大谷翔平が豪快にバットを放り投げた瞬間、ドジャースタジアムは歓喜に包まれた。2回裏に4点を先制し、反撃への希望が膨らんだのも束の間、待っていたのはまさかの逆転負けだった。

 現地10月15日(日本時間16日)、ドジャースはナ・リーグ優勝決定シリーズ(NLCS)第4戦でブルワーズと対戦。ワールドシリーズ3連覇を目指した王者は、3連敗で迎えた崖っぷちの一戦に4-6で逆転負けし、その挑戦に幕を下ろした。
 大谷が一発を放った時点のスコアは「4-0」。ところが、シリーズの最終成績は「0勝4敗」だった。しかも、ドジャースは4試合すべてでリードを奪いながら逆転で敗れた。

 昨年は同じブルワーズを4連勝で退けたドジャースに、いったい何が起きたのか。

115打席ぶりの一発!大谷が待望の3ランで感情を爆発

 大谷にとって、第4戦の一発は待ちに待った本塁打だった。8月18日を最後に、レギュラーシーズンとポストシーズンを通じて115打席も本塁打がなく、第3戦では6番まで打順を下げられていた。

 右腕と左膝に故障を抱えていた大谷だが、第3戦では四球を選び、強い打球の安打も放った。デーブ・ロバーツ監督はそうした内容を評価し、第4戦では再び1番に戻した。

 そして2回裏、2死一、二塁から待望の3ランを右中間スタンドへ運んだ。打球を見届けると、バットを豪快に放り投げ、両腕を広げて雄たけびを上げた。普段は比較的冷静な大谷が、珍しく感情をあらわにした場面だった。


4点差を守れず…反撃の機会も逃したドジャース打線

 しかし、投手陣が粘れない。先発タイラー・グラスノーは最初の10人を連続で打ち取りながら、4回に2失点。5回にはデービッド・ハミルトンの適時打で1点差に迫られて降板した。救援のエバン・フィリップスは申告敬遠と四球で走者をため、さらにアレックス・ベシアが押し出し四球で同点を許した。

 さらに6回、ギャレット・ミッチェルがタナー・スコットから勝ち越し本塁打。大谷の3ランなどで築いた4点のリードは5回に消え、6回には追う立場となった。

 ドジャースにも反撃の機会はあった。7回裏、1死三塁で大谷に打席が回ったが、空振り三振。続くベッツも凡退し、絶好の同点機を逃した。

 そして9回表にはハミルトンに追加点のソロ本塁打を浴び、4-6で敗戦。2回に4点を奪った打線は、その後の7イニングで1点も挙げられなかった。

 ただ、この逆転負けは、決して第4戦だけの問題ではない。

 ブルワーズは4試合すべてで一度はリードを許しながら、最後には勝利を収めた。
ドジャースの課題は先制する力ではなく、奪ったリードを勝利につなげる過程にあった。

全4試合で逆転負け…自慢の先発4本柱に誤算

 まず誤算となったのが、自慢の先発投手陣だ。

 タリク・スクーバル、山本由伸、ブレーク・スネル、グラスノーの4本柱は、地区シリーズで計21回1/3を投げて4自責点、防御率1.69。しかしNLCSでは、4人ともクオリティースタートを記録できなかった。

 第1戦のスクーバルは5回2失点と試合をつくったが、第2戦の山本は3回途中で降板。第3戦のスネルは7回に捕まり、第4戦のグラスノーも5回を投げ切れなかった。先発陣の投球内容には差があったものの、前年のように投手力で相手を圧倒する展開には持ち込めなかった。

 対照的だったのがブルワーズ投手陣だ。先発投手を長く引っ張らず、救援陣を早めに投入した。第2戦では救援投手が5イニングを完全に抑え、第4戦でも序盤の4失点から立て直し、アーロン・アシュビーが最後の3イニングを無失点に封じた。

地区シリーズから続いていた「ドジャース打線の課題」

 ただし、投手陣の問題だけで4連敗を説明することはできない。

 ドジャース打線の課題は、NLCSで突然表面化したわけでもないからだ。ブレーブスとの地区シリーズ(NLDS)では得点圏での安打がわずか1本。それでも投手陣の奮闘によって勝ち抜いていた。


 ところがNLCSでも得点圏での打撃不振は続き、好機を生かせない場面が目立った。NLDSでは投手陣が補っていた打線の課題が、投手陣の失点増と重なり、失意の4連敗につながった。

リーグ最少本塁打のブルワーズが長打でも圧倒…勝負を分けた攻撃力

 それと正反対だったのが、ブルワーズの攻撃陣だ。

 第4戦はわずか5安打で6得点。四球や盗塁で好機を広げ、必要な場面で長打を放った。しかも、シリーズ全体の本塁打数はブルワーズが7本、ドジャースは大谷の1本だけに終わった。

 レギュラーシーズンでは本塁打数がナ・リーグ最少だったブルワーズが、強打者ぞろいのドジャースを長打力でも上回ったのだから皮肉な話だ。

 その中心にいたのは、シリーズMVPに輝いたバウアーズだった。第4戦では4回に2点二塁打を放ち、5回には押し出し四球を選んで同点に追いついた。

 第3戦でも11球粘った末に逆転2ランを放っている。相手投手に球数を投げさせながら、甘い球は逃さない。ブルワーズの強さを象徴する打者だったといえるだろう。

王者に突きつけられた“勝負どころの差”

 ブルワーズの強さは決して偶然ではない。
レギュラーシーズンでも103勝を挙げ、メジャー最多勝を記録していた。

 昨年のNLCSではドジャースが4連勝し、4試合の総失点はわずか4。しかし今年は21失点で4連敗と、立場が完全に逆転した。

 昨年の第4戦で、3本塁打を放ち、投げても6回無失点、10奪三振という歴史的な活躍を見せたのが大谷である。今年も同じ相手との第4戦で3ランを放ったが、結末は正反対だった。

 試合途中の「4-0」と、シリーズ最終成績の「0勝4敗」。その落差は、ドジャースが4試合を通して抱えていた問題を映し出している。

 先制できても逃げ切れない。好機をつくっても、追加点を奪い切れない。昨年の王者が今年のNLCSで突きつけられたのは、そんな勝負どころの差だった。 

文/八木遊(やぎ・ゆう)

【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。
ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。
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