◆第107回全国高校野球選手権神奈川大会 ▽3回戦 横浜7x-0川崎北=7回コールド=(15日・平塚)

 神奈川では今春センバツ王者の横浜が7回コールドで4回戦に進出。主将の強打者・阿部葉太中堅手(3年)が決勝二塁打を含む3打数3安打3打点と暴れた。

 派手なガッツポーズも、笑顔もない。横浜・阿部葉は表情を引き締め、次のプレーへ心を整えた。0―0の3回2死一塁。初球だ。外角高めの直球を逆方向へはじき返した。左翼線に転がる先制二塁打になった。

 「流れを変える1本を打ちたかった」。5回1死では中前安打。6回2死二、三塁でも左翼線二塁打を放った。3打数3安打3打点1盗塁と活躍したが、「もっと熱くできる。次があるので、しっかり準備したい」と油断なく前を見据えた。

 本来は明るい好青年。

だが、勝つために鬼になる。前日練習。村田浩明監督(38)は「負けたら終わり、という空気の練習には見えなかった」と、チーム内にわずかなスキがあることに気づいた。あえて猛練習を課し、この日も午前4時起床で打撃練習を行った。5回を終えて2―0の僅差。指揮官は訴えた。「夏、ここで終わるのか?」。主将の思いも一緒だった。

 「勝ちボケじゃないですけど、調子に乗ってしまった部分があった。そこの鼻をへし折って、全員でもう一回やっていけたら」。苦しい役割だが、「そこを言ってこそチームはできていく。嫌われる覚悟は必要」。

全ては夏を制するためだ。

 プロ注目の存在だが、自身の進路にも初めて言及。進学の意向を示し「さらにレベルアップしていきたいなと思います」と4年後のプロ入りに照準を絞った。ひたむきに頂点だけを見つめ、仲間と過ごす最後の夏。「負けたら終わりともう一回、全員が分かってやる必要があると思います」と主将。最高の笑顔は、神奈川制圧の瞬間まで取っておく。(加藤 弘士)

 ◆阿部 葉太(あべ・ようた)2007年8月6日、愛知・田原市生まれ。17歳。小2から田原東部スポーツ少年団で軟式野球を始め、中1からは愛知豊橋ボーイズでプレー。中2の秋季中日本大会優勝。中3の夏季全国大会8強。横浜では1年夏に背番号20でベンチ入り。

秋から背番号8。高2の5月から主将。50メートル走5秒9。遠投100メートル。握力は左右とも60キロ。179センチ、85キロ。右投左打。

編集部おすすめ