような、ロイヤルカスタマーはコロナ禍を挟んでもリーガルブランドに引きつけられている様子がわかります。しかし、百貨店や小売店は、市場の変動を真正面から受けます。リーガルの苦境は卸売に依存していたことにあるのです。

Z世代向け新商品が大きな課題に

リーガルは中期経営計画において、データを活用して顧客との接点を増やし、顧客生涯価値の向上に努めるという青写真を描いていました。顧客生涯価値とは、顧客一人が一生のうちにリーガルの商品をどれだけ購入するのかを示すもの。翻ってそれが企業の収益基盤になります。

その取り組みにおいて重要なカギを握っていたのがZ世代。
顧客生涯価値を引き上げるにあたって外せないのが、若い世代の取り込みだからです。Z世代は1800万人程度いると推定されており、市場の大きさにおいても十分な魅力を持っています。リーガルは「新たなカテゴリの創出」を行うとしていました。

先ほどのクロス・マーケティングの調査において、20代が「ほぼ毎日」スニーカーを履く割合は45.5%。週1回以上は70%を超えます。こうした市場動向を考慮すると、ビジネスシーンで使えるスニーカーの開発が視野に入るでしょう。

しかし、仮に若年層に向けたビジネススニーカーを開発しようとしても、ヒットにまで押し上げるのは簡単ではありません。デザインや機能性をニーズにフィットさせるのは至難の業だからです。しかもリーガルは卸売の依存度が高かったため、顧客との接点が十分にあったとは言えません。

2016年にアメリカで誕生したスニーカーメーカー「オールバーズ」は、一時企業価値が40億ドルまで跳ね上がりました。しかし、今年3月に3900万ドルで売却されたことが話題になりました。環境に優しい素材で作ったスニーカーは、一時シリコンバレーの制服などともてはやされました。
強力なブランドを築き上げたものの、実際に使う人の満足度は低かったと言われています。こうした事例を見ても、スニーカーで新たなポジションを築くのがいかに難しいのかがわかります。

「オーダースーツSADA」に学ぶべき?

シューズメーカーでV字回復を遂げた企業にアシックスがあります。競技用のランニングシューズに経営資源を集中し、学校指定用品や野球用品事業を縮小しました。増収を支えているのが「オニツカタイガー」で、インバウンド需要の旺盛に取り込んでいます。しかし、この成功事例をリーガルに移植することは難しいでしょう。アシックスは市場が堅調なスニーカーという土俵で戦っているからです。

V字回復のヒントになりそうなのが、オーダースーツのSADA。SADAは2024年7月期の売上高が42億6000万円で、創業以来過去最高を記録しました。コロナ前の2019年7月期の売上37億8000万円を大きく上回っています。スーツもビジネスシューズの市場とよく似ています。もともと需要が停滞していた中で、コロナ禍が拍車をかけたのです。


SADAは社長の佐田展隆氏がメディアへの露出量を積極的に増やしました。従業員が自社製品に対して自信を持つことと、消費者へのブランド認知を獲得するためです。佐田氏は自社製のスーツに身を包み、登山を楽しむ姿を自身のSNSで頻繁に公開しています。写真そのもののインパクトが強いうえ、SADAのスーツがタフであることも一目でわかります。機能性や品質が優れていることを自ら証明しているのです。

リーガルの製品力の高さは、直販の売上が下がっていないことが雄弁に物語っています。露出量を増やし、製品力の高さをアピールすることが業績回復の近道になるのではないでしょうか。

<TEXT/不破聡>

【不破聡】
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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