「代金を払ったのに車が届かず、販売店が夜逃げした」――そんな悪夢のようなトラブルが今、中古車市場で急増している。円安による海外勢の買い占め、倒産ラッシュ、さらにシレっと出回る“冠水車”の闇まで……。
プロが明かす、中古車業界の危険な裏事情と騙されないための自衛策とは?

「お金を払っても納車されない」ケースが増加中

「金を払ったのに納車されない」中古車販売店の“夜逃げ倒産”が...の画像はこちら >>
 新車は高すぎるし、中古車は“お金を払っても”手に入らない……。そんなリスクが高まりつつあるのをご存じだろうか? その理由を、ベンツを中心に中古車の買い取り・販売などを行うトラスティコーポレーションの小林大樹氏は、「中古車リセール市場が異常な事態に陥っている」と前置きしながら解説する。

「近年、海外へ輸出する業者や海外顧客へ直接販売する業者が中古車オークションに続々と参入しており、ランクル、ハイエースなどの人気車種を高値で落札していく。ここ10年で30%近くも円安(対ドル換算)が進んでいるので、彼らからすると、日本の車はお買い得なんですよ。中古車が高く売れるのはいいことではあるんですけど、売却を希望される消費者でもおおよその買い取り相場をネットで簡単にチェックできるうえに、複数の業者に一括査定を出すのが当たり前。そのため、中古車の買取・販売を行う業者の利幅は薄くなる一方なのです。10年前は1~2割の利幅を抜くこともできましたが、昨今は1割未満がザラ。消費者はローンを組んで買い取り資金を用意しますが、金利上昇を受けて来年にはローン金利が8%を超えてきそうなので、クルマを持つハードルは一層上がるでしょう」

自動車販売関連の倒産は3年連続で前年超え

 普通乗用車を中心に新車販売価格も右肩上がりが続いている。世界的なインフレを受けて車両の製造コストが上昇しているためだ。おのずと中古車価格も上昇しているため、買い手が見つからず、在庫がダブつく傾向に。

「薄利経営なのに在庫を抱えると、赤字覚悟でオークションに出して現金化を急ぐようになる。それが積み重なると首が回らなくなる。ここ数年で、納車されずにクルマ屋が夜逃げしたというニュースが増えているのはそのため。おそらく、来年にはもっと多くの中古車販売業者が倒産するでしょう。
その割を食うのは、お金を払って納車を待っていた消費者です」

 東京商工リサーチによると、’25年の自動車販売関連の倒産は137件(前年比26.8%増)で、3年連続で前年を上回った。

「委託販売車だけを並べる店もあり、経営悪化の予兆というのは、顧客はおろか従業員でも直前までわからない。弊社では1割の手付金を入れてもらって納車の直前に支払いを済ませてもらいますが、具体的な説明もなしに必要以上に『全額すぐ支払ってくれ』と言ってくる業者は、資金繰りがよくない可能性があるので注意が必要です」

豪雨被害以降、こっそり“冠水車”を売る業者が増加

 異変は倒産だけではない。最近、オークションに冠水車が“シレっと”出品されていたことが問題になったという。

「乾かしてしまえば外観で判別できず、買い取った業者自身が気づかない可能性もある。中古車は、故障時期や過去の修復・水没履歴を完全には把握しにくい商品であり、商品特性上グレーな部分が残りやすい。だから、不正を行おうとすれば行えてしまう業界なんですよ。ウチは販売する際に第三者機関に発行してもらった鑑定書や、万が一のときの補償内容などは細かく説明しています」

 淘汰と高騰が同時に進む今、消費者に求められるのは正しい店選びしかない。

「金を払ったのに納車されない」中古車販売店の“夜逃げ倒産”が急増中…プロが明かす“絶対関わってはいけない業者”の特徴
小林大樹氏
【トラスティコーポレーション 小林大樹氏】
ベンツを中心にした中古車買い取り・販売業を営む。25歳で起業。中古車業界歴18年。YouTubeチャンネル「ベンツ屋さんの社長”審美眼”本来の価値を見抜くch」では業界の裏側を発信中

<取材・文/吉岡俊 池垣完(本誌)>

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