◆第107回全国高校野球選手権新潟大会▽2回戦 十日町13―0高田農=5回コールド=(12日・佐藤池)
大きな雲の隙間から強い日が差し込む中、高田農・長谷川旺希(2年)は自然のスポットライトを浴びているかのように躍動した。「5番・右翼」で先発。
生まれつき右手の指5本とも付け根から欠損しており、右手だけでは何も握れない。打席に構えるときは右手をバットに添えるも、振り抜く瞬間は左腕の力だけ。守備では左手にグラブをはめて捕球した後、瞬時にグラブを外して右腕で抱きかかえ、左投げで送球する。
3つ上の兄・成希さん(19)がプレーする姿を見て幼稚園の年長から野球を始めた。しかし、高田農への入学当初はマネジャーを希望した。母の由美さん(48)は「幼年時代は(右指の欠損を)気にしていなかった。でも成長するにつれて徐々に人と違うところを気にするようになった」と明かした。それでも松嶋純平監督(42)から「おまえは選手だ」と直々に指名を受けると、今では2年ながらチームの主力へ成長した。
終わってみればチームで唯一の安打を放った。「諦めない心が大事」と力を込めた旺希。3年となる来夏は投手にも挑戦するという。高田農に2022年以来の夏初戦勝利をもたらす。(綾部 健真)