19日に中山競馬場で開催される皐月賞。今年は近年まれに見る大混戦の様相を呈している。

 フルゲート18頭のうち半数の9頭が重賞ウイナーで、2歳G1を制したカヴァレリッツォロブチェンも参戦を予定。しかし無敗馬は皆無だ。展開次第で、どの馬が勝ってもおかしくない実力伯仲の一戦となるだろう。

重賞馬9頭が集結した“近年まれに見る大混戦”の構図

<皐月賞>「困ったときの外国人騎手」は正しい?過去2年は「モ...の画像はこちら >>
 予想は難解を極めるが、困ったときは“とりあえず外国人ジョッキーを買っておけばいい”という考えもあるだろう。

 実際に皐月賞は外国人騎手の活躍が目立つレースで、これまでM.デムーロ騎手が最多4勝を挙げているほか、C.ルメール騎手も1勝している。

 昨年は短期免許で来日したJ.モレイラ騎手が2番人気のミュージアムマイルに騎乗し、大本命のクロワデュノールを撃破。モレイラ騎手は2年前にも7番人気の伏兵コスモキュランダを2着に導いている。

 今年の皐月賞にモレイラ騎手は不在だが、オーストラリアの名手、D.レーン騎手が短期免許で来日する。しかも大一番でコンビを組むのは、昨年の朝日杯FSを制したカヴァレリッツォ。鞍上の存在も手伝って、このコンビを本命に推すファンも少なくないはずだ。

モレイラとレーンを“同一視”していいのか?

 ファンの間では、モレイラ騎手と同じく、レーン騎手も“乗れる外国人ジョッキー”という評価を受けている。ここは黙って買いが正解かもしれないが、そう簡単にモレイラ騎手とレーン騎手を一緒くたにすべきではない。

 マジックマンの異名を持つモレイラ騎手は、2014年の初来日からJRA通算227勝を挙げている。2019年が初来日のレーン騎手も同186勝を挙げており、どちらも“超優良助っ人”として、その騎乗技術は折り紙付きだ。


 JRAでのG1勝ち鞍を比べると、レーン騎手が6勝、モレイラ騎手は5勝。レーン騎手が上回っているが、JRA通算の勝率や連対率などは「モレイラ>レーン」という傾向が出ている。

【J.モレイラ vs. D.レーン JRA通算成績】
J.モレイラ:227-140-81-310/758 (29.9%/48.4%/59.1%)
D.レーン:186-113-99-396/794 (23.4%/37.7%/50.1%)

※()内は左から勝率/連対率/複勝率

 さらに昨年以降のG1だけに絞ると、レーン騎手は来日してすぐの天皇賞・春を1番人気のヘデントールで制したものの、その後は【0-0-0-10】とサッパリだった。人気馬に騎乗する機会が限られていた部分もあったとはいえ、G1ではやや精彩を欠く騎乗も目立っていた。

 一方のモレイラ騎手は、昨年春のG1シリーズで固め打ちを見せるなど、年間を通じて5戦3勝。乗れる外国人ジョッキーとして、両者を“同等”に見る向きもあるが、2人の間には小さくない差がある。

 さらにレーン騎手は地元オーストラリアでもここ数年の成績が下降気味だ。2023年からの年ごとの勝率を見ると、21%→19%→18%→16%と、4年間で5ポイントも下げている。

 つまりレーン騎手には以前ほどの信頼感がないともいえるだろう。外国人ジョッキーだからと、安易にカヴァレリッツォの評価を上げるのは早計だ。

ルメール騎手は連敗とパートナー不安で評価が揺らぐ

 では、皐月賞に参戦するもう一人の外国人ジョッキー、C.ルメール騎手はどうか。ルメール騎手は10年以上も前にJRAの通年免許を取得しており、日本人ジョッキーとして扱うべきかもしれないが、やはりG1では驚異的なパフォーマンスを発揮し続けている。

 今年は全国リーディング首位を独走しているだけでなく、フェブラリーS、高松宮記念とG1を連勝。
大レースで勝負強さを見せつけた。

 ところが、その後の大阪杯と桜花賞は見せ場なく連敗を喫し、その勢いはやや影を潜めている。そして、皐月賞でコンビを組む肝心のパントルナイーフも中間に一頓挫あったため、やや評価を下げているのが現状だ。

木村厩舎の急失速が影響…有力2頭に漂う“不安要素”

 そのパントルナイーフを語る上で欠かせないのが、管理する木村哲也調教師の不振ぶりだろう。若くしてイクイノックスなど多くのG1馬を育て上げてきた木村師だが、昨年の有馬記念で“ゴタゴタ”があってからは考えにくい不調に陥っている。

 昨年は全国6位の44勝を挙げた木村厩舎が、先週末までに挙げた今年の勝ち鞍はわずか3勝。昨年は23.0%だった勝率も今年は6.7%という低空飛行が続いている。3勝のうちの2勝が重賞(シンザン記念、フェブラリーS)と、持ち前の勝負強さを見せているが、そのフェブラリーSを最後に約2か月間も勝利から遠ざかっている。

 今年の皐月賞に限っていえば、カヴァレリッツォとパントルナイーフの2頭はやや評価を下げるのが得策かもしれない。

混戦に割って入る?3頭の穴候補

 そんな2頭に代わって、リアライズシリウス、フォルテアンジェロ、アスクエジンバラの3頭を高く評価しておきたい。

 リアライズシリウスはメンバー唯一の重賞2勝馬で、おそらく4番人気以内には推されるだろう。右回りを不安視されているが、何といっても頼もしいのは、鞍上を務める津村明秀騎手の存在だ。今年すでに自己最多に並ぶ重賞4勝を挙げており、今最も勢いのあるジョッキーの一人である。


 フォルテアンジェロは1勝馬だが、ホープフルS2着の実績が光る。また、鞍上の荻野極騎手は昨年春に結婚を発表したのを機にブレイク中で、今年はリーディングトップ10入りをうかがう勢いで勝ち鞍を重ねている。

 そして最後は福永祐一厩舎のアスクエジンバラ。開業3年目を迎えた福永師は、リーディング順位が1年目から90位→29位→6位と急上昇中。アスクエジンバラは勝ち味に遅いタイプではあるが、一発のある岩田康誠騎手が鞍上ならノーマークにはできない。

 果たしてどの馬が戦国・皐月賞を制するのか。発走は19日15時40分を予定している。

文/中川大河

【中川大河】
競馬歴30年以上の競馬ライター。競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。競馬情報サイト「GJ」にて、過去に400本ほどの記事を執筆。
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