◆JERA セ・リーグ DeNA0―3巨人(12日・横浜)

 納得してマウンドを譲った。F・グリフィン投手(29)はスッキリとしていた。

「カード勝ち越しが懸かる試合。監督の判断として、勝つための最善」。無死一塁での交代も、救援陣が無失点リレー。7回途中4安打0封、無四球で球団外国人最多タイの開幕6連勝を記録した。連続イニング無失点は22に伸ばし「調子がよかった。事前の計画通り実行できた」とハマスタで胸を張った。

 初回いきなりの援護3点。「すごく心強い」と、140キロ台後半の直球に手元で動くカットボール、2種の落ち球を組み合わせて的を絞らせなかった。DeNA戦は今季3戦3勝、19回を投げ防御率0・00。同僚に23年から同カード7連勝中の山崎がいるが、こちらも通算4勝無敗。“隠れベイキラー”が本領を発揮した。

 7月時点で早くも23、24年に並ぶ自己最多タイの6勝目を手にした。

11先発で無失点投球は7度目。規定投球回こそ届いていないが、72回自責6、防御率0・75と圧巻のパフォーマンスを続ける。9試合連続クオリティースタート(QS=6回以上自責3以内)でQS率91%だ。阿部監督は「途中(打席で)自打球当ててバランス崩して、最後代えた」と79球での継投理由を明かしつつ「もう完璧だったんじゃないですかね」と不動の安心感を称賛した。

 超がつくほど真面目な性格が、異国での連勝劇を支える。関東圏の球場へ行く際はタクシーではなく、あえて電車通勤を選ぶ。「交通量に左右されないし、日本の電車の効率の良さは本当素晴らしいから」と、正確な時間で移動できる手段を好む。移動時間はフル活用。手にはスマホより本を持っていることが多い。席に座れる時は「分析のため」と対戦打者のデータを詰め込んだノートを熟読している。

 駅や車両で気付かれても「日本のファンは敬意のある人ばかりで、邪魔してくる人がいないんだ」と快適な通勤ライフを送る。「日本の野球や文化に適応したいから」。

推定年俸2億円の助っ人は慢心と無縁で06年パウエル、09年ゴンザレス、16年マシソンに肩を並べた。

 一人で貯金6。自身の記録には「攻撃陣や守ってくれる野手がいての勝ち。自分一人のものにしてコメントするのは控えたい」と目もくれなかった。自打球も軽症で「大事な試合がこれからも続くから、この勢いを持続できるようにしたい」。来日3年目。頼もしさは増す一方だ。(堀内 啓太)

 ◆清水隆行Point グリフィンはもはや“いつも通り”と言っていい安定感だった。右打者には内角にカットボール、外角にチェンジアップと両サイドを幅広く使った投球で、それぞれの質も申し分ない出来だった。

 この日で言えば、初回の3点の援護も大きかった。ボール、ボールと入るケースもあったが、その援護を勇気に大胆にゾーンを攻めてカウントを戻せていた。これが均衡した展開だと痛打を避けるためにどうしてもコーナーを突き続ける投球になり、四球につながる。

7回途中まで無四球でいけたのも、強気を保てた打線の援護のおかげとも言える。(野球評論家・清水 隆行)

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