100敗続きだった両球団の対照的な歩み
ホワイトソックスは村上宗隆の活躍などもあり、ア・リーグ中地区で首位争いを繰り広げる好調ぶり。残念ながら村上は負傷者リスト入りしてしまったが、主砲の戦線離脱後も勢いは衰えていない。一方で、ロッキーズは今季も低迷。24勝39敗の成績は、ジャイアンツ、エンゼルスと並び、両リーグワーストである。
諸悪の根源はもちろん投手陣だ。打者天国と呼ばれるデンバーが本拠地というハンデを背負ってはいるものの、チーム防御率5.46は両リーグワースト。特に先発陣の防御率6.03は惨憺たる数字だ。
今季の開幕投手を務めた左腕・カイル・フリーランドはここまで1勝6敗、防御率8.06。右のエースと期待されたマイケル・ロレンゼンも2勝8敗、防御率8.01と、そろって目を覆いたくなるような成績を残している。
打者天国クアーズフィールドで見せる驚異の安定感
そんなロッキーズの先発投手陣で孤軍奮闘の働きを見せているのが、メジャー2年目を迎えた菅野智之だ。菅野は昨季、35歳にしてメジャーに挑戦。オリオールズで過ごした1年目は30試合に登板し、10勝10敗、防御率4.64と立派な成績を残した。
オリオールズの本拠地「カムデンヤーズ」も比較的打者有利な球場として知られるが、菅野の新たな本拠地「クアーズフィールド」はその比ではない。標高1600mの高地で打球が異常に飛ぶだけでなく、空気抵抗が少ない分、変化球も曲がりにくくなると言われている。
そんな状況下で、菅野は苦戦することが予想されていたが、ここまで12試合に登板し、5勝4敗、防御率3.98。ドジャースの山本由伸と同じ勝利数をマークするなど、予想を大きく上回るパフォーマンスを披露している。仮に昨季と同じ30試合に先発すれば、12~13勝に達するペースだ。
ほぼ毎試合、試合を壊さずに5~6回を投げ切り、チームで唯一、規定投球回数にも達している菅野。クアーズフィールドで、防御率3点台というのは奇跡に近い数字といっても過言ではないだろう。
防御率と“期待防御率”に大きな乖離が生じる理由
一方で、菅野の投球内容は防御率が示すほど良くないのも事実。それはeERA(期待防御率)と呼ばれる指標を見れば一目瞭然だ。「真の防御率」とも呼ばれるその指標は、投手が制御可能な与四球、被本塁打、奪三振のほか、打球の質などの要素に基づいて予測防御率を算出する。つまり、運の要素を極力省き、実際の投球内容を反映した指標といえるだろう。
今季の菅野の期待防御率は7.48。実際の防御率3.98とは2倍近い差がある。SNS上では「こんな大きな差は見たことがない」と話題になるほどだ。
菅野の成績を詳しく見ても、奪三振率や与四球率、バレル率などは昨季から軒並み悪化。
数字だけでは測れない菅野の勝負強さと投球術
それでも何とか3点台に抑えられているのは、好守などに恵まれている部分もあるが、持ち前の粘り強い投球で要所を締めている部分もあるだろう。例えば、昨季ア・リーグワーストとなる33本の被弾を許した菅野だが、今季もここまで11被弾と多くの本塁打を許している。ただし、そのすべてが走者なしの場面。つまりダメージを最小限に抑えていることがわかる。
被打率を見ても、走者なしの時は.286と高いが、走者あり時は.200(得点圏時は.224)と要所で粘る投球をしている。
また、本塁打を除くインプレーの打球のうち安打となった割合を示す「BABIP(Batting Average on Balls In Play)」は.258と低く、運に恵まれている面も確かにある。ただ、それも熟練の投球術による結果と言い換えていいのではないだろうか。
「2年目の余裕」も好調の要因に?
そして、2年目を迎えて気持ちに余裕を持って投げることができていることも、好調をキープしている要因と言えるだろう。1年目の昨季は、ピッチクロックへの対応が必要だった。昨季と今季の走者なしの場面における投球間の間隔(注:球を受けてから投球の間隔ではなく、投球と投球の間隔)を比べると、昨季は15.9秒。これが2年目の今季は18.6秒と、3秒近くも延びている。
期待防御率の高さから、今後は成績が下り坂になることも想定されるが、菅野には巨人時代から培ってきた投球術がある。データでは表し切れないベテランの技で、今後も期待値を覆す投球を続けられるか注目だ。
文/八木遊(やぎ・ゆう)
【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
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