◆第107回全国高校野球選手権西東京大会▽3回戦 杉並5―3日野(15日・府中市民)

 雨が降っても気にしない。「抑えるだけ」と語った日野のエース・小山大陽投手(3年)。

4点ビハインドの8回から登板し2回無失点。「流れを持ってくるピッチングをしたかった」と、得意のコントロールを意識した投球で、杉並打線を抑えた。

 野球は小学2年から始めたが、5年前の中学1年の夏に白血病の診断を受けた。「最初は熱が上がっただけなので、風邪かコロナかな」と思ったが、1週間ほど熱が下がらないので病院に行くと「白血病」の診断を受けた。「なんで俺なんだ」と、悔しさがあふれ出たものの「治すしかない」とすぐに決意を固めた。8か月間の入院生活は、抗がん剤による髪の毛の脱毛症状や、激しい腹痛に悩まされたが、何よりも「学校にも行けず、また当時、コロナ禍ということもあり、家族や仲間の面会が許されなかった」と厳しい時間を過ごした。

 「自分が白血病で入院し始めた時に、ちょうど池江璃花子選手が白血病から復帰されたタイミングだった」と振り返った右腕。「池江選手のような一流のアスリートが白血病から復帰して活躍している姿をみて」勇気をもらい「自分も早く治して、みんなと野球をやりたい。やれば絶対できる」と復帰へ大きな支えとなった。

 本格的に復帰できたのは、中学3年。高校入学時には福島靖監督から「小学生ぐらいの体力しかなかった」と、言われるほどだったが、筋力トレーニングや、1日5食を摂ることで体の基礎を作っていった。すると、1年次から体重が5キロ増え、3年の春にはエースナンバーをつけるまでに成長した。

「入学したころから、1番をつけて甲子園を目指していた」。最後の夏は終わってしまったが、エースナンバーをつけて投げる目標をかなえた。

 現在も3か月に1回定期検査を受けているが「完治。大丈夫」と話した小山。将来は「トレーナーをやりたい」と意気込み、「野球に限らず、選手の支えになりたい」と、これからはアスリートを支える立場としてスポーツへの貢献を誓った。

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