「痛風が怖いので、イクラやタラコは控えています。卵もやめたほうがいいですよね」
診察室で、健康診断などで「高尿酸血症」を指摘された男性(ほとんど男性です)からよく聞く言葉です。


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痛風は、血液中に増えた尿酸が結晶になり、関節に強い炎症を起こす病気です。足の親指の付け根が赤く腫れ、靴下が触れるだけでもつらく文字通り、風が当たるだけで痛い。あの痛みを思えば、「とにかくプリン体は避けなければ」と考えるのは自然なことです。また尿酸値が高い状態を放置すれば、動脈硬化が進行し心筋梗塞などの重大な心血管疾患リスクが上昇するため、痛風発作後はもちろん、慢性的な高尿酸値への対応が重要であるのは間違いありません。

ただ、そこで真っ先に卵やイクラを敵にしてしまうのは、少しもったいない。痛風対策は、世間のイメージだけで食品を仕分けすると、簡単に優先順位を間違えます。

卵と魚卵は、イメージほど「高プリン体」ではない

痛風対策で「イクラは控えています」の落とし穴。魚卵より恐るべき“意外な飲み物”とは
※写真はイメージです(写真/Adobe Stock)以下同
そもそもプリン体は、細胞の核(核酸)や、エネルギー物質(ATP)などに含まれる成分。ですので、細胞がぎっしり詰まった食品や内臓、また水分が飛んで成分が凝縮された乾物、だしになるような旨味の強い食品に多い傾向があります。

では、鶏卵はどうだろうか? 実は、鶏卵は、全体で1つの巨大な細胞のようなもので、肉や魚のような「細胞の集合体」ではない。そのためプリン体は非常に少なく、食品中のプリン体を調べたデータでは、なんと鶏卵は100gあたり0.0mgでした。少なくとも、痛風対策のために卵を最優先で避ける理由は乏しいと言えます。

魚卵も、ひとまとめに「危険」とみなすのは危険。同じデータでは、イクラは100gあたり3.7mg、すじこは15.7mg、数の子は21.9mgでした。
高尿酸血症や痛風の食事療法では、食事由来のプリン体は1日400mg未満が一応の目安とされています。この数字で見れば、イクラや数の子を少し食べた程度で、それだけが大きな問題になるとは考えにくいことが分かります。

ただし、魚卵は全部同じではありません。タラコは120.7mg、明太子は159.3mgで、イクラより多めです。とはいえ、毎日山盛りで食べるなら危険ですが、通常の食べる量を考えれば、これも危険視しすぎる必要はないように思えます。

むしろ注意したいのは、白子やレバー、煮干し、かつお節、干物のような食品。たとえば白子は100gあたり305.5mgと高値でした。同じ魚介系でも、こちらのほうがよほど警戒すべきです。

尿酸値は食事だけで決まるわけではない

痛風対策で「イクラは控えています」の落とし穴。魚卵より恐るべき“意外な飲み物”とは
居酒屋で乾杯
もちろん、「では食事は関係ない」というわけではありません。

実際、約4万7000人の男性を12年間追跡した研究では、肉や魚介類の摂取が多い人の痛風リスクは1.4~1.5倍に増える一方、乳製品の摂取が多い人は痛風発症のリスクが半分にまで低下しました。特にスキムミルクなどの低脂肪乳製品でその影響が顕著でした。逆に、いわゆるプリン体の多い野菜や総蛋白摂取は、明確なリスク上昇にはならないことも分かりました。

ただ、「尿酸値は食事だけで決まる」と考えるのは正確ではありません。
世界的な医学誌『BMJ』に掲載された約1万7000人の解析では、63種類の食品を考慮しても、尿酸値の個人差を説明できたのは4.29%だった一方、遺伝子(体質)による影響は23.9%であり、つまり尿酸値が高い、低いは、食事より体質による影響が圧倒的に大きいことが分かります。

尿酸値という数字は、食事だけでなく、遺伝、腎機能、体重、飲酒、環境など複数の要因で決まります。「痛風は食生活が乱れている人に生じる」と考えるのは短絡的な考えかもしれません。

ちなみに同じ解析では、ビール、蒸留酒、ワイン、ソフトドリンク、肉類などは尿酸値が高い方向に、卵、スキムミルク、チーズなどは低い方向に関連していました。

魚卵より恐るべきものは!?



痛風対策で「イクラは控えています」の落とし穴。魚卵より恐るべき“意外な飲み物”とは
ソフトドリンク
では、実際に何から見直すべきか。診療で先に確認することが多いのは、食べ物より実は飲み物。

男性約4万6000人を12年間追跡した研究では、砂糖入りソフトドリンクを1日2杯以上飲む人は、月1杯未満の人に比べて、痛風リスクが1.85倍に上昇しました。また果糖(フルクトース)の摂取量が多い人は、少ない人に比べてリスクが約2倍になりました。さらに、一見健康に良さそうに思えるフルーツジュースでも1日2杯以上の群で1.81倍のリスク上昇となりました。

果糖は代謝の過程でATPを消費し、尿酸産生を進めます。朝のジュース、甘い缶コーヒーや、エナジードリンクにスポーツドリンク。

こうした「飲む糖」が、時々食べる魚卵よりも問題になっている人が多い印象があります。

もちろん、果物を摂取することが高尿酸血症に直接悪いわけではありません。
丸ごとの果物には食物繊維やビタミンが多く含まれているし、咀嚼するため食べる量も限られ、食する時間も必要になります。問題となりやすいのは、液体で一気に摂取する習慣です。「健康のため」と思って毎朝ジュースを飲んでいるなら、一度見直す価値はあるかも。

我慢の前に、優先順位を見直す

痛風対策で大事なのは、禁止リストを増やすことではない。

卵やイクラを控えるより、甘い飲み物を減らす、飲酒量を見直す、白子やレバー、高プリン体の乾物を続けて食べない。体重を増やさない食生活や十分な飲水を心がける。こちらのほうが、ずっと現実的かもです。

イクラを我慢しているのに、毎朝ジュースや砂糖入りのコーヒーを飲んでいては本末転倒。痛風対策は、「何を怖がるか」ではなく、「何から変えるか」が重要なのです。

<文/岡本宗史>

参考資料
1. Choi HK, et al. Purine-rich foods, dairy and protein intake, and the risk of gout in men. N Engl J Med. 2004;350(11):1093-103.
2. Kaneko K, et al. Total purine and purine base content of common foodstuffs for facilitating nutritional therapy for gout and hyperuricemia. Biol Pharm Bull. 2014;37(5):709-21.
3. Major TJ, et al. Evaluation of the diet wide contribution to serum urate levels: meta-analysis of population based cohorts. BMJ. 2018;363:k3951.
4. Choi HK, Curhan G. Soft drinks, fructose consumption, and the risk of gout in men: prospective cohort study. BMJ. 2008;336(7639):309-12.

【岡本宗史】
東京大学大学院医学系研究科を修了後、埼玉県のクリニックにて実臨床に従事。「健康・エイジングケア」に関する知見を、医学的視点から紐解き、メディアやSNSを通じて多角的に発信している。フジテレビ「ホンマでっか!?TV」評論家 等。

Instagram:@soshi_okamoto
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