◆第107回全国高校野球選手権山梨大会▽1回戦 日本航空3―0東海大甲府(13日・山日YBS)

 昨夏の決勝カードがいきなり1回戦で衝突した好カード。東海大甲府はMAX149キロを誇るプロ注目左腕・鈴木蓮吾投手(3年)が8回138球、被安打2、7奪三振1失点の熱投も、打線がふるわず完封負けで姿を消した。

 試合終了後、グランドにしゃがみこみ、両肘をつけて号泣した。仲沢広基監督から「今年は鈴木のチーム。おまえに託した」と言われ甲子園を目指したが、道半ばでの敗戦にショックを隠せなかった。

 猛暑の甲府で力強く腕を振った。「県の1回戦で緊張しているようでは」と強気な心構えでこの日最速147キロの直球を中心に7奪三振。「大事な場面でも三振が取れた」と自身の投球に納得した様子をみせた。

 「にわとりが大ワシを生んじゃった」と誇らしげに語った父・浩一さん。この夏は、東京から毎試合山梨まで駆けつけて応援する予定だった。鈴木は父に向けて「県外の私立で寮に入るのは結構お金がかかったと思う。自分のことを活躍してくれると信じて、この学校に入れてくれてありがとうと伝えたい」と感謝の思いを述べた。

 卒業後の進路はプロ志望を明言。「1回戦で負けて獲ってくれるかわからないが」と謙遜したもの、「上のランクでプレーできたら」と意欲を示した。

この日は巨人、ヤクルト、横浜、ソフトバンクといったプロ複数球団が見守った。ヤクルトの押尾スカウト育成グループアマチュアスカウトは「やわらかさ、しなやかさ、球あしの良さ」と高評価。鈴木の思いはたしかに伝わっている。

 将来は「みんなから応援されて、チームメイトからも最後まで信頼される投手になりたい」と話した左腕。悔しさをバネにして、新たな物語の一歩を踏み出した。

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