◆第107回全国高校野球選手権神奈川大会 ▽3回戦 横浜清陵8x-7藤沢清流=延長10回タイブレーク=(17日・藤沢八部)
今春のセンバツ大会に21世紀枠で出場し、神奈川の県立校としては71年ぶりに甲子園出場を果たした横浜清陵が、最大5点差から追いつき、延長10回タイブレークで勝利。4回戦進出を決めた。
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必死と必死がぶつかり合う熱戦。勝利の女神はわずかに、横浜清陵へとほほえんだ。試合後の野原慎太郎監督(42)は、相手の藤沢清流への敬意を口にした。
「本当に鍛えられた、素晴らしいチームでした。そんなすごいチームと戦う中で、ウチの選手たちも力を引き出していただけたのかと思います」
大事な3回戦の直前、想定外の事態が起きた。16日未明、校内の野球部倉庫となるプレハブ小屋が全焼。ボールやスコアブック、OBたちの野球ノートなどの思い出の数々が燃えてしまった。一報を聞いた選手や保護者が朝から集まり、対応に追われた。誰もがつらい、切ない気持ちだった。
指揮官は思った。「みんな不安な状態でした。こんな時に『気にせずやろう』とは言えない状況だったんです」。
「この記憶と、『動揺して負けた』がセットになるのはダメだ。人生には何回か、負けてはいけない勝負がある。それは今日だ。この夏、このつらい記憶で終わらないために、きょうは勝とう。チーム一丸となって、絶対に勝とう」
試合は死闘と化した。選手たちは劣勢にもたくましく、心が折れることなく立ち向かった。アクシデントにも負けない、強い心が備わっていた。
野原監督は感慨深げに言った。「『勝ってこい』と。選手が応えてくれました。本当に良くやったと思います」
長い人生、予想外のことが起きることもある。