競馬の歴史には、実績馬が次々と跳ね返されてきた壁がある。今年の天皇賞・秋でも、過去の数字が有力馬たちに不気味な影を落としている。

 11頭が挑んで未勝利。もう一方は110頭が挑んで未勝利。偶然にも10倍の差がある2つのジンクスが、今年の天皇賞・秋を読み解く鍵になるかもしれない。

連覇を狙うマスカレードボールは英国遠征以来の実戦

<天皇賞・秋>マスカレードボールに襲い掛かる「過去40年未勝...の画像はこちら >>
 まず注目したいのは、前年の覇者マスカレードボールだ。

 昨年の天皇賞・秋でG1初制覇を果たし、続くジャパンCでも世界的な強豪カランダガンにアタマ差の2着。東京コースでの実績は申し分なく、今年も優勝候補の筆頭に挙げられる存在である。

 4歳となった今年は海外の強豪に挑んできた。4月の香港クイーンエリザベス2世Cでは、地元の英雄ロマンチックウォリアーに次ぐ2着。さらに7月には英国のキングジョージ6世&クイーンエリザベスSに出走したが、7着に敗れた。

 今回は、その英国遠征以来、約3か月ぶりの実戦となる。

天皇賞・秋で続く「帰国初戦」の難しさ

 ここで注目したいのが、海外遠征(取消を含む)から帰国初戦で天皇賞・秋に臨んだ日本調教馬の成績だ。

 過去40年(1986~2025年)の該当馬は11頭と母数は少ないが、成績は【0-1-0-10】に留まる。3着以内に入ったのは、2005年のゼンノロブロイ(2着)だけだった。

 しかも、11頭のうち7頭は2番人気以内に支持されていた。
2003年のローエングリンはフランス遠征から帰国し、2番人気で13着。2016年のエイシンヒカリも2番人気で12着に敗れた。

 近年も例外ではない。2024年には三冠牝馬リバティアイランドが1番人気で13着、ダノンベルーガも5番人気で14着。昨年は香港のクイーンエリザベス2世Cを制したタスティエーラが、2番人気で8着に沈んでいる。

過去40年の不吉な数字を無視できないワケ

 ただ、海外遠征帰りの馬が全ての国内G1で通用しないわけではない。

 2006年のディープインパクトはフランス遠征から帰国してジャパンCを制覇。2019年のリスグラシューも豪州のコックスプレートを勝った後、帰国初戦の有馬記念を制している。ジャパンCや有馬記念では海外遠征帰りの勝ち馬が出ており、2~3着の好走例も多い。

 同じ秋の古馬G1でも、距離やコース、開催時期は異なる。単純に比較はできないが、海外遠征後の調整には国内とは異なる難しさがあるのかもしれない。少なくとも、天皇賞・秋で帰国初戦を迎えた実績馬が苦戦を重ねてきたことは事実だ。

 マスカレードボールも昨年は国内でレースを重ねて天皇賞・秋を制したが、今年は香港と英国で戦ってきた。
東京芝2000mへの適性は申し分なく、香港でも強豪相手に好走している。それでも、昨年とは異なる臨戦過程だけに、過去40年の不吉な数字は無視できない。

伏兵シェイクユアハートに注目したい理由

 では、前年覇者に対抗するなら、どの馬を狙うべきか。

 目を向けたいのは、札幌記念から天皇賞・秋へ直行するローテーションだ。これまで1997年のエアグルーヴ、2005年のヘヴンリーロマンス、2011年のトーセンジョーダン、2016年のモーリスと、4頭もの勝ち馬が出ている。

 今年はシェイクユアハートが札幌記念を勝ってここに臨む。しかも、その勝ち時計は1分58秒2のコースレコード。昨年末の中日新聞杯、今年春の金鯱賞も制しており、芝2000mの重賞で結果を積み重ねてきた。

 特に金鯱賞は左回りの中京芝2000m。東京とはコース形態が異なるものの、同距離の左回りで重賞を勝っていることは心強い。宝塚記念では14着に敗れたが、続く札幌記念で巻き返した点も評価できる。

6歳馬110頭未勝利…馬番11番は39年連続馬券圏外

 ただし、この馬には前年覇者以上に不気味な数字が待ち受けている。

 過去40年の天皇賞・秋で、6歳馬は110頭が出走しているが、【0-3-5-102】と、一度も勝っていないのだ。


 年長の8歳馬は、1998年のオフサイドトラップと2009年のカンパニーが優勝しているにもかかわらずだ。

 そしてもう一つ、シェイクユアハートを待ち受けるのが、馬番11番のジンクス。過去40年の11番は【0-0-1-39】で、1986年のミホシンザンが3着に入ったのを最後に、39年連続で馬券圏外に終わっている。

 もっとも、馬番の数字だけで能力を測ることはできない。むしろ注目すべきは、昨年末の中日新聞杯から約8か月の間に芝2000mの重賞を3勝している充実ぶりだ。6歳にして迎えた充実期、その勢いを東京でも発揮できるか。

 海外帰り11頭未勝利の前年覇者か。6歳馬110頭未勝利の伏兵か。今年は敢えて11番に入った6歳馬のシェイクユアハートを狙ってみたい。

文/中川大河

【中川大河】
競馬歴30年以上の競馬ライター。競馬ブーム真っただ中の1990年代前半に競馬に出会う。ダビスタの影響で血統好きだが、最近は追い切りとパドックを重視。
競馬情報サイト「GJ」にて、過去に400本ほどの記事を執筆。
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