◆パ・リーグ 楽天3―5ソフトバンク(13日・楽天モバイル)

 最大のピンチに不敵な笑みを浮かべた。ソフトバンク・前田悠伍投手(19)が6回4安打無失点でプロ初勝利。

「相手の応援も大きくなってきた中で、めちゃくちゃ楽しかった」と振り返ったのは、6回無死一、二塁で村林を迎えた場面。ストレートで三ゴロに仕留めると、ベースを踏んだダウンズから二塁、一塁へと転送される球団11年ぶりの三重殺で切り抜けた。

 3年前の夏も、完全アウェーのような雰囲気に動じず、ニヤリとする姿があった。大阪桐蔭で春夏連覇を目指した2年夏の甲子園。準々決勝の下関国際戦は9回に逆転負け。7回に自軍が三重殺を喫して流れを失ったが、今度はビッグプレーに助けられた。

 プロ2度目の登板で、初登板の屈辱も晴らした。「去年の経験を生かした」と23年のドラフト1位左腕。昨年10月1日のオリックス戦(みずほペイペイ)は3回6失点KOだった。当時から体重は約5キロ増の85キロ。MAX147キロを計測したストレートの球質も向上した。テンポのいい投球は、3連敗中の打線の活気を呼び込んだ。

35イニングぶり得点となる2回の先制点を含め5点の援護を受けた。

 オフはカブス・今永、背番号41を受け継いだメッツ・千賀と、それぞれ合同自主トレ。首脳陣からは目先の開幕ローテを目指して小さくまとまるより、次世代エースとしての強さを求められた。「5年先、10年先」を見据えての取り組みで開幕1軍は逃したが、2軍では圧倒的だった。ウエスタン・リーグのタイ記録となる37回2/3まで連続無失点イニングを伸ばし、昇格のチャンスを勝ち取った。

 「勝てる投手、長くそれを継続できる投手になっていきたい。今の段階では、なれない。満足せずに練習をもっともっとしていきたい」。世代最強と称された男がプロで力強い一歩を刻んだ。(島尾 浩一郎)

 ◆前田悠伍(まえだ・ゆうご)2005年8月4日、滋賀・長浜市生まれ。19歳。高月スポーツ少年団に所属した古保利小6年時にオリックス・ジュニア選出。

湖北ボーイズでプレーした高月中1年時にU12日本代表でカル・リプケン世界大会優勝。大阪桐蔭では1年秋からエース格で甲子園に3度出場し、2年春優勝、夏8強、3年春4強。23年のドラフト1位でソフトバンク入団。179センチ、85キロ。左投左打。年俸1000万円。

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