ドジャースの大谷翔平がエンゼルスに所属していた2021年以来、5年ぶりとなる投手専念で試合に出場。今季初めて自責点を許したものの、見事な投球を披露し、チームを勝利に導いた。

5年ぶりの“投手専念”で見せた圧巻のピッチング

 日本時間16日、本拠地ドジャースタジアムで行われたメッツとの一戦。大谷は指定席の「1番指名打者兼投手」としてではなく、先発投手として起用されると、6回を投げメッツ打線を1点に抑え込んだ。
 7回以降は大谷の後を受けたリリーフ陣が粘投。大谷は今季2勝目を挙げ、チームは今季3度目の3連勝を記録した。

 大谷はこの日、メッツの打者22人と対峙。許した出塁は2本の二塁打と2つの四球だけで、レギュラーシーズンでは2023年6月以来となる2桁奪三振(10個)も記録した。

 実は試合前、先発メンバーが発表されたときは、大谷抜きのドジャース打線に対して懸念の声も聞かれた。2年連続で50本以上の本塁打を放ち、打撃は上り調子だった大谷。チームNo.1の長距離砲が自らを援護できないことに不安を覚えたファンもいただろう。

 しかし、終わってみればその心配は杞憂に終わった。

 ドジャースは2回裏にキム・ヘソンの今季1号2ランで先制すると、6回裏にテオスカー・ヘルナンデスが貴重なソロ本塁打で加点。リードを2点に広げると、8回裏に打線が爆発し、一挙5点を挙げた。

 結局、ドジャース打線は4本塁打を含む12安打で8得点。
中盤までメッツ先発のクレイ・ホームズにてこずっていたが、試合後半の集中打は見事だった。

“大谷の代役”ラッシングが躍動

 特に光ったのは、8回にダメ押しとなるグランドスラムを放ったラッシングだ。中軸を担うウィル・スミスの陰に隠れ、2番手捕手としてなかなか出場機会に恵まれないラッシングだが、今季は自慢の打撃が絶好調。試合前の時点で.538という高打率を残していた。

 この日は7番指名打者として大谷の“代役”を務めたラッシング。4打数2安打1本塁打で、ロバーツ監督の起用が的中した形になったといえるだろう。

 他にも1番に入ったカイル・タッカーに今季2号が飛び出すなど、大谷抜きでも破壊力のあるところを見せつけたドジャース打線。これでチームの今季総得点を105としたが、これは両リーグ合わせて2位。1試合平均得点に換算すると5.83で、これは堂々の1位である(※数字はすべて16日現在)。

 ナ・リーグワースト2位の盗塁数(8)や、3番目に多い併殺打(15)など改善できる部分もまだあるが、本塁打、打率、出塁率、長打率など、主要な打撃項目はすべてメジャーでトップ。戦列を離れているムーキー・ベッツが万全の状態で戻ってくれば、さらに得点力はアップするだろう。

 ドジャースが盤石なのは投手陣も同じ。59失点は両リーグ通じて最少で、被打率は30球団で唯一の1割台(.199)を誇る。
防御率3.16の先発陣だけでなく、昨季はアキレス腱といわれた救援陣も防御率3.24と立て直しに成功している。

開幕ダッシュ成功で見えてきた“シーズン116勝超え”の可能性

 投打がガッチリとかみ合っていることもあり、ドジャースは今季いまだ連敗がない。14勝4敗と貯金の数もすでに10に到達しており、勝率.778はもちろん両リーグ最高だ。

 当然この勝率をシーズンの最後まで維持するのは至難の業ではあるが、期待したくなるのがあの金字塔である。

 それがちょうど四半世紀前にイチロー氏率いるマリナーズが達成したシーズン116勝の大記録。2001年、イチロー氏が加入したマリナーズは開幕から快進撃を続け、1906年のカブスに並ぶ歴代最多のシーズン116勝を挙げた。

 昨季のドジャースを含めてシーズン116勝を狙えそうなチームはその後も何度か現れたが、その数字に達したチームはいない。

 ドジャースが今の勝率を維持すれば「126勝ペース」となるが、それは現実的ではないだろう。もし残り試合を2勝1敗ペースで行ったとしても110勝にしかならず、116勝超えを果たすには、残り144試合で103勝しなければいけない。勝率に換算すると.715となるが、これだけでもその難易度の高さがわかるはずだ。

ピタゴラス勝率が示すドジャースの“圧倒的な強さ”

 ちなみに、チームの総得点と総失点から見込まれる勝率を導く“ピタゴラス勝率”という指標がある。当然だが、攻撃力と投手力の両方が高ければ高いほど勝率が上がるわけだが、今季のドジャースはこのピタゴラス勝率が.760。実際の勝率.778と大きく変わらない。


 つまり、現在の14勝4敗という成績は、実力通りであり、今後もこのペースで勝ち続けても何ら不思議ではないということである。

 昨季は116勝超えを期待されるも、ナ・リーグ3位の93勝に終わったドジャース。今季こそ前人未到の領域に足を踏み入れることができるか。目下126勝ペースを誇る王者の今後の戦いぶりにも要注目だ。

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
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