◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」
東京六大学野球が100周年を迎えた。プロだけでなく各界に多彩な人材を輩出してきたが、このイスに座った人はまだ出ていない。
「将来の夢ですか? 内閣総理大臣です」
そう言い切るのは名門公立校・旭川東出身で、今春から慶大の1番打者で活躍中の今津慶介外野手(3年)だ。あながち夢物語ではない。祖父の寛さん(78)は元衆院議員、父・寛介さん(48)は旭川市長だ。「小学校の頃から父や祖父を見てきて、日本を動かしていく先導者になりたいんです」
社会貢献への思いを行動に移したのは高校時代。20年のコロナ禍で、故郷の観光名所である旭山動物園も休園となった。
「何もしない、という選択肢はなくて」。同級生と2人でクラウドファンディングを企画。プレゼン資料を作り、坂東元園長に訴えた。熱意に園長は耳を貸してくれた。22年1月に応援プロジェクトがスタートし、目標額を大きく上回る1126万円が集まった。
最後の夏は主将として、北北海道大会53年ぶり準優勝の立役者になった。8月に旭川市内でキャンプを行っていた慶大の練習に参加。
野球界では一意専心こそあるべき姿とされてきた。そんな中、社会問題解決と野球上達のWゴールを目指した姿勢は称賛に値する。福沢諭吉が慶応義塾を創設した目的は、人格を備えた社会の先導者を育てること。神宮での学びが、永田町で生きる日は来るのか。まずはバットで神宮の“支持率”を高値安定にさせたい。(アマ野球担当・加藤 弘士)
◆加藤 弘士(かとう・ひろし)1997年入社。編集委員。中2でザ・ブルーハーツ、高2で尾崎豊のライブを体感して、人生が変わりました。