◆第107回全国高校野球選手権北北海道大会 ▽準々決勝 士別翔雲5―4旭川龍谷(14日・旭川スタルヒン)

 全道10地区で唯一甲子園出場がない名寄地区代表の士別翔雲が、春夏合わせて8度甲子園出場の古豪・旭川龍谷を5―4で下し、2年ぶりの4強入りを一番乗りで決めた。最速145キロ右腕・大橋広翔(3年)が9回148球完投、打っては8回に逆転打を放ちエスコン切符をつかみ取った。

 9回2死一塁。遊撃手のグラブに飛球が収まると、大橋は膝から崩れ落ちた。30度を超える気温の中、1回戦の128球完投から中1日で2試合連続完投勝利。「本当に本当に苦しかった。まずは良かったという気持ちが一番にきた」。試合後は右腕で目を覆いながら、チームメートと喜びを分かち合った。

 序盤から旭川龍谷打線に捉えられる場面が多く、苦しい投球が続いた。6回にこの日初めてのリードを奪ったが、7回は相手の4番・今関康敬右翼手(3年)に直球を捉えられ、左翼スタンドに逆転弾を被弾。再び追いかける展開となった。

 それでも、2度のビハインドをはね返してきた打線が3―4の8回に1死一、三塁の好機を作ると、打席に入ったのは大橋。「ずっと三振でタイミングが合っていなかったので、足を上げずに合わせた。野手が前に来ていたので芯で捉えれば間を抜けると思って、気負いすぎずリラックスできた」。

高めの直球を捉えた打球が右翼手の頭上を越えると、三塁走者に続いて一塁走者の大塚叶夢捕手(3年)も一気にホームイン。「頼む、という気持ちでずっと見ていた」というエースの願いに女房役が激走で応え、勝ち越しに成功した。

 7回からは右ふくらはぎがつり始めていた。守備中に給水のためのタイムを3度取るなど体力は限界だった。最後の力を振り絞って腕を振るエースの姿に、渡辺雄介監督は「彼には酷だったと思いますけど、こういう展開になったら勝っても負けても大橋。限界値を超えて全校応援の中、この暑さの中で1点を守り切るのは並大抵じゃない」と褒め称えた。

 旭川での激闘を終え、21日の準決勝からはエスコンフィールド北海道に舞台を移す。2年前、1年生ながらエスコンのマウンドに立ち、同球場の高校生第1号を被弾している大橋は「(白樺学園とクラークの)どちらが上がって来ても、あそこにある忘れ物を取り返したい。あと2試合も投げ抜きます」と誓った。聖地まで、あと2勝。名寄地区の思いも背負い、北広島に乗り込む。

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