◆第107回全国高校野球選手権秋田大会 ▽3回戦 金足農7―2秋田中央(15日・さきがけ八橋)

 秋田では、2018年夏の甲子園で準優勝し「金農旋風」を巻き起こした金足農が準々決勝進出。当時のエースでオリックス・吉田輝星(24)の弟、背番号1の大輝(たいき、3年)が、プロ4球団のスカウトが見守る中、8回2失点と好投した。

 気持ちがあふれ出た。吉田は自らを叱咤(しった)するように、感情をむき出しにした。1点リードの2回2死三塁。松江隼汰一塁手(3年)の打席で、捕逸で同点とされた。気持ちを切り替えた。ギアを上げて空振り三振に仕留め、雄たけびを上げた。兄・輝星と同じ、真っ白のマウスピースがきらりと光った。

 最速144キロを計測した直球にスライダー、チェンジアップを駆使して8回を3安打6奪三振2失点(自責1)。「低めに球を集めることができた」。103球の熱投で8強に導いた。

 修正力も発揮した。11日の2回戦・由利戦では初回に1安打1死球で走者を出すなど立ち上がりに課題が残った。

「練習から低めを意識し、ブルペンでの投球練習の球数を多くした」。この日は初回を一飛、遊ゴロ、空振り三振とエンジン全開で3者凡退に仕留めた。

 ネット裏には巨人など4球団のスカウトが集結。DeNA・河野スカウトは「ボールが良い。スピンが多く、回転数が2400から2500を計測する」と直球の質を高評価した。

 マウンドでは熱い姿を見せるが、普段は「明るくて面白い。ギャップがありますね」とクラスメートの板橋祐也右翼手(3年)は話す。吉田本人も「雰囲気が違う」とよく言われると苦笑いするが、オンオフをうまく切り替えられるのもアスリートには重要な要素だ。

 昨夏を含めて過去7度の優勝経験を持つが、V翌年はいずれも甲子園出場を逃している。「抑えなきゃいけない場面で抑えられるように」と意気込んだ右腕。同校史上初の連覇を果たし、18年夏の甲子園準V時の「金農旋風」を再び巻き起こす。(北村 優衣)

 ◆吉田 大輝(よしだ・たいき)2007年4月23日、秋田・潟上市生まれ。

18歳。小1時に天王ヴィクトリーズで野球を始める。天王中では軟式野球部。金足農では1年春からベンチ入り。1年秋からエースナンバー。昨夏甲子園は1回戦敗退。179センチ、85キロ。右投右打。家族は両親と兄のオリックス・輝星。

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